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人と人とを繋ぐサービスから離れられない理由。〜暮らしは型がなく千差万別。だから、とても難しいのだけどやりがいがある〜

最近自覚したことがある。私は、人と人とを繋ぐサービスがとにかく好きだ。それをつくることが好きだ。

サービスとものづくりのアイデアは、ほぼ100%マッチングしか出てこない(そもそもWebのサービスのほとんどはマッチングというのもあるが)。出会わなかった人同士が、オンライン、デジタルを通して、まさかの出会いを得る、そしてそこでしか実現しなかったコミュニケーションが生まれたり、それによって暮らしが変化したり瞬間が起こる場をつくることがとにかく楽しい。

そのとき私は相手に対して何もしていない。何かを教えることもできないし、まあ、指導したり、導いたりなんてたいそうな技能は持ちあわせていない。でも、まさかの出会いが生まれる場をつくることは、できる(好きだ)。

移住はマッチング好きにとってたまらなく楽しい

最近のめり込んだのが「移住」だった。簡単に言うと都市部の人材と、地域とのマッチング。その前にやっていた住宅も面白かった。建築家とのマッチング事業だったから、オーダーメイドゆえ、本当にいろいろな組み合わせがある。ただひとつ、家は時系列がそんなに複雑ではない。設計、地鎮祭、施工、竣工とステップが決まっているし、屋根のない家には住まないし、玄関のない家には住まないし、「家」である以上「家」であり型がある程度決まっている。

でも、暮らしは、型がない。ひとりであっても好きなものも、流れる時間も、仕事も何もかもが違う。ひとりじゃなくて家族だったらそれはもうなおさら。海が好き、山が好き。ひととの心地よい距離間はこれぐらい。と好みは家とは比べものにならないくらい細分化している。

そして観光から何度も行って、二拠点になって・・・という風に移住のステップとは言うけど、戻るし、飛ばすし、数年止まるし。振り出しに戻るなんてこともザラにある。

マッチング好き冥利につきるといっても過言ではないぐらい、この移住という領域のマッチングはやりがいがあり、私にとってとにかく楽しいものだ、と最近受けた対談の中で気づいた。

自由すぎる好みと、かつ段階もバラバラ。先には、移住者つまり生活者側の千差万別具合を書いたけど、地域も本当にバラバラ、個性的な強者揃い。そんな千差万別の移住において、ここぞという出会いが生まれる瞬間をつくるのはとても楽しいことだ。

原点となったのは絵のマッチングサービス

マッチングが楽しいと気づいた原点のサービスはART-Meterという絵のマッチングサービスだった。もう10年以上前、まだWebディレクターではなかった頃、そしてWebサービスの運営を何も知らなかった頃に、ポンと任せてもらったサービスだった。そこから数年間事業責任者として取り組むことになる。

アマチュアでただただ絵を描きたい人と、絵が欲しい人を繋げるマッチング型のECサイト。誰が買うのか?と思うだろう。でも、売れたんです。「学生の頃は絵を描くのが好きでね、でも結婚して子どもを生んでさっぱり書く機会がなくなって。でもこのサービスをきっかけに描いてみたの」。そんな見ず知らずのおばあちゃんの絵を、会ったこともない若い子が気に入って買う。おそらくそのコの部屋に大事に飾られるわけだ。

そしてそのおばちゃんはまた描き始め、絵をインテリアにする楽しさを知ったその子は、誰かに絵をプレゼントしたり、部屋に気に入った絵を増やすようになる。

そんなシチュエーションに何度となく出会した。双方の人生が少しだけど変わる場に居合わせた。そして、そこから絵描きとしていまも活躍する人が生まれている。

この体験が原点にある。

繋げる場をつくることに徹する。

人と人を繋ぐ場をつくるにおいて、常にある思いがある。それは「私たちは何もできない」。出会う人のそれぞれの営みや行為に対しては。そしてその出会いに対しても。

できることは、行為を引き出し得る場をつくること。ひとびとが自主的、自発的に動き、出会いに向けて自走していけるような場をるくつこと。それだけだ。

ビジネスモデルに少し触れると、マッチングの場合には、出会ったことの成果に対してお金をもらう。手数料という形で。ただ最近の出会い系のカップリングなどは、出会いを促進するシステム料にお金を払う形が増えている。

私たちがやっているSMOUTも後者だ。マッチングでお金はとらない。なぜなら、暮らしは多様でステップもさまざま。段階的でどこかで止まることもあれば、かなりスローに進むこともある。もしもマッチング(移住)のビジネスモデルにしたら、何がなんでも移住させよう、早く移住させよう、との意志が運営者側に働くだろう。それはこの移住と暮らしの領域において、多様性を生み出したい私たちにとって本望ではない。

人々が移住や暮らしをつくり出したり考えたりする事に対して自走してくれる仕組みをつくって、それが意義あるものになっていたなら、私たちが継続するために、みんながお金を払ってくれるぐらいがちょうどいい。

繋げることに徹すること。繋がるために双方が関わり合い、成長していく場をつくること。そんな場づくりをしたいと思う。

というわけで最近の目下の興味は、移住。

そして次は日本と、グローバルな世界を繋ぐことに関心を持ち始めている。


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