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芸人「涼風」に出会ってしまった

「涼風」というお笑いコンビをご存じだろうか。

大阪の劇場を中心に活動するフリーの男女コンビで、主には漫才、単独ライブ等ではコントや演劇に近いネタも行っているようだ。
なぜ”行っているようだ”と表現するのかというと、かくいう私がこのコンビに興味を持ったのが、つい最近のことだからである。

以前からSNSの情報などで、大阪に涼風というコンビがいること、ふたりの風貌、女性の芸名が「2000000000000京(にちょうけい)」という一目みたら忘れられないインパクトを有していること等はぼんやりと認知しており、気になるコンビではあったのだが、東京で暮らす身ではなかなかネタを見る機会までは得られずにいた。

それがつい先日、別の芸人が目当てで東京のお笑いライブを訪れた際、そこに出演していた涼風に、"出会ってしまった"。

その日をもって自分の中ので涼風は”なんだか気になる芸人”から”その動向を追いたいイチオシ芸人”に変わったのだ。

YouTubeにアップされるネタを何度も繰り返して観たり、単独ライブや出演ライブの配信チケットを購入したりと、脳みその領域のかなりの部分を涼風に充てるようになってしまった。
簡単には大阪の劇場に足を運ぶことができない距離に住んでいることが悔やまれる日々だ。

さて、ここからは最近涼風を知ってどハマりしてしまったにわかファンによる語りとなる。
お笑いのネタのどこが好きだとか、そういう類の所謂キショな文章になっていくこととなり、ご本人や古くからの涼風ファンからしたら「いや、それは違いますけど?」となる可能性も大いにある。
が、語らずにはいられないんだからしょうがない。という気持ちで書いてまいりますので、苦手な方はご注意を。





さて、涼風のどこが好きかと問われたら、これはもう完全に「ネタのテンポと構成」だろう。

テンポの話でいえば、こと漫才というジャンルにおいてはM-1グランプリをはじめとする賞レースの影響か、長らく”つかみまでの早さ”や”ボケ数”の重視が本流であるように思う。
涼風の漫才は、そういった流れとは真逆の、たっっぷりと間をとった掛け合いが魅力だ。

掛け合いに間をとるということは、単純にネタ時間中の「笑いどころ」の数が減るということであり、つまり「観客が笑っていない時間」が多くなるということだ。
それだけを考えれば、お笑いとしてはボケ数でまくし立てるスピード感のある漫才に引けをとるようにも思えるが、そうではない。
涼風の漫才構成には、ゆっくりとしたテンポで、しっかりと間をとりながら、それでいてちゃんと笑える構成力がある。

漫才冒頭のやりとりは、2000000000000京さん(以下「にちょうさん」)の日常の悩みや疑問から派生する哲学的かつ文学的で、「ん?何かがおかしい気はするけど、これは振りなのか?それともボケ?」となるようなものから始まることが多い。また、にちょうさんの淡々とした中にも抑揚のある話し方が絶妙で、なんだかわからないけど明らかに変なことを言っているようにも、ものすごく頭のいいことを言っているようにも聞こえてしまう。
ここで「ん?」と感じてしまったら、すでに涼風の漫才に心をもっていかれ始めているも同然だ。


これに対して相方の松尾さんは、即座に問いただしたり否定のツッコミを入れることなく、先述のようにじっっくりと間をとって観客を泳がせる。この時間で観客は、にちょうさんの発言が正しいのか、変なのか。変だとすればどこがおかしいのか。そして松尾さんがこのあとどんな反応をするのかを考えることになる。
一般的な漫才からすると、ちょっと長すぎるんじゃないかとも思えるこの「思考の時間」を経ることによって、その後に満を持してくりだされる松尾さんのツッコミが、大きな笑いを生み出すのだ。

この、観客側の「思考の時間」と、それに対する「答え合わせ」であるツッコミに、カタルシス的気持ちよさがあり、ここから一気に畳みかけられる涼風ワールドに引き込まれていくことになる。

松尾さんは、観客が思考し、予想したものを巧みなワードセンスのツッコミで見事に裏切ってくれるし、話題の本質とは全く関係のない、重箱の隅を突くような意外な視点で思わぬ笑いを提供してくれる。時には、あきらかに難解で変なはずのにちょうさんの発言に、「それは、そうですよねぇ」と同意することで、観る側に「えっ!?変なのはこっち(観客側)のほうなの!?」となる裏切りがくることだってある。

まず「思考と予想」の時間、そこから「答え合わせ」と「裏切り」がくる3段構成が、おふたりの独特の雰囲気と、会話のゆったりした間に絶妙にマッチし、唯一無二の「涼風」という漫才を最高に魅力的で面白いものにしている。



繰り返しになるが、これは涼風を最近知ったばかりのにわかファンのイタい語りにすぎない。
好きな芸人のネタの分析や解説みたいなことをやってしまうのを、よろしく思わない方も多いだろう。
涼風の魅力は、私がこの短期間で観たいくつかのネタだけでは語りつくせないだろうし、上記のパターンに当てはまらないネタも多数ある。

だが、裏を返せば、私はこれからももっともっと涼風の魅力を知ることができるということだ。引き続き涼風の動向には注目と応援をしたいし、関西に行った際には劇場に足を運ぼうと思う。

最後に、お二人のYouTubeチャンネルにアップされているネタ動画をいくつか紹介して終わることとする。



この文章が誰かに引っかかってくれると嬉しいなと思います。

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