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「個人的な好き嫌い」からはじまる人事施策が企業文化をつくっている

カヤック人事部の柴田です。以下のツイートをもうちょっと考える記事を書きました。

考えたきっかけは、人事系のエンゲージメントの定義が曖昧であることや、業績との相関関係もよくわからない、というような話を勉強会できいたけど、別に真面目にそれを学ぼうという意欲がわかなかったこと

社外人事の神谷さんの勉強会に参加した。一般的にエンゲージメントと言われているけど、似ているものはたくさんあるし、そもそも定義がけっこう曖昧なものらしい。

ワークエンゲージメント:仕事への活力に満ち、打ち込んでいること(Hallberg&Schaufeli, 2006)
職務満足感:労働者が彼の仕事について抱いている感情(Smith, Kendall & Hulin, 1969)※他にもいろいろあった
組織コミットメント:組織の目標・規範・価値観の受けいれ、組織のために働きたいとする積極的意欲、組織に留まりたいという強い願望によって特徴づけられる情緒的な愛着(Porter, Steers, Mowday & Boulian, 1974)
従業員エンゲージメント:従業員エンゲージメントは、職務満足(Smith, Kendall & Hulin, 1969)という定義と、組織コミットメント(Meyer & Allen, 1991)という定義、その2つの意味合いを統合したものであると言える(Age, 2015)

これらの4つは似て非なる物。従業員エンゲージメントは、いろんな概念との類似が見られる。

上のまとめの詳細は神谷さんのサイトにあります。で、ワークエンゲージメントは離職意図を下げる効果はある(Schaufeli & Bakker, 2004)けど、業績とは関係ない?とか、まあそういう話を教えてもらった。

神谷さんの勉強会で知れることは、研究者の間ではどういうことが正しいとされているか、だ。知らなかった「正しいとされること」が知れたり、ぼんやりと考えていたことが言語化されていたりする。これらが考えるヒントになってとてもよい。

エンゲージメントの件を聞いた感想は、面白法人としては、「***エンゲージメント」が業績と関係なくても別に問題ない。どちらにせよ「面白く働けていますか?」という、「エンゲージメント風の指標」についてはこだわっていくだろうな、というものだった。

論文とかで何も検証できてないような「独自の組織論の価値」って、正しいかどうかではなく、好き嫌いで語れることではないか。

独自の組織論は、正しい方法で成果を出すためではなく、好き嫌いを話すためのものではないか。カヤックには面白法人指数という特に学術的な根拠のない指数がある。

面白法人指数
単なる法人ではなく、「面白」法人として存在できているかを計る指標も存在します。「あなたは面白く働けていますか?」
それぞれの社員が「自分が面白く働けているか」を10段階評価で表します。

この「面白法人指数」も平均とか統計、それはそれで一応やる。ただ、それをやるなら、上に書いてきたような「何が目的で、その達成手段としてこの測定方法は正しいのか?」という検証が必要になってくるし、たぶんこれじゃないだろう。

どちらかというと、お笑い芸人が「自分は面白いのか?」と日々問うているように、「自分は面白く働けているのか?」と日々問われて、社員が自問自答するほうが重要なんじゃないか、という結論になっている。そもそも、「面白く働く」という日本語はなんか変だ。定義もない。でも、「面白」法人だからそうなっている。「別に仕事を面白がることは、成果には関係ない。面白がらなくても、成果は出せる。でも好みの問題として、この会社で働くのであれば、面白がることは必須だ!」というメッセージだ。

「面白く働く」も、もっと一般的な用語で置き換えると「金銭的報酬と非金銭的報酬の組み合わせで〜」みたいなことに変換できるかもしれない。非金銭的報酬の項目分類をして、重要度と満足度の2軸で分析して、社員ごと、チームごと等で、どういう施策を打てばいいか、とかやれるサービスもあるだろう。社外の人に会社について質問されたときに「この人は正しいかどうかの観点で答えたほうが良さそうだ」と判断した場合は、「面白く働くとは、金銭的報酬と非金銭的報酬のバランスで〜」みたいな説明をすることもある。

人事の施策を「好き嫌い」と「正しい正しくない」で分ける。

それっぽい図を書いてみた。

創業社長とかは、Bの施策を打ち出すことも多いだろう。そして、人事がだんだん知識をつけてくると①の矢印の方向、つまり人事の成果的にも正しい施策になってくるのだろう。まさにいま働いている会社は、そのフェーズなんだろうな。

うざいのはCの施策で、これはたぶん、正しいかどうかだけ考えちゃっているパターンだ。人事の知識はあるが会社のことはわかってないパターンか。このケースは、その会社で長く働いている社員からのフィードバックをもらえば、②の矢印になっていく気がする。

個人的にはB→Aのルートが好き。

入社式施策の例

いま働いている会社の新卒入社式は、新入社員が「(退職時のことを想定して)退職届」をよみあげる、という形式になっている。

これは、「死を意識すると人生が充実する」というような考え方と同じで、自分が今の会社を卒業するときにどのようになっていたいのか、を最初から意識しておけ、というようなことだ。コミットメント面談の考え方にちかい。新人が今後何を目指しているかを毎年聞けるのは、気が引き締まるので先輩社員にとってもいいことだ。

「入社式に退職届を読み上げる」という、ちょっと逆説的な面白さが、好き嫌いの話。でもちゃんと意味がある(入社したときに出口を考えておけ)というのが正しい、正しくないの話だ。両立している。なので、この入社式のフォーマットは個人的にはお気に入りだ。

社員の交流に関しての例

社員も増えてきたので交流の場を増やしたいのだが、ランチにいくとか、社外サークル運営費用を出すとかは、仮に人事の施策として正しいとしても、全部普通だからやりたくない。みたいなことだな。これはまだ答えが思いついてない。

その会社における「好き嫌い」は、結局社員個人の中にしか存在しない気がするので、企業文化に沿った施策かどうかも結局個人の好き嫌いからはじめていいのでは。

思い出した話がある。「ある会社において、人事施策の肝になっている人材は、大抵人事部には存在しない」という説だ。仮にこの人を「陰の人事部長」と呼ぶことにしよう。陰の人事部長は、人事施策を正しさ以外の要素でジャッジしているのではないか。正しいかどうかは、コンサルに聞いたりいろいろできる。会社に合う合わないの判断のほうが難しい。

そもそも「社内の価値観」をベースにして好き嫌いを決めるといっても、明確な指針があるわけじゃないから、結局誰か決める人の個人的な好き嫌いをベースに「いまの会社風かな?」みたいな感じで判断していくことで良い気がする。あとは違うと思ったら周囲の人が指摘して修正していけばいいのかな。

もっと社員の個人的な好き嫌いを人事制度に反映させていくような人事になろうと思った。

最近の自分を振り返ると、ちゃんと部署の成果も説明可能にしないとな〜と、結構正しさベースで施策を考えてたなと反省した。人事としての知識が増えてくると、より正しさベースで施策を考えられるのがタチが悪い。

本当は、人事の知識が増えて来たわけだから、「社員の個人的な趣味・好き嫌い」を、(面白法人的な文化とすりあわせて)正しい成果がでる人事施策として会社制度にする方向で頑張らないといけないのだ。

そういえば、いまゲームが好きな人達と、なんかカヤック的なゲームの制度をつくろうと考えている。でも、ゲーム部屋をつくるとかはダメなんだ!普通だし!ただ、鎌倉周辺のサラリーマンガチゲーマーをあつめて何かやるとかだと、ちょっと可能性が見えてくる。これはどちらかというと「企業文化、好き嫌い」の話だ。人事制度的にどういう成果があるのかという「正しさ軸」での答えは見えていないが、まあ考えればなんとかなるだろう。わかりやすいのは採用だけど。

という方向で今後も頑張っていきます。ありがとうございました。

カヤック人事部で勉強会をやるので宣伝しておこう

即興要素の強い勉強会をやります。今回は心理的安全性とかの話しだけど、次は「好き嫌いと人事施策」とかでやってみたいな。

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