見出し画像

カヤックLivingの組織論|Vol.2 スタートアップ期に「PDCA」は必要か?

ビジネスにおいてよく使われる「PDCAサイクル」という言葉。

PDCAサイクルとは、Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善の4つの単語の頭文字をとってつくられた造語で、改善活動を継続的に行うことを意味しますが、

・計画と実行しかやっていない
・改善を急ぎすぎる
・計画倒れしてしまう

など、PDCAを回すこと自体が難しかったり、だんだんと“作業”になってしまって、飽きてくる、なんてことも。

そこで今回は、カヤックLIVINGのPDCA論について、代表の松原佳代、テクニカルリードの西崎悠馬が話しました。

(編集/モデレーター 増村江利子)

----------------------------

増村 「今回のテーマはPDCA。また普遍的というか、ビジネスでよくあげられるテーマをもってきたわけですが、どうしてこれをテーマに?」

松原 「カヤックLivingでは半期に一度「360度評価」をやっていて、西崎さんの評価がPDCAのこと一色だったんです。どれだけPDCAが好きなんだ、と。一方で私は、わりとPDCAには懐疑的で。とりわけスタートアップにはあまり好ましくないと思っていたので、これは1回話そう、カヤックLivingにおけるPDCAの是非を、公衆の面前で話すか、と思いまして。」

増村 「西崎さんは、PDCAマニア?」

西崎 「まあ、マニアですね(笑)。仕組みがあると安心するので。」(前回の記事を参照)

松原 「私たちは地域への移住スカウトサービス「SMOUT」を立ち上げたばかりです。PDCAって品質管理のための、生産性向上のための仕組みだから、大規模な改善よりも、小さい改善を重ねていきたいスタートアップ期において、スピードが間に合わないのと、PDCAをすることに満足してしまいがちだから、いまPDCAなのか?と思ったわけです。」

西崎 「これまで様々な事業の立ち上げに関わってきて、結局重要だと思っているのは、ファクトやデータといった事実に基づいて、その後のポリシーやアクションを考える、あるいは変えていくことなんです。事業の立ち上げ期って、自分のやっていることに意味があるのか、分かりにくかったりしますよね。やっていることの方向が間違っていると、全員の行動に意味がなくなってしまう。事実に基づいて動かないと、チーム全体の動きが遅くなる。そうならないようにするための仕組みが欲しいわけです。」

松原 「じゃあ、その仕組みは別にPDCAでなくてもいいわけですね!(笑) 確かに実現したいビジョンと達成すべきKPIがあって、そこにつながる施策、つながる行動でなければいけないのに、行き詰まったときは特に、目的を見失いがちになりますよね。目的を見据えた上で、自分がどの視点、立ち位置で行動するかを見続ける、それがうまく回るような仕組みづくりは私も重要だと思います。
だから西崎さんに、もしカヤックLivingでPDCAをやるなら、高速でまわるようにするために、個々人がそれぞれ自分のPDCAをまわせる組織になることとセットで導入したいと言いました。」

カヤックLiving流のPDCA

増村 「カヤックLIVINGでは、毎週の定例会議で「今週のPDCA」を全員が発表する場をつくったんですよね。」

松原 「そうですね、いちおうPDCAは採用して。その代わり、みんなが自走できる仕組みということで。私の考えを聞いて、西崎さんが仕組みにしてくれました。」

西崎 「PDCAって、それぞれに自分自身でこれをやるべき、としっかり認識しないと、やるべきではないと思うんです。PDCAにコミットが入っていることが重要です。

松原 「Plan(=計画)に対して、なんのためにやるの?ってツッコミが周りから入るんです。そしてこの場がPDCAを習慣化するための、ひとつのマイルストーンになっている。みんなに発表するから、中途半端にただやって終わり、では済まない。」

増村 「PDCAに、組織のビジョンを見据えた個人のコミットが入っているわけですね。本当に必要なのか、やっていることに意味があるのかって、自発的に考える必要がある。言われたからやっている、ではなくて。」

西崎 「ある意味、大人なチームじゃないとできないと思うんです。カヤック本体に比べるとカヤックLIVING社員の年齢層は若干上なので、物理的に大人なチームでもあるんですけど(笑)。」

松原 「若い組織だと、オーナーシップを持っている人だけがモニタリングする傾向があると思います。でも、そのモニタリングをみんなでできる組織は、強くなる。」

増村 「その基盤として、誰がどんな意見を出しても角が立たないとか、そうだねって思い合えるような、普段からの人間関係も大人じゃないとだめですね。」

西崎 「大人という言葉は、安心感づくりにも変えることができますね。官僚的なチームだと、なかなか意見も出しづらい。

スタートアップ期ならではのPDCAのあり方

松原 「スタートアップ期って、PDを繰り返すと、アドレナリンが出るんですよ。たぶん。頑張っている感。でも、結局そこにCheck(=評価)、Action(=改善)が伴わないと、うまく回らない。」

西崎 「選択肢が間違っていなければ、それでも回るってこともあるかもしれないんですけど、間違っていると、やること自体に意味がないということになりかねない。新規事業のスタートアップ期は、確証が持てている段階ではないんですよね。」

松原 「あとスタートアップ期って、CAがないところからPを立てなくてはいけないことが、すごく多いんです。そのPをどれだけ立てることができるかが成功の秘訣だとも思っていて。だから、PDCAというスタイルにとらわれてしまっても、うまくいかない。Pは立ててみなきゃわからないから、まずは自分たちを信じる事とそのユニークさにこだわる事も大事だと思っていて。そのバランスが鍵ですね。PDCAを回すべきもの、Pで走るもの。PDCくらいで捨てなきゃいけないものもあったりする。」

職種によってPDCAの考え方は異なるのか?

増村 「PDCAって、どうしたら面白くなるんでしょう?PDCAって、普通に考えると面白くはないと思うんです。自分で出したPlan(=計画)でないと、やりましょうと言われたものを追うことになる。日々同じPDCAをすることが必要な部署では、大きな改善はしにくいかもしれない。しかも、PDCAはうまく回っていないとつまらないですよね。Plan(=計画)、Do(=実行)だけだと計画倒れになったり、目標を見失いがちだし、改善を急ぎすぎてもうまくいかない。」

西崎 「エンジニアの観点だと、スタートアップ期って、開発をしようと思えば、たくさん作り込めるので、何のためにこれをつくって、それでどんなことをユーザーに対して示したいのかが明確になっていないと、つくり過ぎるんです。だから、自制の意味もあるわけです。エンジニアだから、基本的にはつくっていれば楽しい。でもそれだと、半年かけてリリースしたのに、登録ユーザーは100人でしたとなりかねない。できるだけ分割して、早く出せるものを出して、ユーザーに晒していかないといけない。」

増村 「小さくつくる、ということですね。小さくつくるから、確実なCAができる。つまりPDCAが必ずしもPから始まらない、何を試すか、ということから始まっていく、という視点もありそうですね。」

松原 「ただつくるところから、エンジニアが「何を試すか」に視点を置くことで、つくるものが変わってきそうですね。職種によっても違うと思いますが、広報の仕事ってPDCAの連続なんです。コミュニケーションの仕事で、相手からどういう反応が返ってくるかわからないことを日々、プランニングしているから。小さな実験の繰り返し。もしかしたら私もPDCAマニアかもしれないと、いま気づきました(笑)。」

増村 「編集という視点では、私は、PDCAからどれだけ逸脱したPを立てられるか、どのあたりのキワまでいけるか、そのキワに面白さを感じるタイプだったりするかもしれません。」

松原 「PDCAを面白くするために自分で工夫したりアイデアを出したりとか、要するにPDCAって自分でやるものなんですよね。PDCAを重視するなら、自治、自走、自律とセットでやることが重要なんじゃないかと。

増村 「だから「大人」なんですね。」

松原 「個人のコミットが入っているPDCAを、周りがサポートする。個人の思いは潰しちゃいけない。失敗したって、生産管理の必要な商品をつくっているわけではないから、たかだかしれているわけです。8割は失敗してもいいと思っています」

増村 「8割失敗してもいいって聞いたら、大きなチャレンジができそうですね。」

西崎 「新規事業って、そうそう成功するものでもないし、1000回やって3回成功するとか、そんなものだってよく言うけど、失敗を重ねていく中で、チームを育てていかないといけないですよね。新規事業が失敗しても、チームが育てば意味がある。」

松原 「自分で立てた目標に対して、スキルも持っていて、やり方も持っているチームであればPDCAもいいかな。ビジョン、大きいところを立てられたら、あとはどんどん回っていきそうだから。」

増村 「それって理想のチームですね。自律性を持って、ビジョンを立てたら、あとは自分の責任でやりきれる。」

西崎 「PDCAって、仕組みのひとつだと思うんですが、僕は再現性のある仕組みを、日々の行動から取り出したいんです。仕組みを取り出したい、仕組み化したい。」

松原 「やっぱり仕組みマニアだ(笑)。そこにPDCAを面白くするアイデアがあるかもしれませんね。どんな取り出し方をするか。たとえば、出てきたPを視覚化すると、一方通行で終わらなかったり、別のPが分岐して出てきたり、補完したり。いろんなことが起きそうですよね。」

西崎 「やってみたけどうまくいかない、そういう失敗が多いと苦痛になるでしょうね。明確にプランを立てると明確な失敗が見えてきちゃう。やっぱり、そもそも面白いものではないのかもしれません。でもやらないと、プロダクトはよくなっていかない。頼もしい武器として、使わないといけない。」

松原 「武器か……。私はPDCAそのものが、遊びになったら、なんか楽しめるかも。試しに、7日間で振り返るのを辞めて、今週から3日でやってみませんか?」

西崎 「いいですね。やりましょう!」

※このPDCAの取り組みは「7DaysAction」という名前がついています。が、この対談の後から実際に「3DaysAction」に変更となりました!

つづく。

----------------------------

カヤックLivingでは一緒にサービスと組織をつくる仲間を募集しています!
https://www.kayac-living.com

こちらでもエンジニアを大募集中。

※バナー写真撮影:生熊友博

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?