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友達以上恋人未満が心地いい

私の恋はいつも臆病でつまらないものだった。

本当の恋を知るはずもなく、スキ…と顔を赤らめるだけの絵に描いたような恋しか知らない子供。スキを確認し合えたら、もうそれだけで十分だった。
女の子は早熟だというが、私はそうではなかった。友達以上恋人未満という位置が心地よかった。でも、本当の恋はそれでいいはずがない。
トコトンの所で、どうしたってどっちつかずの言動になる。
そのせいで深く傷つけた人がふたりいる。
それに気づくのは自分が本当に人を好きになってからである。かつてのふたりと同じ目で、好きな人を見つめる自分に気づくのだ。
こんなに苦しかったのか。
一緒にいて楽しくて、ずっとこのまま時間が続いていけばいいって思ってた。会えなくなることは本意でなかった。なぜ、恋人にならなくちゃ一緒にいられないのか?って思ってた。あの時、一緒にいたいなら恋人になってもいいじゃんと、ひょいッと友達の壁を越えていたら、ふたりは傷つかずに済んだし、私も幸せだったかもしれない。

私のモテキは小学校と中学校で終わった。恋を知らない時に終わってしまったのだ。一番ピチピチの頃の恋の思い出は、苦いモノばかり。
自分が恋した人は親友と恋人になった。
自分が恋した人は許婚のいる人だった。
自分が恋した人はフラれた彼女が忘れられずに酔いつぶれる人だった。
自分が恋した人は親友に片思いしていた。
自分が恋した人は…。
いつもフラれる前にフラれていた。
これは、昔あのふたりを傷つけたことの禊だとさえ感じた。
だから、恋をすることを辞めて自分がやるべきことに熱中した。幸い私が熱中したのは作品作りだった。存分に言葉にできない思いをぶちまけた。…恐ろしい。当時の私の作品作りは心のリハビリだったのかもしれない。そんな風に今思う。

ずいぶん後になって、かつてのふたりにそれぞれ会う日があった。ふたりとも素敵な大人になっていた。思えば、ふたりだって子供だったのだ。どこまで本気だだったかは分からない。お互いのその後の人生とそれぞれのパートナー、家族…。笑いながら何をしたって楽しかった思い出を話すとき、それぞれの道に分かれたのは、お互い運命の人ではなかったのだと確信できた。
確かに少し寂しいけど、大きく息を吸って何度も頷く顔はほころんだ。
傷つき傷つけてもなお、時を経て、同じ時、同じ思い出を共有できる友がいることが嬉しい。

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