自然の豊かさと恐ろしさ

あっという間に読んでしまいました。私はLaura Elizabeth Ingalls Wilder著『大草原の小さな家』のような実体験に基づく小説や、Isabella Lucy Bird著『朝鮮紀行』『日本紀行』などの紀行文が好きです。今回読んだのは両者をミックスしたような本です。著者本人の手に汗握るエゾヒグマとの命
のやりとり、狩猟やヤマメ釣りに関することが主です。そして他に、豪雪による子どもとの悲しい死別がさらっとかいてあります。
西村武重著 
『北海の狩猟者』

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大正時代の北海道はまだ、根室の付近は豊かな自然が残されていたようです。普通、平野部から田畑が作られて開発されていくものですが、道東の広大な湿原は、耕作地には適さなかったためでしょう。

十勝と言えばやっぱり酪農ですよね。時代は違いますが坂本龍馬の子孫、坂本直行は十勝で牧場経営をしていたこともあります。

ところが、酪農も大変なことがたくさんあります。そのうちのほんの一つにヒグマの被害があります。ヒグマは普通、雑食性で魚や木の実、山菜などを幅広く食べています。おとなしい動物です。しかし、肉から得られる高くて即効性のあるカロリーがやみつきになって、ヒグマが乳牛を襲う事態も発生してしまいます。牛舎を壊して入ってきて森へ牛を引きずっていって食べるケース、放牧中の牛を狙うケース。
ヒグマによる乳牛の被害は今でも

西村武重が生きた時代もヒグマは猛威をふるっていました。そのため狩猟の技術を持つ人は今も昔も重宝されるのです。しかし、猟銃を携え、ヒグマの足跡を追い、風下から忍び寄り、銃の射程に熊を確認して引き金をひく。それで終わりではありません。銃で致命傷を負っても熊は生きていて、場合によっては最後の力を振り絞って反撃してくるのです。対策は、腹のそこから大声を出して熊を威圧、ひるんだすきに急所に撃ち込むというもの。私も熊に追い詰められたらやってみようと思いますが、銃がつかえないので数秒間、死ぬ時間を遅らせるだけでしょう(泣

体重二百キロ前後のヒグマが、時速六十キロ近いスピードで走ってきたらひとたまりもありません。でかいだけでなく、爪も噛む力も強く頭も良い。例えるなら、お相撲さんが2人がかりでナイフ十本持って自動車のスピードで疾走してきたらチビってしまいそうですが、まさに無敵のケモノです。銃がなかったら普通の人間は熊に勝てないでしょう。昔のアイヌは弓矢とアイヌ犬だけで熊に立ち向かっていたことが信じられないくらいです。

そんなヒグマは、多くの北海道人にとって身近な存在です。北海道最大級の都市である札幌の近郊の真駒内にも、外に置いてあるドッグフードを食べられたりする被害が出ています。悪くすると知床で起きたような、犬を食い殺される被害になってしまいます。私も山を散策中にヒグマの足跡を見たことがあります。産気別やワンダーフォーゲル部の惨劇を思い浮かべれば冷や汗がでます。(遭遇はしてない)

このように、豊かな自然の中には危険が潜んでいて、今も人間の生活を脅かしています。人間が山を切り開き、劇的に地球環境を変化させている可能性も示唆されていますが、人間個人、個人で見た時には、食う食われるの自然のサイクルからは抜け得ないのです。

皆さんも山へ入る時は注意しましょう。


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