第2章:クラッシャー部下体験記③迷走

主要取引先の重鎮のご機嫌をとりつつ、当社として新しく開発したサービスを受注してきてほしい。
これが、会社から私に与えられたミッションだった。

が、そもそも私の担当のお客さんの業種にはマッチしない点もあり、営業をしてもその課題は覆せなくて悩んでいた。
売る商品は違えど着実に成果を上げるBに対し、なかなか成果を出せない事に自分の存在意義が揺らぎ始める。

当時の私は仕事人間だった。
仕事人間でバリバリこなす姿を親からも、友人からも、そして恋人からも評価された。
そんな自分が仕事で成果を出せないとしたならば、一体何が残るだろう。
部下Bなら、きっと自分と違って結果を残すだろう。。。とか彼女と比較し、ネガティヴなことしか考えられなくなった。

仕事人間という名のプライドを守るべく、私の存在価値が認められることはないか考えた。
それは「相手に自分という存在を認めてもらうこと」という、完全に歪んだ希望に変わってしまった。

そんな中、とある企業で初めて受注に結びつきそうな案件ができた。
それは、とある企業のCEO、Zさんという方の一存であっさり決まった。
Zさんは、60代後半にもかかわらず忙しく飛び回り、巡回営業でお目にかかることも少ない方だったが、会うと必ず気さくに声をかけてくださり、落ち込んでいた私にはありがたいお客さまだった。
そのうちZさんや秘書さんたちと飲み会の仲間にも入れてもらえるようになり、お近づきになれた事が嬉しかってた。

しかしながら。
ある時から、このZさん、困った人になる。
自分のペースで商談に呼び出す事が増え、秘書に頼むような仕事を、私に依頼してくる。
「飛行機出発まで仮眠をとるので、電話で起こしてください」とか。

ある日、またまた飲み会の誘いがあり、行ってみたら。。。二人きりだった(; ̄ェ ̄)
お客さまなので、悪い扱いもできない。
会社からもこのお客さんは特に細心の扱いを求められていたので尚のこと。
できるだけ色気のない話をした。
歴史とか、故郷の話とか。。。
カラオケに連れていかれた。
これ以上誘われたら断ろう。決めていた。

カラオケ出て、いきなり携帯におさめられた部屋の写真みせて
「どうだ、綺麗に整頓してあるだろう?あのタワーマンションに住んでるんだ」と指をさす。
私は最大限におどけて、「わ、お近くなんですねー、便利ですね( ^ω^ )あ!私は家までバスのか乗り継ぎがあるので、、、、急ぎます!ありがとうございました!」と逃走。

翌日以降の誘いがしつこくて仕方なかった。
休日に映画どう?とか、、、昭和かと。
女性である限りこういう経験って、折に触れて経験するものとはいえ。
腹立つ。猛烈に腹立つ。
結局仕事がとれたのは、私の仕事が認められたものではなく、結局は女性としてのバイアスがかかること。70歳手前のおじいさまに、誘えば言うこときくと思われた事も腹が立つ。

でも、実は一番腹立つのは自分に対してだ。
誰かに自分の評価を認めて欲しい。
完全に仕事と自分を混同している。
皆に悪く思われたくない。
可能なら、他の人よりも少しだけ良い評価をしてほしい。
けれども、結局のところ自分の望む人以外からは愛されたくないのが本音だ。
この微妙な境目を越えるリスクがあることをどこかでわかってて、誰かの気をひいてしまうことがある。
近寄って欲しくないのに、近づけるような仕向け方をしてしまう。それが完全に今回は、分かりやすい形となってしまっただけのことだ。

本題から逸れたが、結局そうやって自分が認められて仕事を受注できても虚しくなるばかりであった。

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