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TPPで著作権保護期間が死後70年になったらどうなる?

前回のエッセイで取り上げたTPPによる著作権保護期間延長問題。
もし仮に死後70年に延長が決まった場合、どういうことが起こるのだろうか。
現行著作権法だと、保護期間が作者の死後50年なので、仮に1965年に亡くなった作曲家の作品は2015年12月31日をもって著作権保護期間が終了し、2016年1月1日からパブリックドメインとなる(ざっくり言うと自由に使える)。
これが死後70年になるとこの作曲家の作品がパブリックドメインとなるのは2036年1月1日から、ということになる。

現在、すでにアメリカなど欧米主要国を中心に死後70年としている国も多い。
これにより、作曲家の本国ではまだ保護期間中なのに、日本ではパブリックドメインになっているという状況が発生している。
例えば有名な曲としては、Jerome Kern(1945年11月11日没)作曲の「Smoke Gets in Your Eyes(煙が目にしみる)」という曲がある。


この曲がアメリカでパブリックドメインとなるのは2016年1月1日だが、日本ではすでにパブリックドメインとなっている。(パブリックドメインとなっているのは曲だけ。歌詞については現在も保護期間中。)
日本も死後70年というのことになれば、こういうややこしい状況は避けられることになる。

では、仮に改正法が施行されるのが2016年1月1日からとなったとしよう。
その場合、1965年に亡くなった作曲家の作品はどうなるのだろう?
死後50年の場合、前述のようにこの作曲家の作品は2015年12月31日で保護期間が終了するのだが、この作曲家の作品はパブリックドメインとなるのか、それとも継続して死後70年の改正法に従うのか。
実は似たような状況が以前にあった。
2004年1月1日から施行された映画の著作物の保護期間延長(公表後50年から70年への変更)の解釈に関しての判例がある。
「ローマの休日事件」「シェーン事件」と言われるものがそれだ。
この時は2003年12月31日をもって保護期間が終了していると判断され、改正法による延長の恩恵は受けられないとされた。
仮に今回改正が行われるとして、同じような状況になるのだろうか。

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