組織がうまく回っているかどうかを「上司の指示をどれだけ無視したか」で測定するのはどうか、という話。

カヤック人事部の柴田です。このツイートをもうちょっと掘り下げて書いてみます。

このnoteをざっくりまとめると

●カヤックにおいては、上司の指示を無視することも「あり」
●上司の指示を無視することを「組織のあるべき姿」として語れるのか?
●カヤックの社外人事部曰く、組織は権威関係をベースにした「統治型組織」と、信頼関係をベースにした「自治型組織」の2種類に分けて考えると分かりやすい。
●自治型組織の場合は、
信頼関係がある状態であれば、部下は上司の指示を無視するし、上司は部下の勝手な行動を許容すると言えそう。


社長から指示は2回までは無視するというエピソード

中途採用の面接で、会社のことを知ってもらうためのエピソードがいくつかあります。例えば、「社長の柳澤さんからなにか依頼をされても1、2回くらいは無視する。同じことを3回ぐらい言ってきたことは、本当にやりたいんだなと思って実行する」という話。

これは、どれぐらい「自由」があるのか、ということを伝えることが目的です。普通の会社だったら、上司の指示は従うものなのでしょうが、カヤックにおいてはそういうわけでもありません。

自分たちが必要だと判断したことは1回目の依頼で実行しますが、柳澤さんからの指示の中でも、
・それって優先順位低そう
・他の施策と矛盾してるからすぐにはできない
みたいなものは、無視する(正確には保留する)場合があります。

ちなみに、上司からの指示を無視や保留するスキルをカヤックでは「スルー力」といいます。ただ、何度も社長が言ってくる場合は、自分たちには見えてない世界があるかもしれないのでわからないけどやってみよう、という判断をすることもある、というのがエピソードの補足となります。

「上司の指示をスルーすること」を組織のあるべき姿として語ってよい理由を考える

面接のエピソードとして語るということは、カヤックとしてあるべき姿だと考えているわけですが、いったいなぜこれが「あるべき姿」なのか?

困ったときは、カヤック社外人事部の神谷さんに聞いてみましょう。以下、slackで神谷さんに相談できる公開チャンネルでのやりとりとなります。(カヤック社員は #times-kamiya に入れば見られます)

===ここからslackのやりとり===

4bata(柴田):
神谷さん、「社長や事業部長の意見をどれだけ無視したか」というKPIが何か良い感じがしたのですが、なぜなのでしょうか?

kamiya(神谷さん):
「社長や事業部長の意見をどれだけ無視したか」の回数が多いこと、これが良さげに見えるけど、なんで良さげに見えるのか言語化してほしいっていう相談ですかね?

4bata:
そうです!

kamiya:
なんか、すごいパスが来ましたね。

(中略)

反対に「なぜ一般的な組織は社長や事業部長の意見をちゃんと聞くのか?」を考えると、ヒントを提示できそうですね。少し遠回りになりますが、僕の意見の前提となる情報を共有します。


一般的な企業は、「統治」によって治められている。

kamiya:
一般的な企業は「統治」によって治められています。つまり、「搾取と分配」のルールです。戦国時代の年貢とかのイメージが分かりやすい。農民は、統領に搾取されることで身の安全を保証してもらう。ここで言う搾取とは、指示命令に従い労働をすることで、自分の体力や時間を統領に納めることですね。

より効率的な搾取を実現するために、組織はヒエラルキーの構造を成していて、管理職というお目付け役もいるわけです。ある意味で「搾取」される代わりに、組織が儲けたお金が給料として分配される。

この構造の中に組み込まれた以上は、統領の指示に従うのが前提で、従わないと「反社会的」「無能」というレッテルを貼られます。不良やアウトロー的な位置づけにされて、結果的に分け前は少なくなってしまう。だから、みんな「上」の人の言う事をちゃんと聞き、ちゃんと「搾取」されるようになる。

一方、自治によって治めされている組織もある。

kamiya:
これに対して、「変」な組織(カヤックもこの一派)はちょっと変わっています。先述の戦国時代の年貢のような「搾取と分配」のロジックで統治されているのではなく、自治で治められています。

自治は「自治体」という言葉に表される通り、自分たちで運営する共同体です。共同体は、民主に頼るフラットな組織であり、権威の上下強弱の差が少ない。代表者はあくまでも代表に過ぎず、権力者ではない。

この組織は、統治構造がない代わりに「互酬性」で成立しています。つまり、指示命令と報酬の論理ではなく、「お互い様」「ギブ&ギブ」の論理ですね。誰かのために何かをやるときは、きっと何らかの見返りが(将来的にでも)返ってくるだろうという前提で行います。或いは、自分が現在好きなことを出来ているから、その環境を守るために周囲に配慮をします。

少し難しく表現するなら、信頼関係を前提に、人間関係を経由した互酬性の規範による自治組織って感じです。最近ですと、ティール組織とかホラクラシー組織とかコミュニティ組織とか、流行りの言葉で表現されていますが、本質は上記の内容と差異はないかと私は思います。

海外だと珍しいんでしょうね。ギブ&テイクが常識なので、ギブ&ギブンはイメージしにくいんでしょう。日本だと、「お互い様」なんて当たり前すぎて意識しないので、逆輸入される概念が新鮮に映りますが。


「上司の指示をスルーすること」を組織あるべき姿として語ってよい理由は?

kamiya:
で、柴田さんの相談への回答ですが、代表取締役とか事業部長の指示を無視するなんていうのは、上記2個めの組織特徴が色濃いからなんでしょうね。

変な組織において、そういうことが発生するのは…

●一人ひとりの間でフラットな関係が成立している証拠ですし、一人ひとりが自立して個人性を発揮している
(専門性や価値観とかが組織に染まっていない)証拠ですし、一人ひとりが互酬性を判断できている

という解釈ができると思います。

少し話はそれますが、僕が幼少期の頃、うちの実家の田舎でも似たような現象がありました。田植えの忙しい時期に自治会長が来て、水門の近くの公道の端っこに生えている雑草の草刈りを依頼しに来たんです。祖父は笑いながらなんとなく胡麻化してスルーし、祖母はお茶を飲ませて見送っていました。自治会長は優しくて弱そうな印象を子供ながらに感じたのを覚えています。

こういう感じなんだろうなと想像しました。つまり、依頼に応えることで、互酬性が成立するか否か。自分の時間的・身体的余裕や、組織(共同体)への貢献レベルや見込まれる効果などを踏まえるんでしょう。

もろもろの自分のコストとリターンを判断して、自分のなかで互酬性が成立しなければやんわりと(信頼関係が切れない感じで)断るという行為になるのでしょう。

しかし、依頼が2回目、3回目に繰り返されると、相手が相当重要視しているという事柄になるので、おそらく組織(や自分)にとっても重要なことなのだろうという見込みが立ち、(社会的・将来的な見込み価値を踏まえた)互酬性が成立するということなのかもしれませんねー。


miyoshi(人事部三好さん):

個人的には、といってもほとんど神谷さんの言い換えだけど、「社長や事業部長の意見をどれだけ無視したか」というのがすでに普通の組織を前提にしている人の発想だと思いました。

その発想をする人には「社長や事業部長の意見は無視してはいけない」が前提としてあるからです。

基本、やなさん(柴田注:社長)のいうことはひとつのフィードバックなので、そこに重きをおくかどうかは、上下関係や権力関係ではなく、クリエイターであれば、その人の信用度だったり経験だったり、言ってることの確かさだと思います。その上で自分で自分の判断に責任をもつ。

だから、「社長や事業部長の意見をどれだけ無視する」は当たり前のことというか、無視するっていうか、一つの意見なので受け止めたくらいに思ってないほうが不思議。

とはいえ、権限も存在しているから、そうなってないことも多々あるけれど。というか普通できない。だからこの場合、指標にするなら、こちらが無視したかではなく、やなさんや事業部長が、言ったことを無視されてる状況をどれだけ許容できたかだと思います。なぜなら、無視するより、許容するほうが難しいから。

===ここまでがslackのやりとり===


統治型組織と自治型組織

こちらが、カヤック社外人事部の神谷さんがまとめてくれた統治型組織と自治型組織の違いをまとめたスライドです。ざっくり書くと、統治型は権威関係、自治型は信頼関係がベースになっているということです。

自治型組織において、上司の指示をスルーしたり、部下の勝手な行動を許容する理由は、「何かしら会社に還元してくれるだろう」という信頼関係がベースになっているからと言えるかもしれません。

統治型組織と自治型組織のメリット・デメリットについては、社外に説明した資料があるのでまた今度公開します。


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コメント1件

自律分散型社会は職能型組織や官僚型組織に対立する概念で、外部環境の変化が激しいことが予想されるときに採用されるのかなぁ?と思いました。そこでは相対的に一人一人の責任と権限が大きいんじゃないかという印象です。
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