謎制作王2018

2018/02/28 東京ミステリーサーカスにて
「新春!最強謎制作王決定戦2018!!
〜誰が一番おもろい謎つくるか、決めようやないか〜」
が開催されました!
https://mysterycircus.jp/events/648

この「謎制作王決定戦」、なんと今回で4回目。
1回目は、「ヒミツキチラボ」のオープン直後に行われたイベントで、
形式:A4サイズ1枚 5分で解ける謎
お題:ヒミツキチラボのオープンを祝う謎
というものでした。

このイベントで初代謎制作王に私がなりました。わしがおうじゃ!

(左から2番目が謎制作王ではないNON STYLEの井上さんです)

それから4年の月日は流れ。
2代目謎制作王にちょめさんが選ばれ。
3代目謎制作王に匿名の方が選ばれ。
ニュースでは芸人のひき逃げ騒動が話題になり。
渋谷にあったヒミツキチラボは閉店し。
新宿に東京ミステリーサーカスが出来て。

そして行われた「謎制作王2018」!
形式:A4サイズ1枚 5分で解ける謎
お題:くすっと笑える謎
激しいトップ争いの末に!
4代目謎制作王に無策師が返り咲いたのです!

(サバンナの高橋さんに写真をお願いしたら急に変な奴入ってきた)

謎制作王に選ばれた謎はこちらから見れます!
https://drive.google.com/drive/folders/1vuSkXgvTIBeFuxAe6bdzqjqNjKwVKQsm?usp=sharing
両面フチなし印刷がオススメです。
フチありで印刷すると、実際に会場で配布された形式になります(誤算)

「えっ、こんなのが優勝したの…」となる方、いると思います。
そうです。これが優勝です。

「こんなん、ワシの方がおもろい謎作れるわ」となる方、いると思います。
ぜひ次回の謎制作王に出してください。

でもな、これが1位なんやね。
別に、他の謎が悪かったわけじゃない。
この謎より面白い謎、山ほどあった。
商品として売れるレベルの謎も1つじゃなかった。
(私の謎は絶対に売れないし売らない)

では、なぜこの謎が1位になったのか。
1位になったこの謎はどのように作られたのか。
以下、偉そうに語っていくので、謎が見たかっただけの人はお帰りください。
全作品のレビューとかはないです。(やってみたさはあるが手元に謎がない)

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この謎が1位になった理由は3点あると思っています。
1つ目は「謎制作王の経験」
2つ目は「徹底したお題の分析」
3つ目は「投票と奇跡」
1つずつ順番に説明をしていきましょう。

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まずは1つ目。「謎制作王の経験」です。

ルールがあり、審査があり、投票がある。
それは、穴があり、傾向があり、心理があるということ。
神が絶対的に面白い謎を選択するのではなく、
定められたルールのもと、
選ばれた人により一定の方法で審査が行われ、
人々の考えのもと投票が行われる。

コンテストにおいて、その特徴を理解することは非常に大事になります。

では、謎制作王というコンテストにおいて特筆すべき特徴は何か。

それは、以下の3点です。
・審査員は司会とゲストと来場者
・来場者は短時間に大量の謎を審査
・制作者も審査員

審査員は、プロの審査員ではなく、ただの来場者に過ぎない。
つまり、謎制作のプロにしか伝わらない技巧はあまり意味がなく、
謎解きが苦手な人にも面白さが伝わらないといけないのです。

また、審査(=謎を解く)の形式は非常に重要な点となります。
「5分で解ける謎」と聞いて、軽い謎だと思う方も多いでしょう。
しかし、応募者はその5分にアピールしたいものを詰め込んできます。
当然、SCRAPの謎のような優しく誘導のあるものだけではありません。
そのうえ、その謎が20問以上応募されてくるのです。
単純計算で100分以上、休みなく延々と謎を解くのです。
1つの謎が早く解けたとしても、
次の謎解き開始までの空き時間は休憩ではなく
5分で解き終わらなかった前の謎を解くのに使われる。
地獄の謎解き鉄人レース。

条件として「5分で解ける謎」とあります。
「60分で解ける謎解きイベント」を作るとなると
「60分でクリアできるかギリギリで、成功率は10%くらい」
というものを作りたくなるでしょう。
ですが、謎制作王においてその考えは間違いです。
「失敗して悔しい、次こそ成功したい」と思わせても
謎制作王においては何の意味もないのです。
謎の面白さとは謎を解いたときにこそ生まれるもの。
つまり、最後まで謎を解いてもらえなければ、
その面白さは伝わらないのです。
(解説コーナーがあるので、伝えることは出来ますが、
体験した面白さと説明された面白さには
圧倒的な差があることは言うまでもないでしょう)

2時間近く謎を解いてへとへとな頭でも、
確実に5分以内に解けた方が良い。
とはいえ、5秒で解けてしまうとボリューム不足で見劣りする。
その絶妙な難易度・時間設定が重要なのです。

実際、私が初代謎制作王になったときの謎は
「手がかりが多く解きやすいスケルトン」
「シンプルな折り紙」のステップを経て、
最後の驚きに辿り着くのですが、
これがもしスケルトンが難しかったり、折り紙が難解で、
最後の驚きに辿り着いた人が少なかったら、
王には選ばれていなかったでしょう。

制作者が審査員というのも大きなポイントです。
これは私の推測なのですが、
「キットを作ると、審査の基準が上がる」
というのがあります。

謎制作王は、基本はA4サイズの紙1枚の形式なのですが、
全テーブル分のキットを作れば他の形式でも良いというルールがあります。
毎回様々なキットが応募されていて、中々の力作揃いです。
が、その面白さに対してあまり票が伸びていないように見えました。

これは、「これだけ手間やお金を掛ければ、面白く作れるだろう」という
期待値の(謎の)上昇が発生している気がするのです。
確かに、紙1枚で出来ることよりも格段に自由度は上がるのですが、
それ以上に期待度が上がってしまう人が多いのではないでしょうか。
正直、キットで勝負するのは不利だと思っています。

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2つ目は「徹底したお題の分析」です。

今回のお題は「くすっと笑える謎」。
今までで一番良いお題だったと思います。
(ちなみに第二回は「胸がきゅんとする謎」、第三回は「2017」でした)

「笑い」にもいろいろあります。
出オチ、一発ギャグ、ボケ・ツッコミ、
パロディ、不謹慎、メタ、シュール、複線回収、どんでん返し。
その中で謎制作王に向いている「笑い」は何なのか。

前項で紹介したように、審査員(来場者)は20個以上の謎を解き続けます。
そのうえで投票をする以上、インパクトの薄い謎は忘れ去られがち。
投票時に謎のことを思い出してもらえる方が有利でしょう。
そういう意味では「出オチ」が相性が良さそうだと考えました。

ただし、ただの出オチで5分は持たない。
出オチは最初の笑いに過ぎず、様々な笑いを詰め込みたい。
そう思ったとき、邪魔な要素が1つありました。

それは、「謎」です。

謎を解いている間は、思考を働かせることになり、
笑いの感情を生ませるのはなかなか難しいです。

そこで発送の逆転が起きました。
「謎をベースに笑いを作る」のではなく
「笑いをベースに謎を作る」のです。
笑いを生み出すために謎を作るのではなく、
謎自体が笑いのネタになればよい。
わかりやすく例をあげるなら「こんな謎解きはイヤだ」大喜利です。
謎そのものがネタになれば、謎解きをしながら笑える。
そう思ったのです。

そのタイミングで「出オチ」「大喜利謎」を詰め込むのに
最適のフォーマットを思いつきました。
思いついたのは、条件を見ていたときです。
「A4 1枚 5分って、アンケートじゃん」
そのとき全てが繋がったのです。
リアル脱出ゲームのアンケートのパロディであれば、
謎制作王に来るようなSCRAPコアファンにはどストライクだし、
いくつもの質問を答える形式は、
いくつもの大喜利謎を仕込むのに最適でした。

あとは、一人で大喜利をするだけ。
選択問題だけど問題良く読んだら一択になる。
「タヌキ=た抜き」的な奴がマイナー動物でわからない。
ほぼ答えが書いてある。
問題も答えもヘブライ語で読めない。
などなど。
しょうもない小ボケも、数打てばどうにかなるだろうと。
だってこれは、メインコンテンツではないのだから。
アンケートパロディという見た目を成立させるために
書かざるを得ない文字部分であり、
そして出オチの笑いの中継ぎなのです。

そう、「中継ぎ」。
謎にも笑いにも「大オチ」が必要なのです。

色々と悩んだ挙句、用意した「大オチ」はメタ展開でした。
「この謎に投票したら成功」とすることで、
成功したければ投票しろという反則的な仕掛け。
爆笑は起きずともクスっとくる。
このメッセージはアピールすればするほど面白くなると思い、
「折り紙謎で折る前から答えが見えている」という小ボケと合体させ、
このような形になりました。

ダミーの折り線をほとんど用意しないことで、
例えそこまでの(くだらない)謎が解けていなくてもラストには辿り着け、
(なんなら答えが折り線でわかってしまうというネタにもなる)
5分以内に解き終われる分量に調整しました。

細かいことを言うと、
表側の答えをもとに裏側で線を折るので、
その時に折っても次に見たい答えの部分が隠れないように気を使ってます。
地味にストレスになる部分ですからね。
その気遣いに気付かなくてもストレス軽減になるし、
気付いてもらえたら加点になる。
唯一、謎として気を付けた点です。

まとめると、
・出オチのインパクト
・笑いをベースにした謎のラッシュによるボリューム調整
・小ネタや様々なボケ、メタなどいろいろな笑い
という形でお題を最適に料理できたと自負しています。

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3つ目は「投票と奇跡」です。

来場者が投票する以上、投票は様々な感情により左右されます。
どんなに面白いものも、制作者が嫌な奴だと票を入れたくなくなる。
投票者が人間である以上、多少なりとも心情が投票に影響される。

謎制作王では解説コーナーがあるため、
制作者がバレた状態で投票が行われます。
一応匿名にすることで伏せることもできますが、
個人的には匿名ほどイベントが盛り下がるものはないと思っているので
その選択は絶対にしません。

私は投票にかなり警戒をしていました。
「初代謎制作王」
この看板は、投票においてかなりの逆風になります。
「一度王を取った奴が何また来とんねん」
「王ってことは票入るだろうし、他の人に入れよう」
など、王に票を入れたくない気持ちになるきっかけはいくらでもあります。

今回応募するにあたって、私は圧倒的でなければ負けると思っていました。
「これだけ面白いなら票を入れざるを得ない」と思わせる圧倒的な強さ。
前項で説明したような流れで、
作った謎に自信があったからこそ応募をしたわけです。
生半可な気持ちじゃない。
正直、今回応募した謎は1位を取れる自信がかなりありましたが、
それをTwitterとかで吹聴するのは悪手なわけです。

ここでいくつか奇跡が起きました。

1つは「新制度:解説前投票」です。
解説する前に一度投票が行われ、解説後に再度投票を行う。
今までは解説後の投票のみだったので。投票時に制作者はバレていました。
今回はバレずに投票が行われる。
これは私にとって有利でした。

次の奇跡は「司会きださんとの解説前会話」です。
解説時に私が出たときに、きださんに
「初代王だろ!空気読めや!」的なツッコミを受け
私は「久々に王を取りたくなったんで」と返したのですが、
後から思えばこのやり取りは
「しばらく王が取れなかった=王になるのは当然のことではない」
というのを暗に伝えられたのかなぁと思います。
実際のところ、私が謎制作王に応募したのは第一回と第四回の2回だけなので
出せば必ず王になるという状態なのですが、
そんなことがバレれば票は全く入らなくなったことでしょう。
意図せず情報操作に成功していた気がします。

最後の奇跡は何といっても「あららみくんの存在」です。
あららみくんとは、SCRAPの社員であり、
解説前投票で1位をかっさらった天才です。

「SCRAP社員」という強烈な逆風を受ける肩書で
私が王であることで受けるはずだった逆風を掻き消してくれたのは、
本当に想定外の奇跡でした。

しかも、解説前投票において、
あららみくんが1位で、私が2位。
絵にかいたようなアンダードッグ効果(選挙前に不利な方が同情票で勝つ)。

あららみくんには申し訳なさしかないです。

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以上が、あの謎で謎制作王になった経緯です。

あららみくんの謎は、本当によく出来ていました。
私が考えている謎制作王に大事な要素である
「記憶に残るインパクト」も(かなり強烈なやつ)があったし
その要素の謎への落とし込みも完璧な出来栄えでした。
謎としての驚きや技巧も散りばめられていて、
解説にもネタをしっかりと仕込んでいて、
素晴らしい王道の傑作でした。

ただ、ペライチではなくキットであることや、SCRAP社員であること、
そして解説前投票1位という三重の逆風を受けたことが敗因でしょう。
ネタ被りという逆風も少しありましたね。不運としか言いようがない。
もしくは、私という邪道使いの強敵がいたことが敗因かもしれません。
(この調子乗った発言が原因で後に刺されることになりますが
 けれどもこれは別の物語、いつかまた、別の時に話すことにしよう。)

最後にですが、この調子乗ったnoteを書いたことで、
私は2度と謎制作王になれないと思っています。
このブログこそが今後最大の逆風になるからです。

また、私が取った分析や戦術も今後は使えません。
多くの人が「5分で解けるか解けないかきわどい謎」を作る中
「5分で必ず解き終わる謎もどき」で有利になる邪道戦法は、
皆が「5分で解き終わる謎」を作るようになったら
有効ではなくなるからです。
(ただ、この記事はAn〇therVisi〇nみたいな凄い団体の人ではなく
ただの謎制作王が書いた無駄に長い駄文なので、
多分2人くらいにしか読まれないでしょう。
そういう意味で、この記事による影響は少なく、
今後も同じ戦法が使えるかもしれませんね)

そういえば、次に新たな謎制作王が決まれば四天王が結成できますね。
(今回結成できるかと思ったら私がダブった)
願わくば、この記事を読んだ人の中から謎制作王が生まれんことを。

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