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お弁当と言えばウチはアレ

以前、母のお味噌汁には敵わない…という記事を書いたことがあるが、

実は、お味噌汁だけではない。玉子焼きもおひたしも、胡麻和えも…シンプルなお料理ほど敵わない。唯一、あんたの方が美味しい…と言ってくれるのは、お好み焼きだのカレーだの、誰でも作れそうなそれである。

母のお料理は食卓の献立としては美味しいのだが、お弁当となると実に地味だった。お弁当に関しては子供の私には少し不服だった。今の世のママさんたちは、キャラ弁と言うものに毎朝力を注いでおられるようだが、私の子供の頃はそこまでの可愛いお弁当を広げる子供は少なかったように思う。それでも、キキララのカップやハートや星の楊枝が使われて、可愛らしく仕上がっていたように思う。だが、私のお弁当は地味だった。彩が無いわけではなく、プチトマトやらレタスやら玉子焼きやら…茶色いお弁当ではなかったが、所謂大人のお弁当だったのだ。それが子供の私には物足りなかった。今となってはなんと贅沢な子だ…と思うのだが。
今では運動会のお楽しみ、お弁当タイムは無い…と言う話を同級生ママから聞いたことがある。何らかの事情でお弁当が無い子に配慮してのことだという。私の子供の頃には家族が校庭に御座を広げて、それぞれの家族や友達家族と一緒にお弁当を食べた。大抵の家族の御座の上に広がる大きなお弁当の一つには、から揚げが君臨していたが、家のお弁当にはから揚げがなかった。代わりに毎年変わらず君臨するのはお肉の佃煮である。
運動会の日の母のお弁当はいつも決まっていた。同じ品目。おにぎりは二種類。鮭の身をほぐし混ぜたおにぎりと梅のおにぎり。それに、出汁の利いた玉子焼きとほうれん草の胡麻和え、そしてお肉と生姜の佃煮の3品である。定番中の定番で、地味なこの品目が毎年変わらないのである。
だが。だがである。コックリと甘辛いお肉の佃煮とおにぎりがベストマッチで、時々口にする玉子焼きの塩気がまたおにぎりを進め、それが梅おにぎりならキュッと酸っぱいのがまたアクセントになってまた一口。まだ行ってなかったとほうれん草の胡麻和えを頂けば、ジューシーな香ばしい甘みが口いっぱいに広がって、鮭おにぎりをもう一つ…と順繰り順繰りにもう無くなるまで止まらないのだ。
普段のお弁当には甘い玉子焼きなのに、運動会の日は出汁の玉子焼きなのも憎い。ほうれん草の胡麻和えのジューシーさは見事。そしてお肉の佃煮は兎に角最高。
お肉の佃煮を自分でも作るが母の作るもののようにコクが出ない。何度か挑戦するがちょっと違う。悔しいかなやはり聞いた方がいいと聞けば、
「砂糖はあんたが思うより多めかな。それと思ってるより煮込むの。」
なんとほんわかした答えだろうか。いつもこれなのだ。
「お酒をドドドド~。みりんをチョロッと。醤油をチョビッ。」
何なんだその擬音語は!数字はないのか?と毎回突っ込みたくなるけれど、こうなのだ。そう文句を言う私とて、何度かはレシピを見るけれど、いつしか母と同じように手加減で料理してしまっているのだから、よの主婦なんてものはそんなものかもしれない。
何はともあれ、コツを念頭に再び挑戦して、近いモノにはなった。まだまだ修行が足りないが、少し母の味に近づいた。あの佃煮はモノにしたい。そう常々思っている。
ちょっと涼しくなってきたらお弁当を持って出かけたくなる。デイキャンプでバーベキューやパエリア…なんていうのも楽しいけれど、お弁当を持っておにぎりを頬張のも気持ちがいい。そんな時のあの3品。


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