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それならせめて、それらしく

マイケルジャクソンが亡くなった時は、相当ムカついた。


MJ本人に対しては、正直特に思い入れはない。全盛期はもちろんリアルタイムではない。

ディズニーランドの「キャプテンEO」は超好きだった。でも後は、小学校の担任がチリチリパーマだという理由だけでジャクソンというあだ名をつけたことが本人にばれ、殴られたことがある、という思い出があるくらいだ。


個人的な感覚だが、MJが亡くなった当時、日本の一般人(もちろんファンは除く)にとっては、マイケルジャクソンなんて既に存在していないも同然だった。

数々の奇行や犯罪疑惑、例の有名なインタビュー(「整形してないよ」のモノマネも一時期流行りましたね)などで「お騒がせおもしろモンスター」「バブルスの飼い主」という存在ではあったかもしれないが、少なくともスーパースターとしての評価ではなかった。

それが亡くなった時にはどうだったろうか。

あれだけ過去にMJの奇行を揶揄していたワイドショーでは、一転彼を「伝説のスーパースター」扱い。チャリティなどの善行やその穏やかな人柄、アートへのストイックな姿勢がクローズアップされた。

無知で申し訳ないが、正直僕は「キングオブポップ」っていうあだ名、亡くなるまで聞いたことなかった。


まあワイドショーは常々そういうものなので別にいいとして、僕が怒っていたのは周りの人間に対してだ。絶対よく知らないのに急に「マイケル」とファーストネームで親しみをこめて呼び始め、THIS IS ITのサントラ盤を買っては「彼は本物のスターだった」とかなんとか。

いわゆる、「にわかMJファン」が周りに急増したのだ。


僕は彼らの急なMJファンアピールを見ながら、あることを思い出していた。

マイケル逝去前年の2008年、レディーガガが大ブレイクした。あの時「ガガ様」を崇拝し、「ガガ様に一生ついていく」と言っていたメンツ。まさにそれと同じ顔ぶれが、次の年には「マイケルは神様だった」と言っていたのだ。

僕はレディーガガの最近のアルバム『Joanne』が大好きだが、果たして彼らは聴いただろうか。きっと去年末くらいには「フレディは神様だった」と言っていたのではなかろうか。レディーガガではなくレディオガガを聴いていたのではなかろうか。


そんな「にわか」人種の代表選手がとても身近にいる。自分の母と妹だ。特に妹なんて当時ガガ様に心酔するがあまり、もしかしたら頭に生肉くらい乗っけてたかもしれない。少なくとも僕の心の目には確かに生肉が見えた。(わからない人は「ガガ 生肉」で検索しよう)

ある時僕がリビングでももいろクローバー(Zがついてない時)のライブ映像を感動しながら見ていると、母が「あんたそんなん好きなの…」と冷たく言った。

まあそこまでは良い。なんせももクロは当時10代前半の少女たち。息子が涙目で見てたら、そりゃ心配するのが母としての当然の務めである。妹はただただ、そんな兄を存在しないものとしていた。

問題は2012年、ももクロ紅白出場時。家族で紅白を見ていた時に母と妹はこう言ったのだ。「ももクロいつでるの?」「早く見たい~」。

おい。

猛烈なツッコミを早口で言いたかったが、当時実家での発言権がまるでなかったため、心の中でグチグチとささくれだっていた。


にわかファン問題、もう一例だけあげさせてほしい。岡村ちゃんの話だ。

岡村ちゃんこと岡村靖幸さん。MJ同様、僕はリアルタイム世代ではないが、高校の時に後追いで彼の音楽に出会った。変態的な音作りと、「思春期男子」をあまりにもうまくとらえた歌詞にやられてしまった。

僕が知ったころ岡村ちゃんは活動休止中。しばらくすると覚せい剤取締法違反で逮捕されてしまう。

その後数年間はなんか出したりまた捕まったり太ったり、そんな状況が続いていた。最近タイムリーな議論だが、個人的にはドラッグは完全にアンチだ。でもクスリ憎んで作品憎まずというか、そんな状況でも岡村ちゃんを応援していたし、いつかライブが見たいなーなんて思っていた。

2011年に岡村ちゃんは奇跡の復活を遂げる。今書いても涙ぐんでしまうくらい、最高の復活劇だった。


で、その辺から「岡村ちゃんリスペクト」を公言するミュージシャンがめちゃくちゃ増えた。それがやっぱり腹立たしかった。

わかるよ、岡村ちゃんはミュージシャンズミュージシャンというか、演者なら絶対好きになることもわかる。もし本当にリスペクトしてたとしても、いろんな事情があって、事件前後はそういうことを言えないのもわかる。

でもやっぱり、どうしても、「お前本当か??」と思ってしまうのだ。リアルタイムでない僕より若い世代も急に岡村ちゃん近辺に群がりだした。まるで昔から尊敬していましたというような顔で…。


やっぱり彼らには認めてほしいのだ。「にわかなんですけど」「最近知ったけど」の一言をつけるなり、どっかに遠慮の姿勢がほしいのだ。そういうののないふてぶてしくも明るい態度が、僕は羨ましい、だからムカつくのだと思う。

要は流行りにスパッとノレない日陰者から、日向へのひがみである。

ちなみに岡村ちゃんについてはTwitterで「#今さら岡村ちゃんにはまった人の感想」みたいなハッシュタグがあるらしい(不正確情報)。それよそれ!その一言があるとないとじゃ大違い。

あと、プリンスとデヴィッドボウイが亡くなった時に「こりゃまた"昔からファンでした野郎"が増えるぞ~」と身構えていたらそんなことにはならなくて、逆にそこでマイケルジャクソンの凄さを思い知らされた。


わが妹については、最近結婚したこともあり知人に「妹さんどんな人?」と聞かれる機会があった。「頭に生肉乗せてる」はさすがに伝わらないしそもそも嘘なので、「よく知らずにブルーノマーズのライブとか行ってるような感じ」とギャグで答えていたところ、最近本当にさいたまスーパーアリーナの公演を観ていたことが判明した。エドシーランも行ったのかな。

うーん、やっぱり羨ましい。

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