温度鏡

大好きだよ
わたしも大好きだよっ

君のその体温と匂いは期間限定
それでも決まってわたしの身の回りに
定期的にやってきてくれるんだ

こんなに温まる瞬間って
ほかの日常には転げ落ちてないからさ
困ったもんだよね
せっかく見送ってくれたのに
そうやって離れがたくさせちゃってさ

ついつい
外がこんなに冷え込んでいても
追っかけちゃうじゃない

でもあなたも
実はこんなわたしが好きなんでしょ
嬉しいんでしょ

毎日の文字のやりとりだけでも十分だけど
もっとちゃんと
代用できるものを残して置いてってよ

寝る前に
君のその体温の湯たんぽを準備して
君のその匂いの香水をふりかけて
そしたらきっとどんなに辛いことがあっても
嘘みたいに安眠できるのに

毎晩のルーティーンに組み込んでおくのに
自分で製造しちゃうしかないのかな…

それかもしくは
君に会ったときに
思う存分、
嫌というくらい
わたしの体に吸収して、
刷り込んでおくといいのかな
そんなことで今週の分はもつのかな

愛してるよ
それはちょっとだけ照れてしまう
好きな気持ちはドローだけど
こんな会話ばっかりしてると
毎日ちょっとずつ
君に飽きてしまうじゃないか
愛なのか恋なのか実はそこには何もないのか
分からなくなってしまうじゃないか

お互いにお互いが共通の趣味
それ以外はなんもない
だから愛情表現以外の話題には
少し困っちゃうの

君の体温に調整できる湯たんぽも
君の香りを作り出せる香水も
ここに置いてないのだとしたら

わたしが一旦、体内でぜんぶ溜め込んで
動くたびに精製できるような
臓器を1個だけつけ加えて
吸ったり吐いたりして
自給自足していくしかないのかなぁ

ずっと離れないでね
離したくないよ
ずっと離れたくないよ
絶対に離れていかないでね
あなたなしじゃ生きられないのに離れるわけないでしょ
そっか

それってさ
わたしに合わせて言ってくれてるだけなの
自分の意思だよ

それでも不安です
不安になっても大好きだよ

好きか分からない
好きか分からなくても大好きだよ

上辺だけじゃん…
大好きだよ

……

わたしも

そっか
じゃあやっぱり
わたしも大好きだよ

あなた無しじゃ生きられない

また
そうやって離れがたくさせちゃってさ
気温から体温を奪うよ

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