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【作品事例紹介します】Ars Electronicaの雑多所感記 5日目

9/5(木)から9/9(月)までオーストリアのリンツにて開催されている、Ars Electronicaに出展のため来ております。現地で見たもの・感じたものを記憶が新しいうちに残しつつ、現地の雰囲気が伝わればいいなと思い、現地のレポート的なものを雑多に、毎日書いていきたいと思います。

※出展内容、具体的な試みについてはこちらをご覧ください。河津は主にInspiratorに関わっています。

9/6(金)の今日は展示2日目でしたが、展示の運営が落ち着いてきて少しずつ展示を回ることができたので、この記事あたりから作品ベースの話ができたらいいなと思っています。

ArsElectronicaのチケット売り場、入り口付近に、Open Future Labと銘打ったブースがあります。ここでは、Arsが他企業とコラボしている取り組みが主に展示されています。コンセプトは、「新しいテクノロジーを用いて新しい言語を作る」。これは言葉という意味合いよりもっと上流の、一種のコミュニケーションの形という意味合いが強いです。

コラボしている企業さんとして、バンダイナムコさんやNHKさん、またオーストラリアでArsを開催しようという取り組みについてもこちらで発表されています。上の映像はバンダイナムコさんの作品「The AI Gamer」で、AI搭載ロボットがゲームをしてクリアを目指している作品です。レバーやABボタンも実際にロボットが操作していて、敵も避けるか攻撃するかという対応をずっと続けます。(敵影画像をディープラーニングして、カメラで敵影をリアルタイム認識して対応判断をロジックで決めてる感じだろうか・・・?わかんない)

これは人間の娯楽をロボットが華麗に行なっている様を見て人によって感じることは様々だと思います。ロボットはゲームしてて楽しいのか?とか、人というものが介在しないこの世界観はAIの未来を暗示してるのかとか、個人的にはそんな感じのことを思いはしたものの、その辺りの明確な答えは明示されません。なぜならアートだから・・・

ArsElectronicaにはSTARTS PRIZEという、産業・社会の革新を技術で成し遂げた事例に対するアワードが存在しており、Innovative Collaboration部門とArtistic Exploration部門があります。こちらの作品はそのInnovative Collaboration部門でGRAND PRIZEを受賞した作品「Ciutat Vella’s Land-use plan」です。バルセロナの街の経済効果とQOL(Quality of Life)の共存を図ったプロジェクトの成果報告展示なのですが、バルセロナは観光都市なので、経済効果を上げていきたいという政府の意向がありつつも、住んでる人の満足度をいかに下げずに都市開発を行うかという取り組みを、ビッグデータを活用することでそれを行なった、という内容になります。

集めたデータは地域ごとの騒音レベル、人口密度、よく使われる公共機関とその割合、お金の流れなどをデータ化し、都市開発戦略に役立てています。データの提供元を出展者に聞いてみたところ、「政府」だそうで、国や街レベルでのコラボレート作品です。

こちらはSTARTS PRIZEのArtistic Exploration部門の方でGRAND PRIZEを獲得した「PROJECT ALIAS」という作品です。すでに一般家庭に流通し始めているスマートスピーカーに、使用している人は知らず知らずのうちに制限を加えられています。そもそもなぜOK,Googleと言わなければいけないのか。また、スマートスピーカーはその精度向上のために生活音を集音します。

人間に対してそんな制限を加えてくるAIの仕組みの端くれに対して、対抗する装置を作ろうと考えられたのがこちらです。Google Homeの頭、マイク部分にカバーを取り付け、好きな名前で読んだ際にカバーの内側でOK,Googleに変換してくれる処理や、生活音集音のタイミングでノイズを出力し集音できないようにできるそうです。

この作品のすごいところは、一見すごく地味で写真映えする訳でも、何か大きな仕組みでもない作品も、アイデア一発、それも企画出しなどのアイデア概念ではなく物事の捉え方自体を変えて見るだけ、そのアイデアでGRAND PRIZEを受賞したことです。この作品を見ると、ものづくりの際の構成要素、デザインや実装などよりも、より本質に近い部分がいかに大事かということを感じます。

そんな作品群をみながら自分たちの展示もこなし、夜はArsに来ている日本人の方だけの飲み会にお呼ばれしてご飯を食べました。

特に普段の仕事で研究開発を行う方々と多く話した気がするのですが、研究開発の進め方、あてどないトライアンドエラーと、短期的な成果を求められる姿勢とのギャップに悩んでいるようで、そこのギャップを埋めるためにArsで得られるエッセンスをぶつけて会社を変えたいと思っている人ばかりでした。そもそも今年1人で来ている人もいて、来年はもっと来れる人を増やして、作品から感じ取れるエッセンスの多様性を増やしたいとおっしゃっていました。

あとは、3日目にPOST CITYのBUNKERエリアの作品群がやばいという話をしたのですが、同じくそう思っている人も何人かいて、それだけぶっ飛んだ発想、視点切り替えの切り口がどのようにして発想されるのかがすごく気になっていたのですが、アーティストの人は自分の表現したいことを表現しているだけであり、そこにテクニックも何もないのだという、その場での結論に行き着きました。もしかしたら、イノベーティブな発想は自己表現とその感性から生まれるのではないか、だとしたら普段から自己の表現を作り公開するような機会が、企業としても必要なのではないか、個の時代って言われている一端とかその辺りにあったりするのでしょうか。難しくてよくわかりませんね・・・

みたいなみたいなことを悶々と考えつつホテルに帰りました。とりあえず今日は休んで、明日に備えます。明日はAIxMusic Festivalという、特別なライブが開催される期間です!何かに行けたらいいなあ・・・

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