第2章:クラッシャー部下体験記④乱心

世の中、クラッシャーな上司についての情報はあまたあるが、残念ながら部下からつきあげられる体験記というのはあまりない。
やはり、部下を否定することは、それすなわち自分を否定することでもあるからだ。
どういった部下であれ、マネジメントするのが上司の仕事なのだから。
どうにもならないのは、部下ではなく上司の問題。
この理屈のために、不要な我慢を重ねてしまった。

これは心がそれなりにもどった今だから言える話である。
そもそもBは、チーム内が仲良くやれるかなんてどうでもよくて、要は結果が出せれば良かった。
私は、もちろん結果も出したいが、日々働く仲間同士で良い雰囲気を保ちたかった。
しかし、Bはその価値観をそもそも共有していないので、仕事のために私も含めてパートタイマーのスタッフなどにも容赦なく叱責した。
それが、ものすごくトゲのある言い方で、それに皆が傷つきながらもやはり内容は筋の通った事だったので、反論の余地はなかった。

この頃すでに、仕事で成果を出せない自分に焦りと無力感を抱え、注意力がなくなっていた。
そこにまたミスをして、Bから注意。
「私の不在中、仕事の対応してもらっても、結局だんごさんのミスでやる事増えるんですよね。」
自信なんて、とうの昔に失ってる。
だからマネジメントの立場としての自分はもはや機能しておらず、彼女のそうした勤務態度に注意できないことが余計に増長を招いた。

いよいよ例えようのない憂鬱が自分を襲い始めた。
判断力はゼロ、表情が乏しくなった。
会議の話はもはや頭に入らない、成果を上げていない自分は叱られることしか頭になく、この頃はビクビクした毎日だった。

実はBとのやりとりをもっと具体的に書きたいが、ほとんど頭から抜けている。
傷ついた感覚は凄く残っているが、思い出す言葉だけを記述しても、ごくごく普通の会話にしか表せない。
むしろ、私が10:0で悪いとしか思えなくなる。

しかし、結局彼女もモラハラに近いところがあったのだろうと今にすると思う。
彼女が過去にリーダーをやっていた部署では三人が彼女の言動で退職し、現在も、すぐ隣の部署で働いていて、彼女の下についている女の子はうまくやっているように見えたが、よくよくその子に事情をきくと、外から見えない形でBからの攻撃に悩んでいた。

私の場合は、上司Aにつづき部下Bで悩むことになり、2人連続で人間関係に悩み、いよいよ自分の方がおかしいのだと思うようになった。
それまでは、人付き合いは得意だと思っていた自分が完全に否定されるわけである。

不眠と思考停止の日々、限界を感じていよいよ心療内科の戸を叩いた。
その日も、病院にかけこむ直前にBからの攻撃を受け、逃げるように受診。
もう、完全に感情がコントロールできずに診察室入った瞬間に涙が止まらなくなった。
記憶ができない旨を話すと、脳の前頭葉や海馬にも影響あるかも、、、という話をされた。
休職を勧められたが、当時の私には全く考えたことがなかった。
むしろ、働かない自分なんてあり得ない。
私の存在意義は?
実家になにかあったら?
休む気はないと明確に答え、抗うつ薬が処方された。

実はその五年前に販売部門で店長をやっていた頃に過労で一過性の抑うつを起こしメンタルクリニックにお世話になった。
その時も、そしてこの時も薬は出されたが、私は一度飲んだら抜け出せなくなるという思いから、いずれも服用することはなかった。

この時も「メンタル不調で病院にいった」事で、Bに対しての免罪符を求めていたのかもしれない。それだけでも気持ちが軽くなったのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?