2016年の出版(紙・電子)状況と出版社によるネットメディアの展望。

出版業界に携わり、評論家、翻訳家でもある小田光雄さんの『出版・読書メモランダム』からのデータです。

■出版物推定販売金額 - 出版科学研究所よりの推定
雑誌
1997年  1兆5644億円
2016年    7,339億円 約47%
書籍
1997年  1兆730億円
2016年   7,370億円  約68%

書籍は、紙のコミックス。雑誌は、コミック誌を含んでいると思います。
※雑誌には広告収入があるため、出版社自体の減収額はかなりあるはずです。 そのため、そこそこ売れている雑誌でも休刊することがあります。

□電子出版市場規模(億円) - 出版科学研究所発表

年     2014  2015  2016  前年比(%)
電子コミック 882  1,149  1,460  127.1
電子書籍   192   228   258   113.2
電子雑誌    70    125   191   152.8
合計    1,144  1,502  1,909   127.1

■『出版月報』(2月号)- 全国出版協会・出版科学研究所発行の月刊誌

□コミック市場(億円)
<紙>  コミックス    コミック誌   計
2014    2,256      1,313      3,569
2015    2,102      1,166      3,268
2016    1,947      1,016      2,963

<電子> コミックス   コミック誌    計
2014     882      5     887
2015    1,149      20       1,169
2016    1,460      31       1,491

縦横がバラバラで少々、見づらいですが。

雑誌の状況では2016年は、ピーク時(1997年)から比べ約47%の推定売上部数ですが、推測されるものとして、女性誌が大幅に減数していると思います。ただ、docomoの読み放題『dマガジン』のことが週刊東洋経済にて掲載されているのですが、2016年では300万人(2015年は200万人)を超える購読者がおり、男性誌で見る限り紙よりも電子が部数を上回っているものもあります。

女性誌のV字回復はあまり期待できないと思うのですが、電子版の読み放題スタイルで状況が変わるかどうかという感じがします。女性誌の場合、読者モデル、ファッション(コーディネイト含む)、恋愛などの主力記事がインターネットに場を移し拡散したため、今後、ネット上での女性誌メディアサイトとして成り立っていくことも考えられます。

書籍は、雑誌ほどの急激な落ち込みはありませんが、小田さんによると、紙の書籍に関しては有名著者の本でも、店頭販売などの売れ方に過去のような長期間、売れ続けるといった形態がほとんどなくなってきているとのことです。

また、雑誌、コミック誌の売り上げの中で大きく牽引していると思われるコンビニでの販売では、それらの月商が30万円という数字まで落ち込み、流通(配送)経費がコンビニ経営を圧迫している状態であることも指摘しています。

電子コミックスは2016年にすでに紙のコミックスと同規模の売り上げがあり、2017年に逆転する可能性がある様子ですが、飛び抜けて販売部数のあった少年ジャンプ等を含むコミック誌は、電子版では今のところ大きく売り上げを伸ばす状況はない様子です。

紙の書籍(コミックス含む)の急激な売れ部数の減少がない様子なので、雑誌のネット上での展開がこの先の第一の課題かと思います。情報誌や専門誌はネットメディアへ情報配信が可能で、東洋経済サイトのような専門雑誌を持つ出版社は、深く切り込んだ専門的な記事を作り出すことが可能なため、簡単に他社メディアサイトは真似ができず、優位な立場になることもできます。

独自の取材力と深い専門知識を持つ記者やライターがいると、たとえ情報が氾濫しているネットの世界でも、力を出すことが可能だと思います。

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