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1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 1-10 リアル・オプション理論 (第1部 第10章) ~

2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。

本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。

(導入説明 300字、各章概要 1000字、振り返り 500~1000字 構成である📣)


1.本文概要:リアル・オプション理論

✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P180~P198 ✄

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現在でも、事業評価の定番手法はDCF法(Discounted Cash Flow method)である。DCF法では、将来その事業が生み出すであろうキャッシュフローにより事業価値を評価する。一方で、リアル・オプションが革命的だったのは、DCF法が十分に取り込めなかった「事業環境の不確実性(Uncertainty)」を事業評価に活かす術を提示したことにある。

リアル・オプションの事業計画・評価法では、不確実性を「活かす」発想をする。例えば、ある事業を始めるために工場建設を行う計画を立てたが、市場の不確実性により投資の有効性が十分に見通せない場合に、「当初計画よりも小さい初期費用で工場を作って、まず事業を始める」ことを考える。

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このアプローチのメリットは3つある。

■メリット①:ダウンサイドの幅を抑える
「市場下振れ(ダウンサイド)の際の大幅損失」を抑えることができる。まずは計画に対して一部の割合の投資で事業を始めれば、数年後に「期待した成長が見込めない」と分かった時に「撤退するか、継続か」を選ぶことができ、仮に撤退しても限られた損失で済む。

■メリット②:アップサイドのチャンスを逃さない
計画に対する一部の割合でも投資を行って事業を始めていれば、市場が急成長した時のチャンスを逃さなくて済む。更に数年後に「生産規模を拡大するか、現在の規模を維持するか」も選択できる。段階的な投資を組むと、「現状維持」「撤退」「追加の規模拡大」を選べる状況を作り出せる。

■メリット③:不確実性が高いほど、オプション価値は増大する
人間はどうしても不確実性をネガティブに捉えがちであるが、不確実性が高いとは「上振れのチャンスが大きい」と言う意味でもある。段階投資によって下振れの損失を一定に抑えてまずは投資すると、逆に不確実性が高いほど上振れのチャンスが大きくある。オプション価値が上昇する。

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なお、リアル・オプション戦略は万能薬ではない。本戦略を検討する時には、事業環境やビジネス特性が以下3つの条件を満たしている必要がある。

■条件①:投資の不可逆性が高いこと
「いったん投下すると撤回できない」性質のであること。典型例は、工場建設など巨額の固定費がかかるケース。不可逆性が高いと、事業環境が下振れした時に投下した資金・経営資源を取り返せないのでリスクが大きくなる。

■条件②:オプション行使コストが低いこと
例えば、企業買収という「オプション行使」実施の際において、該当企業が上場していた場合には、買収に多額のプレミアムを上乗せするはめになる可能性がある。(具体例:ウォルマートのシフラ買収)

■条件③:事業環境の不確実性が高いこと
事業の不確実性が高い時にのみ、オプション価値は上昇することが期待できる。なお、不確実性には大きく「内生的」と「外生的」の2つが存在する。また、「1.確実に見通せる未来」「2.他の可能性もある未来」「3.可能性の範囲が見えている未来」「4.まったく読めない未来」の4レベルでの種類分けもある。

~参考:起業の活性化と倒産法の関係~
「ある国で起業が活性化するかどうかは、その国の倒産法に影響される」という主張がある。起業は不確実性が高いから、人々がその「下振れのリスク」を恐れる限り、その国の起業は活性化しない。
※ここでの「下振れのリスク」とは、起業に失敗することによる金銭的なリスクや、倒産手続きの煩雑さなど

2.本章に対する振り返り

ここでは事業投資という観点での規模の大きい話を対象としているが、マネジメントにおける「個々の仕事への時間/工数投資の仕方」を考える際にも重要である様に感じる。"時間投資に対して得られる効果が期待に達するか" が予測し切れない場合に、ただ二の足を踏むのではなく「まず小さく始める」という視点を持つことが、トータルでの業務成果を高めることに繋がる。

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また、仕事において各判断を行う際には、「その判断により生じる最悪の状況は許容可能なものか?」を捉えることに自分は意識が向きがちである。そのため、不確実性の高さを「上振れのチャンス」と捉える考え方は印象的であった。チームを一歩上の段階に引き上げるためには、地雷を避ける様な判断のみでなく「上振れチャンス」を逃さない判断も必要な交える必要があるのかもしれない。

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本章では後段にて「そもそも不確実性とは何なのか?」という点にも触れていたが、「不確実性」そのものを反射的に恐れるのではなく、しっかり向き合いながら出来る限り分類・理解する姿勢を持つことによって、物事が持つ「不確実性」と良い付き合い方が出来るのであろうと考える次第であった。

【参考資料】



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「知恵はかい出さんとあかん、井戸から水を汲み上げる様に」を大事にしながら、日々のマネジメントに対する振り返りをツイートしています👇



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