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座るあなたに



座るあなたを初めて見たのは いつだったか

誰かがつぶやく時の流れに居ただけだった あなた

けれど 座るあなたと目が合った

それからと言うもの 座るあなたを見ない日はなく

わたしは あなたの言葉を座して待っていた


あなたは わたしを遠くへ遠くへ連れて行ってくれる

この世のものとも思えぬ淡き青をたたえた山の頂上や

それら山々の恵みで栄える温泉郷

せせらぎを床とするもののあはれなる座敷

果ては地下の神殿にまでも あなたはわたしを導いた



それでも わたしは未だ 動くあなたを見たことがなくて

あなたの声すら知らなかった

わたしの中の理想のあなたが 崩れ去るのが怖かった

それでも少し ほんの少しの勇気を出して

一日のうち 五分間を あなたの為に差し出した


初めて聞いた あなたの声

違和感がなかったと言えば それは嘘になる

けれど けれど

駅のホームにあなたが一人 そして誰かが傍に一人

そんな他愛のない話が私には意味がなく けれど価値があった


あなたの声に感じた違和感 それはいつの間にやら消えていた

わたしはもう一度 動くあなたの声が聞きたくなって

二言目 三言目と 気付けば十五分近くを差し出していた

物事に ら と あ をつける あなたの体は三時十分前

意味はなく けれど価値がある時間が過ぎて行く


わたしの時間は有限で 必要なもの 不要なものを取り分ける

本当は 一秒だって惜しいのだ わたしはわたしの為に生きていたい

けれど わたしはきっとこれからも あなたに時間を差し出すだろう

あなたと言う存在を 時の流れにつぶやくだろう

こんな感情が 自分の中にあるとは 知らなかったから


いつも座っているあなただけれど

座らぬあなたを見た時は とても驚き絶句した

変わらず座っていてと みっともなく駄々をこねた

そんなわたしのわがままも あなたは笑って流してくれた

わたしの言葉が あなたに届く それだけで私の心は嬉しいのだろう


座るあなたが いてくれる

それだけで

私は今日も立ち上がれる

そんな感謝を 胸に秘め

私は明日も あなたの声と言葉に 親指を立てる






最近大好きなVTuber、こなみかんさんの
ファンアートならぬファンノートでした。




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