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賢い借入の方法から緊急時の調達手段まで 中小企業のための「資金調達」の教科書

 はじめまして。川北英貴と申します。中小企業向けの資金繰り改善コンサルタントを15年間やっています。「資金繰りプラス」というサイトを運営しています。このnoteでは、中小企業がとれる資金調達手段を全て取り上げます。あなたの会社がとれる資金調達手段は何があるか、手段の優先順位はどのようにつければよいか、解説しています。このnoteを最後まで読むと、あなたの会社がとれる資金調達手段を全て知り、どのように資金調達していけばよいか、分かるようになることでしょう。

「資金調達」の大切さを再確認しておこう

 「至急、1,000万円の融資ができるところを探してもらえないでしょうか。」このような相談が、私のところには毎日のように来ます。中小企業の経営者からの資金調達の相談です。

 この経営者は5日後には取引先に対し支払いをしなければならないため、資金調達が必要となりました。しかし、それだけの短期間で資金調達を行うことは困難です。そのため、取引先に謝って、支払いを待ってもらうしかないでしょう。そうすれば、取引先からの信用はなくなってしまうかもしれません。

 ではなぜこの経営者は、あまりにもギリギリで資金調達を行おうとすることになってしまったのでしょうか。それは、資金繰り表を作っていず行き当たりばったりの資金繰りをしていたからです。

資金調達のタイミング

 経営者がまずやるべきことは、資金繰り表を作成し(資金繰り表の作り方は解説書が多く出ています)自社の資金繰りを6ヶ月~1年後まで予想することです。そして資金繰り表を作成し、将来の資金繰り表が見えるようになったら、今のままで資金繰りはずっとまわるのかを見てみます。そうすると将来、資金不足となる時がくるだろうことが分かります。

 資金不足となれば、仕入や外注費、諸経費、給料の支払いができなくなり、会社は継続できなくなります。そのような資金不足を防ぐためには、利益を増やして会社に現金が残るようにするか、資金調達を行って会社の現金を増やすしかありません。経営者が資金調達の知識を深め、適時に適切に資金調達を行うことができれば、その会社は資金不足となりにくい安全な会社となり、また売上を伸ばすための投資や、新事業への投資などのための資金調達もできれば、会社は発展することになります。

 このnoteではいろいろな資金調達方法をご紹介し、またどのような優先順位で考えるべきかを述べますので、それを今後の資金調達に活かしてください。

 冒頭の相談は、この原稿を書いた当日に実際あったもので、実はその経営者は、前の月に1,000万円、銀行から融資を受けていました。融資を受けた翌月に「1,000万円の融資をまた受けたい」と経営者が困っていることは、前の月に借りた1,000万円では資金調達が足りなかったことを意味します。この経営者は資金繰り表を作っていず、自分の勘で、前月に1,000万円借りるだけで十分と考えてそれだけしか借りていなかったのです。

 銀行が嫌がることの一つは、前回の融資から日数が経っていないのにまた融資を受けたいと企業から言われることです。銀行が考える、次の融資まで空けるべき期間は最低6ヶ月です。信用保証協会でも同様で、前回の保証付融資から6ヶ月は空けるべきと考えています。前回の融資から日も経っていないのに再び融資を受けたいと言ってくる企業は、計画性のない企業と銀行や信用保証協会から見られてしまいます。

 ではどうしたらよいのでしょうか。資金調達のタイミングをはかるには、月次の資金繰り表を作成します。それができると毎月月末にいくら現金が残るかが分かり、そして資金不足となる月が見えてきます。資金が不足する月の3ヶ月前に銀行から融資を受けるのが、資金繰りを考慮した資金調達の基本です。

 一方で資金調達のタイミングをつかむのが難しいと感じるのであれば、いっそのこと借りられる時にたくさん借りて現金を豊富にしておく、というやり方もあります。資金不足となるタイミング関係なく、借りられる時にたくさん借り、現金を多く持っていれば、資金不足に陥りにくく安全な資金繰りができます。最近は金利も低くなっているので、多く借りやすくなっています。借入を増やすのが嫌だからと少ない借入の一方で現金も少ない企業より、多くの借入があっても現金を多く持っている企業の方がよほど安全です。借入金はできるだけ少ない方がよい、という先入観をなくすべきです。

資金調達手段を幅広く知る

 資金調達のタイミングの重要性については分かりました。しかし資金調達は、お金を出してくれる相手がいなければ成り立たないものです。

 資金調達の手段には大きく3種類あります。融資と出資、そして資産売却です。融資とは、企業にお金を貸すことです。貸借対照表では融資を受けたら借入金の増加で計上されます。融資の出し手としては、融資した資金が将来返済してもらえるかを第一に考えます。

 次に出資とは、企業に資本を出すことです。貸借対照表では出資を受けたら資本金や資本準備金の増加で計上されます。融資と違って返済は不要です。出資した資金は株式となり、出資した資金を使って会社が成長し、株式価値が何倍にもなることを出資者は期待します。

 一方、資産売却では、自社の資産を売却することなので資金の出し手はいませんが、そもそも売却できる資産がなければ取り入れられない手段です。

 あなたは資金調達が必要となった時、どのような手段をとろうと考えますか?多くの方は、銀行(信用金庫・信用組合含む)や政府系金融機関から融資を受けられないかまず考えることでしょう。また政府系金融機関の中では日本政策金融公庫をまず考えることでしょう。

 資金調達をしようと考えたら、まずは銀行や政府系金融機関に融資の相談をするのが普通です。それで融資を受けられたら、その会社は資金不足となることを回避できます。その後は資金繰り表を見ながら、次に資金調達が必要な時を予想し、早め早めの資金調達を心がけていけばよいです。

 しかし銀行や政府系金融機関から希望する融資が出ない場合、企業はとても困ってしまいます。資金調達ができなかった場合、資金が不足するのですから何かの支払いを遅らせなければならない事態に必ずなります。その何かとは、仕入や外注費、諸経費、給料、銀行への返済、税金・社会保険などです。しかし支払を遅らせることは、遅らせた相手からの信用を失う、ということになります。そのような事態はなるべく避けたいものです。

 経営者としては、銀行や政府系金融機関だけでなく、幅広く資金調達手段を知っておきたいものです。経営者が資金調達の幅広い知識を持ち、状況に応じて資金調達の手段を選択していくことが、企業の信用を維持し、そして企業を資金繰りの危機から救うことになります。このnoteでは、経営者のみなさんがそうなれるよう、幅広い資金調達手段を知っていただきます。

多くある資金調達手段を優先順位付けする

 資金調達手段を幅広く知ったら次に、それぞれの手段、どのような企業が利用できるのかを知ることが必要です。そうしたら、自社がどのような資金調達手段を利用できるのか、分かるようになります。

 そして自社が利用できる複数の手段を把握した後、どの手段を優先すべきか、適切に判断しなければなりません。例えば、銀行や政府系金融機関で低い金利で融資を受けられる会社が、審査に時間がかかったり多くの書類を提出するのが嫌であったりするからと、金利の高いノンバンク(銀行でない金融会社)で借りるのはいけません。金利は高いですし、またノンバンクから借りている企業に銀行は融資審査を厳しくしますので、その後の銀行融資にも影響します。

 このように、自社がとることのできる資金調達手段の中で、優先順位を付けることがいかに大事であるかが分かります。どう優先順位付けするかを、このnoteで知っていただきます。

経営者の重要な役割

 企業が資金調達を行おうとする時、多くの方は、
「日本政策金融公庫に話をしてみよう。」
「インターネットで探して見つけたノンバンクの〇〇社に申し込んでみよう。」
というように、その時に思い付いた金融機関に申し込んでみようとしてしまいます。

 しかしこのnoteを読むことにより、次のように考えられるようになります。
「うちの会社がとれる資金調達手段は5つ考えられる。
1.〇〇銀行
2.日本政策金融公庫
3.売掛金を使ったノンバンクからの融資
4.すでに銀行に担保に入れている不動産の、余力を担保として使ったノンバンクの融資
5.経営者個人で、〇〇銀行のカードローン
 これらの手段のうち、まずは1・2を同時に申込もう。それで希望額の資金調達ができたらよいが、できなかったら3・4・5を同時に申し込もう。ただし3・4・5の手段で受けた融資の金利は高く、一方で、低い金利である既存の銀行融資の返済が今までどおり進むのは高い金利で得た資金で低い金利の融資を返済することになるから本末転倒である。銀行や日本政策金融公庫が融資をしてくれなかった場合は、既存の銀行融資の毎月の返済を猶予してもらう交渉も視野に入れよう。」

 このように資金調達を行う時、自社でとれる手段を多くピックアップし、またその中で優先順位を付けられるようになります。

 資金調達は、資金の出し手が応じてくれてはじめて成り立つものです。自社の希望する資金調達手段がいつも成功するとはかぎらないので、多くの資金調達手段を考えられるようになった方がよいです。

 まとめますと、資金調達には次の3つが重要です。

1.資金調達のタイミングを間違えない。
2.多くの資金調達手段を知っておき、その中で自社が利用できる資金調達手段を多く知っている。
3.自社が利用できる資金調達手段の中で優先順位付けを行える。

 これらを経営者のみなさんができるようになれば、経営者からしたらとても心強いものです。資金繰りがまわらなくなると企業は倒産に向かいます。必ずどこかへの未払いが発生し、信用を失い、いろいろな取引が不能になるからです。常に資金繰りがまわっている状態にし、末永く継続できる企業になるために、経営者の役割はとても大きいのです。

いろいろあります「資金調達」の方法と活用ポイント

資金調達の手段と優先順位

 下記は、中小企業がとることのできる資金調達の手段と、とるべき優先順位です。資金調達には融資と、出資に大きく分かれます。この表では、融資・資産売却・知人から調達の方法を合わせて融資等、と表現しています。融資等と出資とでは、それぞれのメリット・デメリットがあり、企業の戦略によりとった方がよい資金調達手段が違うので、分けて考える必要があります。融資等と出資とで表を別にし、融資等のカテゴリの中では、とるべき優先順位を1番から表現しました。

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