ガンズかわせ山田今年はがんばるぞ対談

このあいだから始めました、セルフパブリッシングSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』の外部企画。中の人たちがどんな活動してたり、考えてたりするのかというのをお伝えするのが目的です。

第2弾は、私、編集長かわせと、『アンフォールドザワールド・アンリミテッド』連載中の山田佳江さんとの対談です。

もう2月も下旬でタイトルが時期遅れのような気がしますが、収録後すぐにアップしなかった編集長の怠慢によるものです。ご了承ください<(_ _)>

さてそれでは、対談の模様をどうぞー。

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かわせ: こんにちは。セルフパブリッシングSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE 』編集長かわせです。本日のテーマは、「ガンズの今年はがんばるぞ宣言した組対談」。今年はがんばらなくてはと僕が決意を新たにしている時に、ツイッター上でがんばる宣言していて、「ナカーマ!」という気分になったこの方をお呼びしています。

やまだ:こんにちは。山田佳江です。今日はかわせさんに怒られにきました!

かわせ: 怒るなんてそんな(笑) ガンズ4号の遅れのことですか?

やまだ: 原稿を待っていただいた上に、かわせさんに課題としていただいていた問題点はあまり解決できなかったですねえ。結局多少修正したのみになってしまいました。

かわせ: いや、一応僕が言い出しっぺなので編集長ですけど、ガンズは基本的に作家の互助システムなので、ピンと来たものだけ取り入れてくれればいいんですよー。そもそも忙しかったんですよね?

やまだ: 2017年は仕事を増やしすぎたり、引越しがあったりでとても忙しかったですね。無茶し過ぎた感があるので、2018年は仕事を減らして、小説を書くことに集中しようと思っています。

かわせ:その話をしていた ブログも見たんですよ。それも共感ポイントで。僕も仕事増やしたら、書く時間2割減ぐらいのはずだったのにその分の疲労が計算に入ってなくて、執筆速度3分の1とか4分の1とかになって頭抱えてたので。バランス難しいですよね。

やまだ: ブログとは、私の個人ブログのこの記事のことですかね。「とりあえずのほんだな 2017年の総括」http://yo4e.blogspot.jp/2017/12/2017.html
 いい感じで働けていたつもりだったのですが、やはり疲労が蓄積していたみたいです。どうでもいい文章ならいくらでも書けるのですが、ちゃんとした小説が書けなくなっていました。なので、ひたすらにどうでもいい文章を書いていましたね。リハビリ的な効果があるのかは分かりませんが。かわせさんは仕事で疲労したとき、どうやって執筆のモチベーションを上げていますか?

かわせ: モチベーションは、むしろ焦りがあるから上がってて、でも疲れで頭の中が濁ってるから文章出てこない感じですねー。だから書けないストレスひどいんですよ。ストレスから食に逃げるタイプなので、原稿のページは増えず体重計の数字が増えました。余裕があると、資料読みとかしているときにぽこっとシーンが湧いてきて、そこから進むんですけど。余裕ほしいですねえ。

やまだ: 食に走るのはあるあるですよね(笑) 最近ちょっと考えていたのですが、大きな作品を作り上げるためのモチベーションを保つには、ちょっとずつ小さな承認を得る必要があるのではと思っているのです。雑誌掲載やウェブ連載は、一話ずつ読者の反応が得られるので、モチベーションを保つ効果がありますね。

かわせ: それはあるでしょうねー。僕のガンズの『キャプテン・ラクトの宇宙船』も、カクヨムの『友だちみんな宇宙人』も、一度書き上げてある作品なのでちょっと違いますけど、それでも星とかつくと「次は何しようかな」と思いますもんね。

やまだ: 一度書き上げてしまうと、一挙に公開したくなりませんか?

かわせ: そうしたやつもありますね。ただ、僕は今まで出版社への持ち込みが活動のメインだったので、向こうの要望に合わずボツになったやつはそこで死蔵になってるんですよ。すぐ次に行かねば、となってたので。今回はそれを手直ししたんです。

やまだ: 持ち込みボツで死蔵しちゃうのって、もったいないですよね。今は個人出版やインターネットで世に出すこともできますけど、一昔前までは、世にでることもなかった。なにかの対談で読んだのですが、J.K.ローリングは『ハリー・ポッター』を大手の全ての出版社から送り返されたと言っていましたよ。

かわせ: 社長の娘さんが読んで面白いと言ったから出版が決まったってやつですよね。逆に他のハリー・ポッター級がボツになって、世に知られることなく消えてった可能性もありますよねえ。ボツ続くと心折れますからね。
 僕も直して出す先があってよかったです。『キャプテン・ラクトの宇宙船』はそれこそ「そもそも長い。ハリー・ポッターじゃないんだから」という作品でした。ガンズの名前で興味持って来てくれた人のために、それこそ銃と宇宙が題材の作品がもっとあっていいのではと思った時に、「そういえば、自分のストックにある」となって、日の目を見ることになりました。ガンズやっててよかった。

やまだ: これからは、どんどん自分たちで出版していく時代が来ると思うのですよね。それで商業への道が立たれるわけでもなく、むしろ個人出版で売れたものが商業化される傾向にありますよね。

かわせ: 僕の「今年がんばろう」もそれなんですよ。自分を客観的に見たときに、大した実績ない、若くもない、作品も主流に乗ってない状態で、自分が編集者だったら企画通すかなと考えちゃって。順番入れ替えて、数字を持ってる作家になるのが先だなと。使う側もそっちのほうが確実ですし、その流れは強まってくんじゃないかなと思います。

やまだ: 今回、かわせさんにお聞きしようと思っていたことがあるのですが「どうして『GUNS&UNIVERSE』を創刊したのか」をお尋ねしたかったのです。日本独立作家同盟から出版されていた『群雛』が休刊になったため、その意思をついでの創刊、という印象が私の中にはありましたが。
 私自身は掲載作家としては途中参加組なので、ガンズ創刊時のことをあまり良く知らないのですよね。

かわせ: 悔しかった、というのが最初の動機ですね。群雛が苦しそうだなと思ってましたし、僕も業界には長いから、商品としては問題あるなとは感じていました。だから休刊するというお知らせを見たときに仕方ないと納得する部分はあったんです。
 でもそのお知らせについた、「それ見たことか」的なコメント見ちゃったんですよ。かっと怒りが湧いたんです。これからの未来のために、そんなの承知で鷹野さんはチャレンジしてたわけじゃないですか。その姿勢に共感して、手弁当で参加していた人が周りにたくさんいた。それを旧来の安全な立場から、えらそうに評する資格なんざてめえにはねえんだ、そういう怒りがわっと来た。だから終わるの、すごく悔しくなったんです。
  ただ、前述のとおり納得する部分もあったので、もやもやしながら、確かあの時は乾燥機使おうとコインランドリーに向かってて。そこでポンと閃いたんですよ。
 群雛が倒れたのは編集スタッフがほぼ無償なのに負担が大きすぎたから。そのとき波野さんがカバーキーパーと称してセルパブの表紙周りと編集の仕事を受けてたので、じゃあそれで頼んだら引き受けてくれるんじゃないか。さらに手間のかかる校正は作家相互でやる。あと僕が問題だと感じていた、買う側が何を目当てに買えばいいのかわからないというところは、ジャンル絞って固定メンバーにすれば解決できる。
  僕だけじゃなくて、参加してたみんながどんどん継げばいいと思ったので、実は、のれん分けみたいに○○群雛として、いろんな群雛が出ればいいと考えてました。それだと日本独立作家同盟が出してるみたいに誤解されるかもということで、名前は使えなかったんですが、タイトルには入れてあるんですよ。GUNSUで。
  オルタニアの企画が動いているというのは、その時聞きました。あっちは休刊前からで継ぐ形じゃなかったけど、でも「作家が集まって」という群雛と同じコンセプトの仲間がいるのはうれしかったですね。

やまだ: そうですよね、『GUNS&UNIVERSE』というタイトルの中に、『GUNSU』という文字が入っていて、意思を継いでいるということが明らかになっているのは知っていました。
 ただ、私個人としては「休刊した雑誌の意思を継がなくても、全く新しいものとして作ってもいいのに」とは思っていました。同時期に創刊した『SF雑誌オルタニア』は、私も創刊時から関わっていたのですが、あの雑誌も群雛からの派生に見えて、実は群雛の休刊が発表されるよりも前から創刊のための企画は進んでいたんですよ。なので、同時期に創刊したとはいえ、マインドは全く違うものであって。
 どちらかと言えば、創刊時の編集部の中では「群雛にはできないことをやってやろう」という空気がありました。
 生意気を承知で言わせていただくなら「群雛の意思を継いでると、群雛を超えられないんじゃないの?」なんて思ったりしていましたね。

かわせ: 僕に関して言えば、継ぐ形で正解でした。僕、生来すごいめんどくさがりなんですよ。あの時の「俺が継げば死なねえんだ、こんちくしょう!」という怒りがなかったら、たぶん自分からは動かなかった。「仕方ない、こつこつがんばろう」となって、むしろオルタニアにゲストで載せてもらうとなってたかもしれないw
 でも、継ぐといっても「雛鳥が群れて集う」のところしか継いでないんですよね。フォーマット全然違うし。
  あと、オルタニアが創刊したときに発見があって。同じセルパブSF雑誌のはずで、しかもメンバーが半分かぶってるのに、全然毛色が違うじゃないですか。ああ、これ、自分のせいだなと思ったんですよ。僕が自分の書きやすいジャンルを選んで、そこから声かけて人を集めてるから、自分の色が出ちゃってる。継ごうとしてもまるまるは継げない。結局違うものになるし、むしろ違いを意識しようと思うようになりました。

やまだ: ああ、なるほど。群雛の意思を継いだとしても、結局は編集者のカラーが出てしまい、違うものになってしまうんですね。それは確かにそう感じますね。
  なにかを始めるのは意外と簡単なんですけど、終わり方って難しいんですよね。私は、群雛はとても上手に終われたと思っているんですよ。まあ、休刊という形なので正式には終わってないのかも知れませんが(笑) きっちりさっぱり、きれいに畳んだなと。そのあたりも鷹野編集長のカラーが良く現れていますね。群雛はセルフパブリッシング雑誌という道筋を作り、編集や印税分配方法の実例を見せただけでもとても大きな功績がありました。

かわせ: そうですね。それは僕も思います。さらに言うと、継ぐならさらにその先を目指さないといけないと思うんですよ。群雛の本質って、セルパブ作家を何とかしようというところからじゃないですか。で、雑誌の作り方のノウハウは提示できた。でも、課題として、編集のコストをどうするかという部分が残った。それを僕たちは、作家自身が負担する方法で解決しようとしている。
  この編集コストって、これからすごく問題になっていくんじゃないでしょうか。誰でも出版できるようになって、ものすごい数の作品が、しかも無料で世にあふれるようになっている。収益性はどんどん悪くなってくと予想できる。その時に、編集にコストを払えるだろうか。商業出版でもすでに粗製乱造はありますし、セルパブなんかさらに、そこにお金を払えるか疑問です。
 他人の目が入ったほうが質は上がるけど、その質の上昇は編集者にお金を払う分を稼いでくれるのか。お金払えないとしたら、作家には読者の反応がうれしいというだけで書ける人がたくさんいるけど、作者の人が喜んでくれるのがうれしいというだけで無償で編集してくれる神様みたいな人が、世の中にそんなにいるのか。
 僕はセルパブでは互助のシステムを作るしかないと思う。だからセルパブ雑誌の形を継いで、さらに発展させないといけないと思うんです。

やまだ: 出版社も編集者も著者も厳しいという時代が長い期間続いていて、とくに「著者が割りを食っている」「編集に対する不満が溜まっている」という言説をインターネット上でも多く見かけますよね。でも、著者自身が出版社と編集者の役割も兼ねるようになると、これから先、本当に辛いのは生粋の編集者の方かも知れませんね。ごく一部の優秀な編集者しか生き残れない。

かわせ: 今のところセルパブで採算取るのはものすごく大変なので、すぐに出版社がガタガタになるということはないでしょうけど、電子書籍中心になった時、という課題はあると思いますね。
 ネット上だとリアル書店みたいにお客さんが回遊しないじゃないですか。紙の書籍化は初版印税でまとまったお金が入るので、セルパブでやってる人も「憧れの印税生活!」という目標になりますけど、そこが崩れたら「あれ、自分でやってたほうが取り分いいぞ」ということが起きるかもしれない。そうすると、自分と関わることによって売り上げが何倍になるか、そういう能力を編集者は明示しないといけなくなるかも。かなり大変そうですね。

やまだ: 実際にセルフパブリッシングで生活できるほどの収入を得ている人もいる状況です。私は2012年からセルフパブリッシングを始めたのですが、初期の頃に比べると、電子書籍のユーザーもかなり増えているのではないでしょうか。電子書籍専用端末を持っているのは、一部の読書好きなユーザーかも知れませんが、一般的にもスマートフォンで長文を読むことに抵抗がなくなってきているように感じますね。

かわせ: スマホの普及は大きいですね。漫画に比べると文芸の対応が遅れているように感じますけど、セルパブ作家にとっては逆にチャンスかもしれませんし。「憧れの印税生活」ならぬ「憧れのセルパブ生活」になる日も遠くないかも。この点では山田さんが大先輩ですけど、山田さんの憧れのセルパブ生活度合いはいかがですか。

やまだ: 残念ながら、私の単著はセルフパブリッシングだけで生活できるほどには売れていないのですが、ありがたいことに、毎月細々と読まれ続けているのですよね。実は数年前から、山田佳江とは別名義でライターの仕事も請けていたのですが、ライターは当然原稿買い上げで、そこそこの収入になります。だけど、長い目で見ると小説の方がわりが良いことに気づいたのですよ。
 例えば、5年前にKindleで出版した小説が、未だに売れ続けている。即金にはならくても、ある時点でセルフパブリッシングの収入がライターの単価を追い越すんです。しかも、自分の作品として形に残る。それに気づいてしまったので、2018年は仕事量を減らして小説を書く時間を増やそうと思いました。一時的には苦しくなるかも知れないけれど、長い目で見れば小説を書いた方が利益が大きいはずなんです。

かわせ: ロングテールを計算に入れられるのも、セルパブのいいところですよね。漫画の話ですけど、現在商業出版だと、単行本第一巻が出て最初の動向見ただけで打ち切り決まったりしますからね。本当にその一瞬の勝負になってて、続けていけばとか期待できなくなっている。それはお金を回していかなければいけないから仕方ないことで。それに対してセルパブは自分が踏ん張ればいいだけですもんね。

やまだ: どこまで踏ん張ればいいのか、なかなかしんどいところもあります(笑) でも、始めるのも辞めるのも自分でコントロールできるのは、セルフパブリッシングのメリットですね。

かわせ:踏ん張るばっかりじゃなくて、そろそろおいしい思いもしたいですねー(笑)今年の山田さんの目論見としては、どんな感じですか? オルタニアとガンズが順調にいくだけでも、年8回ですけど、その他に何か書こうとしているものとかあります?

やまだ:オルタニアとガンズで年8回! そんなに書かないといけないですか! とりあえず予定としては、オルタニアで連載中の『詐欺師の鍵』が次回で最終回です。ガンズに連載中の『アンフォールドザワールド・アンリミテッド』は、あと2回、そのあと『アンフォールドザワールド』の新章を3回のつもりでいます。雑誌掲載以外にも、単著を執筆しようと思っていたのですが、書かなければならない原稿がけっこう押していますね(笑)

かわせ: ガンズは昨年ぎりぎり3回発行だったので、今年は順調に出したいですねえ。『アンフォールドザワールド』も新章に突入してますし、さらにそのあとがあるという話を聞いたら、是が非でも。僕も負けじと頑張りたいと思います。

やまだ: 自由に書きたいものが書けるセルフパブリッシングですが、あえて締め切りがある雑誌連載は書かざるを得ない状況に自分を追い込んでくれるので、いいとこどりな感じもしますね。かわせさんの掲載作も、あと描いていただいている挿絵もとても楽しみにしています!

かわせ: そろそろ作業に入りたいガンズ5号、皆さんよろしくお願いします! 山田さん、本日はありがとうございましたー。

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