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うつや双極性障害の「日内変動」をどう乗りこなすか?周囲のひとはどうする?

<目次>
日内変動とは
実際の日内変動の様子
  (私(双極性障害)の場合)
  (起立性調節障害の場合)
日内変動は症状全体のバロメーター
乗りこなし術①∼⑩
周囲のひとはどうする?①∼⑧
病むひとも家族も一日の終わりに笑顔になれる工夫が大切

◆日内変動とは

体内に備わった時計機構(体内時計)によって、体温や血圧などのバイタルサイン、精神症状などが1日の中で変動すること。(アルメディアWEBより)

抑うつ気分は1日の中でも波がみられることが多く、朝方は最も気分が落ち込んで、午後から夕方にかけて症状が軽くなることがあります。(磐田こころのクリニックWEBサイトより)

朝はだるくてだるくて予定をキャンセルしたのに、午後になると元気が出てあれこれできるようになったりします。それならそれでよいじゃないかと思いたいのですが、キャンセルした相手に申し訳なくて、午後も委縮してやりたいこともできずに過ごしてしまったりすることがあります。

子どもの抑うつや起立性調節障害の場合、登校に困難が生じますが夕方は元気になる。習い事はどうする?という問題が発生します。習い事で同級生に会って、「おまえ、学校来ないのに習い事には来るのか?」などと非難されるなども起こります。

病気、というと、1日中寝込んでいられればわかりやすいのですが、日内変動があると、午後の元気な姿に「あれ?元気じゃない?朝はさぼったの?」と誤解されやすく、本人も後ろめたさを感じやすく、貴重な元気時間を活かせないことが症状の悪化につながるように思います。

◆実際の日内変動の様子

私(双極性障害)の場合

私は双極性障害という精神疾患を持っています。元気すぎて過活動してしまう「躁状態」と、その反動で電池切れしてしまいなにもできなくなる「うつ状態」を繰り返す病気です。気持ちだけでなく体も頭も乱高下する、なかなかつらい病気です。

そんな私は日内変動が強めなのではないかと思っており、特に朝のめちゃくちゃだるくて気力が上がらない状態を勝手に「朝うつ」と名付けています。

私の朝うつは、「ひたすらだるい」です。7時半くらいに目は覚めます。でも泥沼の中でもがいている感じで、結局二度寝。がんばって起きてもだるさで体は動けず、気持ちはひたすら「嫌だ嫌だ、何もしたくない、こんな私が何で生きているんだ?」を無限ループします。

双極性障害は命の危険のある病気です。うつ病よりも自殺率が高いと出ています(私は「自殺率」ではなく「致死率」だと思っていますが)。無理して起きて生きることへの意味を問い始めると危険。「それなら寝ていよう」が私の対処法です。

私が布団を出られるのは、早くて10時、だいたい11時。「今日はほんとうにつらい」となると夕方まで起きられません。寝返りも打てないほど、トイレにも行けないほどのだるさと1日中戦うことになります。

起立性調節障害の場合

我が家の子どもは3兄弟。うちふたりに起立性調節障害の診断がおりています。思春期の身体の成長の激しさに自律神経がついていけずに起こる、血圧やめまいの症状です。よくある「朝礼で倒れる子」などはこの病気だと言われています。

子どもがこの病気になった時、身体症状も心配でしたが、私が気になったのは抑うつにもとれる気力や興味関心の低下でした。児童精神科で起立性調節障害と抑うつの関係を尋ねたら、「起立性調節障害そのものがうつ病の一症状だという説もある」とのこと。

子ども①の様子

症状重ための上の子。昼夜逆転もしばしば。朝は徹夜しない限り起きていない。起こしてもものすごくつらそうなので、予定があってもキャンセルだらけ。起きてくるのは早くて12時、遅ければ16時くらい。睡眠障害もある子なので、寝つきも悪いし寝すぎる。

抑うつが強いので、午後もつらそう。習い事も行けなくなって午後の予定もがら空きだけど、突発的なイベントなどには行けることもある。ごくごく稀に体調、体力、気力、睡眠時間が噛み合った時のみ。

子ども②の様子

末っ子は軽めの起立性調節障害。それでも朝はつらそう。早くて8時、遅ければ12時くらいまで寝ている。つついて起こそうとしても、この世のすべてを拒絶したい!と言わんばかりの反応をするので、つらいなあと起きるまで放置。

起きられる時間に起きれば、そのあとは元気いっぱい。習い事もばっちり行く子です。

◆日内変動は症状全体のバロメーター

うつ病も双極性障害も、起立性調節障害も、毎日の自分の変化を微調整するのがたいへんな病気です。「微調整」なのに、ちょっとずれると気分が跳ね上がったり、奈落の底に落ちたり、とんでもないことになります。神経を尖らせてすり減らして、自分の調整を行っています。

こんな毎日なので、逆に大局的な症状の変化に鈍くなったりします。気持ちの調整に一生懸命になっていたら、体のだるさを見落としていたり。自分の状態を見極めるには、「10分前と今の違い」も「先週と今週の違い」の両方が必要なのだけど、本人は日々の調整に必死なので、意外に大きな変化に気づくのが遅れます。

日内変動が強く出る、つまり起きるのが遅くなってきた、朝のだるさが強くなってきた、眠りが浅くなったなどがあると、病気全体の状態も悪化します。この辺は家族が気づいてあげるといいかなと思って、子どもたちの状態は引いて見るように気を付けています。

◆日内変動乗りこなし術①~⑩

日内変動は、言ってみれば「気まぐれな馬を乗りこなす」ようなものです(でも馬に乗ったことない…)。穏やかに問題なく過ぎることもあれば、乱高下激しく必死でしがみつくこともあります。私がこれまでにやってみてよかったことと、子どもたちに効果のあったことを書いてみます。

①起きられるまで起きない

とてもとても贅沢なことであることは百も承知です。でもそれでも、「起きられない時は起きられない」と自覚して、無理に起きないことが大切です。起きた後をはつらつと過ごしたいなら、起きられる時間まで起きてはダメ。

②やる気がみなぎるまで布団の中

「今日は○○をやるんだった!」と思えたら起きてよし。やる気が満ちて、やりたいことにわくわくしたら起きてよし。「あーやだなあ」と思っているうちは危険水準。布団にいましょう。

③南向きの部屋で寝起きする

おひさまパワーは偉大です。日が差し込みやすいように、また室温も上がりやすいように、南向きの部屋で寝起きするのがおすすめです。

④カーテンはレースのみ

日光を浴びて体は目を覚ますので、自律神経がうまく働いていないひとに朝日は大切なスイッチ。我が家は寝室に厚地のカーテンがありません。薄いレースのカーテンのみで、日の出とともに朝日が差し込みます。

⑤布団の上であぐらかいて深呼吸

起立性調節障害などは姿勢で血圧が敏感に反応するので、いきなり立ち上がってはダメ。起きたら布団の上にあぐらをかいて深呼吸。伸びをしたり外を見たり、しばらくボケっとしてから起きます。

⑥起きたら水、またはお茶をコップ一杯飲む

血圧を上げるためにも水分は必要。起きたらまずはしっかり水分補給。

⑦朝食に必ず味噌汁を。塩分摂取で血圧を上げる

塩分は血圧を上げてくれます。朝ご飯に味噌汁、は低血圧のひとには大切な対策。

⑧午前中に予定を入れない

朝から起きられない自分を気に病んで「朝に楽しみなことがあれば起きられるかも」と思いがちですが、これは間違い。「楽しみ」だと思えるのは、そう思える気力があるから思えること。気力が枯渇している朝うつの最中は、どんなことも「くだらない」としか思えず、そう思ってしまう自分がほとほと嫌になります。

遂行できなかった予定も気に病んでしまうもの。自分の負担になることはたとえ良さそうなことでも避けています。

⑨午前のドタキャンで午後の行動を縛らない

「朝の待ち合わせをドタキャンしちゃった、それなのに午後を楽しく過ごすなんて申し訳ない」と思いがち。確かに出先でドタキャンの相手とばったり会ったら気まずいけれど、萎縮して午後まで台無しにするのはもったいない。

できれば、病気や症状や日内変動の話ができる相手と、ドタキャン想定内の約束をするのがいいのだけど、なかなか難しいのかもしれません。

⑩明日着る服を決めてから寝る

特に午前中に予定がある時におすすめ。天気や気温の予報も考慮して、着たい服を決めておくと、次の日に迷わずに済むのと、好きな服を楽しみに起きられる可能性が高くなる(かも?)。朝に「嫌だなあ」と思うことを少しでも減らす、という意味でも大切なことです。

◆周囲のひとはどうする?①~⑧

病む者としての私が「(周囲が)こうだといいな」と思うこと、病む子どもたちを見ていて「こうするといいのかも」と気づいたことを書いてみます。周囲からできるサポートです。

①無理に起こさない

さぼりたいがために寝ているのではないと理解さえしてくれたらそれでいいと思います。このひとには理由があって「起きられない」んだと。

②カーテンを開けて換気しておく

できるだけ早く起きられるようになるために、先に起きたらカーテンを開けて日光を入れることと、暖かい季節なら窓を開けて新しい空気を入れておくと目覚めが早くよくなります。

③静かにする、にぎやかさで起こそうとしない

にぎやかにすれば起きるだろうというのは残念ながら的外れ。本人はひたすら「嫌だ」としか思わないので、布団にさらに潜るだけです。起きる時間がずれ込むので、起きられるのを静かに待ちましょう。

④午前中に入れた予定はくじ引き

午前中の予定は「行けたらラッキー」と思って組みます。ドタキャンは常に想定しておいて、怒らない、恨まない。「あなたのせいで行けなかった」と言ってはダメ。うつの最中にあるひとを責めたら、最悪の事態も想定しないといけません。

⑤午後の楽しみを満喫する

午前中は寝倒しても午後があるじゃないか!と考えられるといいです。午前中のドタキャンを気に病ませないためにも、午後は午後の楽しみを満喫できると、明日は早く起きられるかも?

⑥学校に行けなくても習い事は行かせる

子どもたちが朝起きられなくなって、学校に行けなくなった時、学校に対して最初に宣言したのが「学校は行けなくても習い事には行かせます」でした。できないことがあったからと言って、罰則的に楽しみを取り上げるのは逆効果です。しかも「できない」には理由があるのですから。

⑦明日の予定を確認してから寝かせる

子どもには寝る直前に「明日は○○の予定が何時からあるから、何時に起きられたら行こうね」と話します。おとなは自分で頭に叩き込んでから寝ます。まあ、前夜に「あまり行きたくないなあ」と思うなら、調子が落ちているので翌朝は起きられないと予想するのが良しです。

⑧明日の楽しみを作ってから寝かせる

明日やりたいこと、見たい映画やYouTube、読みたい本、着たい服、行きたいところなど、なんでもいいので「明日の楽しみ」を確認してから寝ると吉。目覚めは(遅くても)楽しい方がよい。朝うつは軽い方がいい。

◆病むひとも家族も一日の終わりに笑顔になれる工夫が大切

私は精神疾患でも不登校でも、笑って暮らすのは可能だし、それが一番大切だと思っています。特に一日の終わりを笑って過ごせない生活は、思い切った改革が必要です。笑って一日を終えるために、病む者としての自分も病む子どもたちの家族としての自分も、なにができるだろうかといつも考えています。

きっかけや対策は小さなことで、どこにでも落ちている。ただ気づいていないだけということが多い気がします。いろんなことがあったけど、たいへんな一日だったけど、まあいいよね、明日があるもんねと思って寝られるように、できることをやっていきたいと思っています。


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