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好きな理由は「私がそうなりたい」

書道教室のS先生(男性)が、おちゃめでかわいくて好きだ。

御歳70ウン歳。若かりし頃は、小学校の先生をされていた。退職後は地域の色々な役をしながら「おとなの楽しい書道教室」の先生をされている。

先生の口ぐせは「そんなに早く上手くなってもらったら困るのぉ」。仕事をしながら書道をたしなみ、県展という大きな展覧会にも毎回出展。賞も毎回とれた訳ではない。それでも、来年の出展で連続50回。ひたすら「書く」を追求し楽しんできた先生なので、私たち生徒が「うまく書けないなぁ」と言うと、決まって例の口ぐせを言う。そんな数年で書道を上手くなってもらったら困る…と。

そんなことを言う先生が、毎回とてもかわいい。

そうそう、先日は…。
私が書きづらい難しい筆を使って書いていたら、「ちょっとワシも書いてえーか?」とウズウズ話しかけてきた。私の紙と筆を使って書きたそうな顔をしてたから、思わず「どーぞどーぞ」と言って書いてもらった。
その後、他の生徒さんに「“先生お願いします”と丁寧に言わなきゃ」と言われてしまった。だけど先生の顔が、「ワシが書いて手本みせちゃる」てよりも、「ワシも書いてみたい」という少年の顔だったからさ。思わず、「どーぞどーぞ」なんて言っちゃったよ。

そう、少年のような先生なんだよ。

この前は、自分が書いた作品を書道教室に持ってきたんだ。「日の目をみなかった作品だから見てくれ」と言われる。さて、どういうことかとお尋ねすると理由はこれ。

地元の展覧会に出す作品を半年前に準備したのに、いざ展覧会が近くなったときに、どこに置いたか分からない。探しても見つからず、仕方ないから、自分が納得してないものを出した。

「あぁ、あの展覧会ね。先生、作品だしてたね。」みたみた!と、書道教室の面々で頷きあう。

そしたら先日、作品が見つかったのだ!
「こんなとこにあったか!」とガックリ。悔しいから、みんなに見てもらおうと今日持ってきた。

えぇーそうなんですか?
悔しいから見てくれ!と持ってくる先生がかわいらしいなぁと思った。


自分にはない魅力を持っている人に「あぁこの人いいわぁ」と思うことがある。それは、自分がこんなふうになりたいと思ったり、憧れる魅力を持っていたりする場合が多いだろう。

私の「こんなふうになりたい」のひとりにノミネートされてるS先生は、ちょっと負けず嫌いで、無邪気で、やりたいことに一直線、少年のような心をずっと持ってる人。

自分の人生の中で、先生のようなおちゃめな大先輩に出会えたことは、「こんなふうに歳を重ねていいんだ」という喜びと、「こんなふうになりたい」という目標に出会ったようである。

私が先生の年齢になるまで、あと30年弱。私はどんな70歳になってるだろう、と考えたら少しワクワクっとする。

うん、歳を取ることも悪くない!




今日の記事は、ことばと広告さん主催「モノカキングダム2023」のお題をもとに。お題から思い出したのは、先生の「こんなとこにあったか!」というセリフ。そこから書きました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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