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ジョン・アクセルロッド/京都市交響楽団「第676回定期演奏会(フライデー・ナイト・スペシャル)」

 帰省のバスを京都で降りて、京都市交響楽団の第676回定期演奏会(フライデー・ナイト・スペシャル)を聴きに行った。朝6時に京都駅で近鉄バスから降ろされ、開演の19時半まで京大のある吉田や、下賀茂、北大路などを歩き回り、マクドや植物園、カフェに行き、なんとか時間をつぶした。一度大阪の実家に帰ればよいのだが、交通費が無駄になるのでこうなった。

 京都市交響楽団の「フライデー・ナイト・スペシャル」は公演時間が約1時間と短いが、チケットが大変安価である。学生はなんと当日券で500円からチケットを購入できる。私もこの恩恵を受け、B席に500円で座らせてもらった。席の場所はホールの一番後ろだが、京都コンサートホールはそんなに大きくないホールなので十分な迫力で音が聞こえてくる。
 プログラムはサミュエル・バーバー「弦楽のためのアダージョ」とイーゴリ・ストラヴィンスキー「春の祭典」。またこの公演は2日に分かれていて、2日目はジョージ・ガーシュウィン「パリのアメリカ人」、エーリヒ・コルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」、そして「春の祭典」というものだ。美しく心動かされるようなバーバーやコルンゴルトといったどちらかというと古典的要素の強い作品と、ジャズとクラシックを融合させたガーシュウィンや旋律という概念を崩壊させた「春の祭典」など革新的な作品を並べており、全く逆の方向性をもった曲によるプログラムのように思える。しかし、これらの作曲家が生きた時代は皆同じで、皆アメリカにゆかりがある。同時代、伝統に従ったうえで新しい要素を付け加えた音楽と、伝統を破り全く違う方向に進んだ音楽(シェーンベルク的?)を同時に楽しめる。ストラヴィンスキー以外はアメリカ人、ストラヴィンスキーも後期はアメリカで活動した。混沌とした当時のアメリカを思わせる。また、指揮者のジョン・アクセルロッドもアメリカ人で、この演奏会が首席客演として最後のものだった。さらに、この時期にバーバーの「弦楽のためのアダージョ」を演奏するのは、やはり震災に対するメッセージとしても受け止められる。
 バーバーもストラヴィンスキーもとても洗練され、精度の高い演奏だった。アクセルロッドと京響の技術力を見せつけられる感じだった。とくに「春の祭典」の密度が濃く大迫力の演奏が心に残る。B席でも十分に楽しむことができた。
 この「フライデー・ナイト・スペシャル」は公演時間や料金からわかるように、「手軽さ」を売りにした公演だ。曲も親しみやすいものをセレクトする。およそ110年前、聴衆にかつてない驚きをもたらした「春の祭典」は、今ではスタンダードになり、手軽さを売りにする公演で親しみやすい曲として選択されているこのギャップが面白いと思った。「フライデー・ナイト・スペシャル」だからかどうか知らないが、自転車で来ている人も多くて驚いた。観客の入りがそこまで多くなかったのが残念だが、おそらく次の日の演奏会に皆行くのだと思う。


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