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カヤックLivingの組織論|Vol.1 なぜ組織とカルチャーを技術者とつくるのか?

組織論とは、言いかえると「人」を企業活動の中でどうやって効果的に生かすかということですが、カヤックLivingは、組織やカルチャーを、代表とエンジニア、そして編集者でつくろうとしています。なぜ技術者なのか。そして編集者が入るのか。今回はカヤックLIVINGの組織論について、代表の松原佳代、テクニカルリードの西崎悠馬が話しました。
(編集/モデレーター 増村江利子)

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増村 「組織とカルチャーをつくる上で、なぜ技術者が必要なのか。そして編集者である私にも声がかかったのか。そこから話を始めましょうか。」

松原 「端的に言うと、私がエンジニアと編集者が好きということもあるかもしれませんね。プロダクトをつくる上で、エンジニアと編集者は要になると思っています。エンジニアは、情報を整理して基盤をつくっていく。編集者は、情報を方向づけてメッセージに昇華していく。これまでWebサービスをつくってきた中で、この2つの重要性をすごく感じていて。組織もつくり上げるものだから、同じなんじゃないかと。優秀なエンジニア、優秀な編集者ほど組織に関わってほしいと思っています。

プログラム言語、Perl(パール)の神様と呼ばれているラリー・ウォールが、プログラマの三大美徳とは、「怠慢、短気、傲慢」であると言っていて。面倒くさがりだから、自分やみんなの苦労を減らす(=怠慢)、問題の発生を最小限にしたいから効率化する(=短気)、カッコよくありたいから、みんながわかりやすいものにして、責任をもつ(=傲慢)。怠慢、短期、傲慢であればあるほど、いいシステム、いい仕組みがつくれると。

これって、組織づくりにも必要な要素だと思っていて。経営者やディレクターって、こんなことをやりたいとビジョンやメッセージを出しますよね。でも、それを仕組みに落とすのは、必ずしも得意ではない(笑)。自分がそうなんですが、だからエンジニアと組むと楽しいんですよね。」

増村 「なるほど。優れたプログラマって、優れた経営者になることが少なくないですよね。Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Microsoftのビル・ゲイツ、Googleのセルゲイ・ブリンやラリー・ペイジとか。経営や人事、会社経営における課題や問題は、プログラミングのメタファで考えると解決できる、ということなのでしょうか。」

西崎 「プログラミングそのものというよりも、プログラミングを通して常にロジックを使って考えているんです。世の中、意外とロジカルな人がいないなと思っていて(笑)。」

増村 「確かに! そうかもしれないですね。」

松原 「一生懸命組み立てて、仕様書に落としたりとかするわけですよ。でも、エンジニアの人から「これちょっとおかしいですよね」と言われて気づく、という経験がこれまでに何度もあって。それによってブラッシュアップされて、いいものができていく過程が楽しいんです。これはプロダクトに限りません。エンジニアからのフィードバックって、プロダクトに限らずありがたくて。面白さを出すなら、ディレクターからアイデアをもらえる。でもそれを細分化したり仕組みに落とす時には、エンジニアの力を借りたいと思います。」

西崎 「そう、仕組みマニアですから(笑)。自分にとっては、仕組みを考えることがエンターテイメントになっているわけです。組織づくりも、同じ視点で興味があるんですよね。」

松原 「私はストーリーやメッセージをどうつくるかって考えるのが楽しいタイプだから、エンジニアはその後を担ってくれる存在ということですね。」

西崎 「役割という文脈でいうと、新規事業をつくる際には、ビジネス面も理解しつつ、どういう数字が必要かを考えてとってくる、それをエンジニアがやらないと。現在のWebサービスの状態を示すことも、エンジニアの責任としてやる必要がある。最初につくるときから数字を気にしているエンジニアは少ないけど、そこは自分の役割なんです。」

松原 「一番ミクロな視点を持っているんですね。どういう数字が取れるか、どういう要素があるか。つくっているからこそ知っているミクロな部分。それをどう扱うかはマクロな視点が必要で、その両方の視点を持っているエンジニアがいると心強いですね。私からお願いをしていたら遅くなるから。事業のスピードが一気に上がるんです。」

増村 「エンジニアの責任という言葉が印象的ですね。これまで考えられてきたエンジニアの仕事の領域があるとしたら、それを完全に越境している。越境しているからこそスピードが上がるんですよね。」

松原 「越境しているかどうかで、経営のスピードが全然違う。経営者がこういうことのために、この数字が見たいと思う感覚を共有できているわけですね。こういう数字をみんなで追うべきだという視点がエンジニアにある。エンジニア主導で伸びている会社があるとしたら、そういう理由が背景にあるんじゃないかな。最高技術責任者(CTO=テクニカルオフィサー)って、だからこそ重要なんじゃないかと思います。開発をリードするだけじゃないんですよね。」

増村 「『ザ・タワー』という高層ビルを経営するシミュレーションゲームがありましたよね。知ってます? テナントをどう増やしていくか。エレベーターが混んでいたとしたら、どうさばくのが効果的なのか。どういう仕組みをつくれば、円滑に動いていくのか。プログラミングの世界には、仕事を簡単に効率よくこなすためのヒントが山ほどあるけど、作業の話ではなくて、視点の話なんですよね。視点を経営にまで広げていくときに、どういう思考を持つのか。」

松原 「あれ、はまりました。そうそう、視点と、思考のしかたですね。プロダクトをつくることから、そのまま会社をつくることにスライドすると、面白いことが生まれていきそうだなと。」

西崎 「「越境」できることが、小さい会社の面白さですね。」

松原 「エンジニアって、手を動かすとつくれちゃうから、目の前にあることが優先になってしまうんですよね。採用も目の前にあることでするわけだけど、小さな会社には、みんなで会社をつくる醍醐味もある。そこはディレクター、デザイナーが中心になりがちだけど、だからこそ異なる、オリジナリティのある視点が欲しいんですね。」

増村 「もうひとつ、組織とカルチャーをつくるときに編集者を入れたい理由はどこにあるんでしょうか。」

松原 「ビジネスデザインの領域で、デザイン思考という言葉は、最近よく聞きますよね。ビジネスをつくっていくこと、UX(ユーザーエクスペリエンス)を考えることをデザイナーが担う組織が増えています。組織によって違っていいと思うのですが、カヤックLivingは、そこに編集者を入れたいんです。」

西崎 「いまシリコンバレーでいわれるようなデザイン思考って、方法論がたくさんあると思うんですが、エディターの方法論でいうと、参考にする方法論があるのか、独自の方法論があるのか、そのあたりに興味があります。」

増村 「編集術のようなものはあっても、会社を編集することには、そのまま転用はできないですね。結局、独自の思考術という方法をつくっているんでしょうね。編集とひとくちにいっても、その幅はとても広い。そして幅だけではなくて奥行きも広い。入口から出口までを俯瞰して、どんなメッセージを、どう伝えるかを考える必要がありますね。」

西崎 「考えようによっては、編集者ってデザイナーよりも変えられるものやオプションが多いですね。」

松原 「編集者の方法論って、アウトプットではなくてインプットの部分にあるかもしれないですね。インプットするときの情報の持ち方、整理の仕方。私は、その情報が面白くなるように情報を整理してしまう傾向があります。」

西崎 「面白さって仕組みにできないんですよね。」

松原 「情報をインプットした後に、仕組みとしてきれいに整列させることよりも、ストーリーとして面白いような整理のかたちを取るんです。」

西崎 「方法論じゃなくて、アートですね。」

増村 「何かしらの「問い」をずっと携えていて、情報が入ってきたときに、その問いとどう合致するかで情報を整理していますね。だから問いとセットで、格納もアウトプットもされていく。格納のしかたは、職種によって異なる文脈がありそうですね。」

松原 「西崎さんはきれいなマスの中に格納されていく感じがします。話していて、脳の使い方が違うなって思うことがある。見解が違うから(笑)。だから西崎さんからの意見は、一旦違うフィルターを通して、なるほど、と解釈していたりする。同じ情報を持っても、見えている世界は違うんですよね。」

増村 「これは編集者の思考なのか、個人的な思考なのかわかりませんが、自分自身は、先を先を見ようとするタイプかも。半歩先、1歩先にどんな未来が待っているのか。待っていそうなのか。もはや想像の世界です。いま起きている現象があるとして、こうなるんじゃないかという予測を立ててみる。そういう、予兆を感じられるかどうか。こうなったらいいという自分の願望も含まれているので、客観的にきれいに格納できないというか、格納が全部自分ごとになってしまう感じはありますね。」

松原 「エディター出身の起業家の方たちの組織づくりは、面白くできている感じがしますね。ビジョンが素敵なんです。ただ、現代は技術と環境、ビジネスの変化するスピードがとにかく速い。そのスピードにのるためには、ビジョンを支える仕組みが大事だと思います。ビジョンがあり、見えるものがあるほうが共感は生まれやすいから。両方ある組織は強い。だから技術者と編集者なんですよね。」

つづく。

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https://www.kayac-living.com

※バナー写真撮影:生熊友博

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