ranko's diary 0020
澄子が教室のど真ん中で、高い声で話す声が聞こえる。
「私って、ほら、いわゆる霊とかが見えちゃうタイプ?」
教室の一番後ろに陣取った水川が小さく溜息をつく。
ウチにも出るんだわ、霊。
マジか。
普通に出る。
家族もみんな見てるし。
怖いね。
え?怖いの?
この前もさ、誰もいないはずの風呂からシャワーの音が聞こえてきて。
怖いよね?普通それ。
怖いかなあ。
すぐに親父が風呂飛んでって。
まあ、怖いか。
怖いじゃん。
親父、そいつに怒鳴ったんだ。
「幽霊だかなんだか知らねーけどな。
ウチはビンボーなんだ。水道代がもったいないだろ。
なんか恨みでもあんのか?
お前さんも、この家にいてシャワー浴びたいなら少しは金払え。消えたりできるんなら、金なんかいくらでも持って来れんだろ。
金持ってきたら相手してやる。
いい加減にしろ。こっちはそんなヒマじゃねえ。
日々の生活で一杯一杯なんだ。早く金寄越せ」
それは…
怖いね?
まあ幽霊に罪はない。と思う。
怖がってあげたい気持ちはみんな持ってるんだけどね。
何せ余裕ってもんがなくてさ。
何か悪いことしたかな、って。
水川は悪くない。
それから時々、夜中に誰もいないはずの部屋から音がして、
朝起きるとそこに1円玉が落ちてる。
そんで、親父が「いつの時代の時代の人間だ。足りるか、ボケ」って叫ぶ。
たぶん明治時代とかに死んだ人なんだろうね。
今は、駄菓子屋行ってもアメ玉1個5円はするから。
切ないね。
切ないな。
みんなビンボが悪いのよ。
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