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テネリフェの話 (2)

前回までのあらすじ:島についた。

(5) 巡礼の地

南端のスール空港に到着する航空券は、北到着のものより安い。だから僕らは南に着いた。そこから高速道路で家を目指す。この島出身のL、その友だちFが運転する。

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大量に林立した風力発電ユニットを眺めているうちに、休憩地点についた。

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時計でいうと6時から3時まで、ぐるり30分ぐらい逆走し、ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・カンデラリア教会に着いた。周りは海だ。

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堂であり、こういうのをバシリカという。この島で一番重要なバシリカだという。建物の周りでは、聖なるカレンダーや宝くじを売っている人がいた。

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教会から少し歩くと、洞窟のような建物があって、何かがあった。僕にはこれが、祀られているのかどうかも判別できない。何かがあるが、その意味が見えない。知識は光に例えられるが、こういうときにもそれを実感する。

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撮っていい場所だけを、すこしだけ撮った。教会には、よくあるエレメカ筐体があり、ガラスケースに何百本もロウソクが並んでいるような姿をしている。手元の投入口にコインを入れると、「入れた金額÷10セント」の本数だけ、ロウソクが点灯する。1つずつ、左から順番に、だ。西洋だ。

今年、伊集院光さんが深夜ラジオでよく、巡礼の話をしていた。長崎・五島列島の隠れキリシタンの話。遠藤周作の『沈黙』が2016年にマーティン・スコセッシによって映画化され、それきっかけだったかもしれない。同時に、伊集院さんのスタンプラリー趣味が合わさって、教会巡りを断続的にやっていたのだ。

僕はラジオを聞いてから、巡礼にすこし関心を持っていた。それで、建物の中にも入って、しばらく色々見た。

(6) 休憩

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Lの友だち・Fは、Lには秘密でLのお母さんを連れてきていた。お母さんは普段、隣の島に住んでいるので、空港でLはとても感動していた。そのお母さんがここまで運転してくれて、車の後ろにはトルティーヤが積まれていた。

トルティーヤは、じゃがいもと玉ねぎを混ぜて卵を焼く。ほうれん草がたくさん入っているのが、LだったかFの好みで、そうなっている。白カビサラミも、Lが好きなやつらしい。

とにかく僕は遠慮なく食べる。他人の家庭に甘える病気かもしれない。それぐらい食べる。だいたい、娘に秘密で来たお母さんが、その日のために作ってきた料理を、快晴・海辺で自動車の荷台に積んだまま、キャンプ用のイスを適当に並べてみんなで食べるんだから、何を食べてもおいしいに決まってる。最高の食事になった。忘れないうちに、家でもこのセットを再現しようと思う。

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(7) 右上

さらに車で右上に行ったら、家についた。大きな都市がある。また、古い大学都市ラグーナがある。世界遺産だ。スペインが攻めまくっていた時代、いろんな国に都市を作ったが、それらの都市設計のモデルケースになったらしい。

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歩いていると、道とか景観の変化をかなり意図して作っていることに気づく。どのような計画が、どのような歴史に上書きされたか、僕はあまり把握できていないが、自然発生の逆って感じだ。

ある土地に侵攻して、そこの歴史とは関係なく合理的な都市を作る。教会から港まで、そこは支配される。風土とは関係なく経済的に有利な作物をプランテーションする。

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(8) 寝る

家について、寝た。宿代が必要なくなってしまって、食費もゼロに近い。これでは良くないので、まず、「何かでお礼をする」ということだけ決めておいた。そうしないと落ち着かないで眠れないぐらい、すでに世話になりすぎた。

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見る風景がどれも、自分が持っていたスペイン系の地域の風景イメージととても合致する。合致するものだけを都合よく認知してしまっているだろうか。何度もインターネットの写真でこういうのを見てたからかもしれない。

カトリックの雰囲気が強い。僕が住んでいるベルリンはドイツ北部で、特にプロテスタントのほうが強い。不思議な差だ。

右下に猫がいます。

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これです。親子です。

寝て起きると、メモがドアに挟まっていた。間違ったドイツ語で「11時に合流しよう!」と書かれていた。間違ってることは分かるけど、僕もこのドイツ語を正すことができない。それでも11時に合流できた。

僕もLも初学者な今は、とても貴重な時間だ。こんな時期は、今だけ。あとで思い出した時、金色とか銀色に見えるだろう。メモは持って帰って、机の前に置いてある。1人で勉強するより、こういうのがあったほうが進みが良い。

Fのお父さんが今日、ベネズエラ料理を作って、みんなで食べるらしい。僕も行っていいか確認したら、いいって。生きててよかった。

つづく