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障がい者のあなたへ。

あなたと出会ったのは1年半前でしたね。

僕より10コほど上のあなたは全く僕を無視していましたね。

障がい者のあなたに会ったときは、とても偏見の目でみていました。

なぜって?そりゃ、障がい者の方に接したことなかったから、言葉も意思も通じないと思ってましたからね。

僕の母親にあなたのトイレ介助を頼まれた時は、酷く恨んだものです。

そんな気持ちを察してか、あなたは初めてのトイレ介助の時に、怒って泣き喚きましたよね。

「せっかく、手伝いにきて泣かれるなんて気分悪い。」なんて思ってしまいましたよ。

でもね、今ならわかりますよ。僕は偏見の目で見てたからなんですよね?

あなたも知らない僕のこと、怖かったんですものね。

あなたは、吃音症のせいか何を言ってるのかさっぱりわからず困りました。

でもね、途中で気がつきました。僕は、やっぱりあなたの話したいことを理解しようとしてなかったからなんだということを。

それからは、トイレ中のあなたの顔をじっと見るようにしていました。

でも、あなたは目をそむける。

じっと見つめる。

そんな攻防を繰り返しました。

今考えると、トイレ中に顔をじっと見られるのは恥ずかしかったんですよね笑

それは本当ごめんなさい

だんだんと慣れてくれたのか、ワガママをいうようになりましたよね。困った人だと思っていましたよ。

トイレ中にジュースを飲みたいなんて本当に困った人です。

でも、大好きなオレンジジュースを渡すとゴクゴクと飲み干して、「おいしいな~」と嬉しそうな顔されてましたよね。

さすがにパンちょうだいと言った時は、「おしっこ終ってお部屋で食べましょうね。」とお断りしました。

やっぱりね、ご飯食べる部屋とトイレはハッキリと区別しないとダメだと思ってたんですよ。ごめんなさいね。そこだけは曲げませんでしたよ。

でも、あなたはとても頭が良くてすぐに受け入れてくれましたよね。ありがとうございます。

後、とても困ったのは山本リンダさんのカセットテープ。

あなたは、とても山本リンダさんが大好きで持っているリンダさんの飽きると「新しいテープちょうだい」って毎回言ってましたね笑

リンダさんはレコードの時代の人だから、CDも少なく見つけても曲が同じで困り果てましたよ。

でも、なんとか探してカセットを作ると「あ~ 嬉しい」と満面の笑みで笑ってくれましたよね。苦労した甲斐がありましたよ。

あなたが、新しいテープを欲しがって催促をすると、サプライズ好きの僕はポケットやジャンバーの袖に隠して、あなたの手を取って「ここになんかありますよ?」というとガサゴソと探しだし、とても大喜びしてくれたのをよく思い出します。

最後には、ポケットが膨らんでいると自分から手を出して探しだしてしまうようになったあなたは困った人でしたけど笑

せっかく作ったテープなのに、昼間来るトイレ介助のヘルパーさんが「あら、新しいテープ。かけようか?」と聞いても、「カズさんにもらった」とはしゃぎ絶対に渡さなかったと聞きました。

そんなこと聞いたら、苦労して探してでもカセット何本も作ってしまうじゃないですか。本当に困った人です。

最近、よく「おとうさんとおねえさんとカズさんと車のっていこな~」とドライブに行く話をしてましたよね。

「歩けるようになったら行きましょうね」というと嬉しそうにされてました。

いつか行けるように前のようにすこしでも歩いてくれると嬉しいなと思っていました。

ここ数ヶ月ライターさんのお仕事を家でやってるんですよ。あなたのトイレ介助のために。

すぐにトイレ介助に行けるように、家で出来る仕事を探しましたよ。でも、あなたは困った人で、書き疲れて寝た30分や1時間くらいすると、「おしっこ~」と言って僕を起こしますよね。本当に困った人です。

でも、そんな困った人だったのに突然静かに逝ってしまいましたよね。

母から「死んでしまったかも知れない」と泣き声の電話で飛んでいきましたが、もう冷たくなっていましたね。

あまりにも突然すぎて、悲しい感情も涙もでませんよ。本当に困った人です。

前の日に、あなたのお父さんを救急車で搬送し、家まで連れて帰ってきた時に母からトイレ介助と言われた時は疲れ果てて怒ってしまいました。

でも、あなたは風邪の時と同じでグッタリとされてたけどしっかりとしてました。

臨時で呼んだヘルパーさんに、母が「これご迷惑かけたから」と謝礼の3千円を渡そうとすると、ぐったりしてるのにその内の2千円を取り僕にくれようと、お金を差し出してくれましたよね。いたずらっ子の笑みをこぼしながら。

あのトイレ介助が最後になるとは思っていませんでした。

本当に昨日、突然に逝ってしまい、困惑してますよ。最後まで困った人です。

でもね、障がい者って怖い、なに考えてるかわからないって偏見を取り払ってくれたのは、あなたです。感謝してますよ。たくさん優しい気持ちや、かわいい笑顔をいただきました。

いつもね、ほっぺたをね、指でさすってあげると目をパチパチさせて、笑ってましたよね。「あ~楽しい」って。

だからほっぺを指でさすってみたんですけどね。

でもね、もう笑ってくれませんでしたね。ちょっと寂しかったですよ。本当に最後まで困った人です。

自分より10コも年下の僕を信頼してくれてありがとうございました。

ひぃちゃん、向こうではお母さんに甘えるんですよ。

そして、みんなでドライブいこうね。









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