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1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 2-1 カーネギー学派の企業行動理論(BTF) (第2部 第11章) ~

2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。

本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。

(導入説明 300字、各章概要 1000字、振り返り 500~1000字 構成である📣)


1.本文概要:カーネギー学派の企業行動理論(BTF)

✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P204~P222 ✄

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認知心理学を元にしたマクロ心理学の出発点とも言える理論が「企業行動理論 (BTF / Behavioral Theory of Firm)」である。企業行動理論や知の探索・知の深化の理論を総称して、カーネギー学派(Carnegie School)と呼ぶ。カーネギー学派の根底には、「経営学は市場メカニズムや社会全体の厚生を重視するあまり、『企業・組織の現実の意思決定メカニズム』を軽視してきた」という主張がある。

カーネギー学派の解説に入る前に、経営学における一般的な企業の意思決定の仮定を確認すると以下の通りである。

①合理性   :企業は合理的に意思決定すると仮定される
②認知の無限大:意思決定者は認知に限界がないと仮定される
③最大化   :多くの選択肢から自社便益を最大するものを絞り込める
④プロセスを重視しない:最適な選択肢を事前に瞬時に見つけられる

しかし、「厳しいビジネスの意思決定を行っているまさにその瞬間に、果たして我々はこのような情報処理を脳内で行っているのか?」という疑問がカーネギー学派の出発点である。

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認知心理学に基づくカーネギー学派を特徴づける最重要の前提、それは「限定された合理性 (Bounded Rationality) 」である。限定された合理性とは「人は合理的に意思決定するが、しかしその認知力・情報処理力には限界がある」というものである。具体的な特性としては以下の様なものである。

①合理性   :与えられた条件下で自身にとって最適な選択肢を求める
②認知の限界性:意思決定者は本来取りうる選択肢を事前に全て知りえない
③サティスファイシング:選択肢から「とりあえず満足できるもの」を選ぶ
④プロセスの重視:行動にて新しい選択肢が見えればより満足な選択に移る

カーネギー学派の理論から出てくる命題・含意は、日本を代表する様な経営者の教訓・名言と一致することが驚くほど多い。

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カーネギー学派が示す組織意思決定の循環プロセスモデルにおいて、特に重要な概念は以下の2つである。これらの基礎を前提に、企業行動を体系的に説明する独自理論として昇華したのが企業行動理論(BTF)である。

■サーチ (Search)
もともと認知が限られている組織 (の意思決定者) が自身の認知の範囲を広げ、新たな選択肢を探す行動である。

■アスピレーション (Aspiration)
直感的に言えば「自社の将来の目標水準」「自社を評価する基準・目線の高さ」のことである。

組織がサーチ行動を取れば、認知が広がって選択肢が増えるので、やがて業績も高まることが期待される。業績期待が高くなれば、企業のサティスファクション(満足度)も高まる。しかし、サーチ行動はコストも、時間も、認知的な負担もかかる。したがって、企業は現状に満足してしまうほど、「これ以上のサーチは行わない方が合理的」と考えてしまう。

また、このモデルが示す1つのポイントは「企業にとって重要なのは、常にそのアスピレーション(目線) を高く保てるか」ということである。直感的に言えば、「うまくいっている時こと、さらに目線を高くせよ」ということ。アスピレーションとは「自分のパフォーマンスが他者よりも悪い」時に上がる。目線もパフォーマンスも自分より高い人達と交流することで、自身のアスピレーションを引き上げていると解釈できる。

~メモ( ..)φ:「アッパーエシュロン理論」~
人の認知には限界がある。だからこそ、従業員はごく限られた選択肢だけしか見えない。結果、従業員は認知的に影響力の大きい経営者・経営チームメンバーから、意思決定の影響を受ける。

2.本章に対する振り返り

数式によって表すことができる【理想】に対して、人の (認知を始めとした) 限界によって生じる【現実】との橋渡しを行おうとする理論が「企業行動理論」である 様にも思える次第であった。文中でも「 "生々しい意思決定プロセス" に肉薄することを目指す」とあったが、感覚的にも納得感のある内容となっている。

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その中において、非常にシンプルなモデル (組織意思決定の循環プロセスモデル) によって組織における「成功体験を得るまでの試行錯誤」と「成功体験による邁進」が示されている 点が印象的であった。機能する循環プロセスは同じであっても、そのプロセスに投じられた「成功体験の総量」により、帰結する行動に徐々に変化が生じてしまうということを覚えておきたい。

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また、本章中では「直感的に言えば」という表現が繰り返し出るが、それらの表現に触れながら、私たちが直感的に理解している内容をモデル化したものが "認知心理学に基づくマクロ心理学ディシプリンの経営理論" である のだと本章までの内容からは理解した。マネジメントの中でも「直感」的な判断の実行段階で、チームメンバーと意思共有することに苦心することもあるが、以降の章を含めて理解を深めることが打開策に繋がるかもしれない。

【参考資料】


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