新しいシステム

「どうも上手くいかん」
「以前の方法に戻したらどうでしょうか。それを望んでいる人達も結構いますから」
「いや、不備があるから、今の方法に変えたんだ。それで上手くいってたんだ。ところ不備が出た。今まで気付かなかったんだ」
「長くやっていると、何かが出るものでしょ」
「リスクというやつだね。しかし、以前の方がリスクは少なかった」
「しかし、以前の方法はもう古いですよ。それでシステムを変えたのですから」
「そのとき、誰も反対しなかったしね」
「そうです。望ましい選択でした。おかげでスムースにやれるようになり、皆さん喜んでいましたよ」
「ところがここに来て、面倒なことになった。以前にはなかったことだ」
「以前も面倒なことは多くありましたよ」
「元に戻すわけにはいかないかね」
「戻せますが」
「じゃ、そうするように働きかけてくれ」
「しかし、今の方が良いですよ」
「良い?」
「はい」
「前のやり方の不満はほぼ解消されました。だから、戻せばまた不満が出ます」
「要するにどのリスクが良いかだね」
「はい、以前のリスクの方がましかもしれません」
「そうだろ」
「はい」
「じゃ、古いのに切り替えてくれ」
「分かりました。そういうことがあろうかと思い、いつでも戻せる状態にしておきましたから」
「そうか、そりゃ良かった」
「しかし、主任も戻されますよ」
「何が」
「ですから、前のやり方に戻すと前の主任でないと」
「それはまずい」
「じゃ、どうします」
「戻さなくてもいい。不備は何とか克服しよう」
「それは無理です。何ともなりません」
「じゃ、我慢しよう」
「はい、それしかありません。または新しいシステムを入れるかです」
「その場合、私はどうなる」
「主任が主導してやられるのなら、主任のままでしょ」
「じゃ、新しいシステムを探してくれ」
「色々候補はあります」
「もう探し出してくれていたのかね」
「そうです。きっとそういうことがあるかと思いまして」
「よく気が付くねえ」
「いえいえ」
「それで、どういうのがあった。今より良くて、不備も出ないタイプが好ましいが、そんなものがあったかね」
「あれば、すぐに報告しています。どれも今よりもさらに良さそうなのですが、不備の出方が分かりません。実際に代えて見ないと」
「予測できるだろう」
「できます」
「じゃ、今よりも良くて、不備が少ないのに決定しよう」
「しかし、莫大な費用が掛かります」
「良いものは高いからねえ」
「そうです。不備も最小限で済むらしいので」
「困ったねえ。高すぎると、通らないだろう」
「何とかならないのかね」
「今のシステムでも、その前のシステムでも、少し我慢すれば問題はないかと」
「じゃ、私は無駄なことをしたのかね」
「無駄ではないでしょ。それで主任になれたのですから。そして僕は副主任になれました」
「怖いのは前の主任だ」
「前川さんですね」
「前川が新しいシステムを導入したがっていることを掴んでいる」
「はい、その気配があります」
「それを阻止せにゃならん」
「取り合いですねえ」
「そうだ。システムなんて、何でもいいんだ」
「分かりました。今よりも不備はきついですが、コストが掛からないシステムを見付けています」
「そうか」
「これで対応できます」
「しかし、折角不備の少ないはずのものを導入したのに、さらに不備の多いのを使うのかね」
「今のシステムも不備が出ているでしょ。どれを使っても同じですよ」
「しかし、高額なシステムなら、それは少ないのだろ」
「同じでしょ」
「じゃ、前のシステムに戻す話は、なしだ。そのコストの掛からないシステムに乗り換える方向でやってくれ」
「はい、分かりました」
 
   了

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川崎ゆきお

川崎ゆきお超短編小説 コレクション 5

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