はじめてのレコード
引っ越しをしたらぜったいにやろうと思っていたことがひとつありました。それがレコードで音楽を聴くことです。
引っ越し前の断捨離で、小学生のころからじぶんで買ってきた500枚以上のCDのほとんどを手放しました。暮らしを小さくしなければいけなかったので、手放すしか選択肢がありませんでした。
CDを持たなくてもストリーミングであらゆる音楽を聴くことができるいまの時代。わたしにとってCDは宝物だったけど、それを手放してもほとんどはストリーミングで聴くことができる。そして好きなものはその活動を応援したい。それでサブスクの有料会員になって音楽を聴く、という方法を選びました。手元に残したのはストリーミングでも聴けないCDたちが中心です。
ストリーミングで音楽を聴くようになって、CDを買っていた頃よりも圧倒的にいろんなミュージシャンの曲を聴くようになりました。やっぱりCDを買って聴くにはお金がかかる(ミュージシャンに何も還元されないレンタルCDでは活動の応援ができないと思い、レンタルで聴くという選択をしてきませんでした)から、いつかいつか…と思ってなかなか聴けなかった曲がたくさんあったんです。音もCDを聴くのと変わらない。ハイレゾレベルの音質で楽しめます。
ただ、CDを手放す決心をしたとき、CDやストリーミングでは叶わない音で音楽を聴いてみたいとも思いました。それがレコードで聴くことでした。とはいってもCDを手放すしかなかったわたしなので、たくさんのレコードを持つことはできないのです。なのでこれは!と思うアルバムだけを厳選しなければいけません。ストリーミングでいろんな曲を聴きながらなにをレコードで聴こうかと考える楽しみもできました。
今年の2月に引っ越しをしてから、じわじわとレコードで聴きたい音楽を溜めまくっていただけだったんですが、先日、渋谷に行く用事があり、そのついでにふらっとレコードショップに入ってみたんです。
すでにはじめて持つレコードはこれ、と決めていたLPが3枚ありましたが…まさかぜんぶ見つけられるとは。どれも日本のアルバムだけど、でも一回お店に行っただけでぜんぶ見つけられるとは思っていませんでした。
はじめてのレコードの中でもぜったい買いたかった一枚はこちら。
夏の終わり頃から久保田麻琴と夕焼け楽団に恋してます。久保田麻琴さんを知ったのは20年以上前に観たある劇団のお芝居だったんですが、この夏、ストリーミングで聴けるのに気づきました。調べてみたら2021年に5枚のアルバムがレコードでもリイシューされていたんです。どのアルバムもすばらしいんですが、はじめて知った曲がこのSUNSET GANGに収録されていたのと、アルバムの説明に「久保田麻琴のセカンドにして、実質的な夕焼け楽団としてのファースト・アルバム」とあったので、ぜったいにこのレコードだと決めてました。
そしてさらに中古レコードの中にわたし的お宝レコードを発見。Cute Beat Club Bandの「円高差益還元ライブ」という1987年のLPです。Cute Beat Club Bandはチェッカーズの別名義のバンドです。このアルバムはロンドンでCBCBとしてライブをしたときのライブ録音のもので、わたしが断捨離で泣く泣く手放したCDの1枚でもありました。こんどはレコードで出会えるとは…しかも330円。うれしい再会に購入を即決しました。
レコードをお店で探すってこんなに楽しいんですね。オンラインでかんたんに買うこともできるけど、たくさんのレコードをパタパタと一枚ずつ見ていくって、いいな。
さあ、ふらっときまぐれで入ったレコードショップで4枚もLPを買ってしまいました。でもまだプレーヤーを持っていません。これはもう買うしかないやつです。アマゾンのお気に入りにいくつか入れていたプレーヤーの中から、手頃でノスタルジックなアナバスのポータブルレコードプレーヤーをえいっと購入しました。
こうしてレコードを聴く準備がととのいました。ドキドキしながら針を落とします。
不思議と臨場感。
そして音の厚みと温もり。
あきらかに豊かな音楽体験。
聴きながらドキドキが増しました。
レコードプレーヤー内臓のスピーカーにそんなに期待してなかったんですが、いやいや、これはじゅうぶん満足できる音です(すごいスペックのスピーカーで聴いたらどんなことになっちゃうんだろうという気持ちもうまれたけど)。
レコードに針を落としていてふと思い出したことが。じぶんでレコードを持つのははじめてだけど、レコードに針を落とすのはなんどもやったことがある…そういえば小学5・6年生のときに放送委員してて、カセットテープも扱ってたけど、レコードもいっぱいかけてたんでした。忘れてました、いまのいままで。給食中の放送とか、掃除中にかける音楽とか、運動会とか。あの時代はまだレコードだった。
レコードを聴きながらジャケットをながめ、アルバムタイトルやその他さまざまな文章のフォントを愛で、歌詞に目を通し、作詞作曲編曲者をチェックして、パッケージをまるごと楽しみます。そうしているとA面がおわり、レコードをひっくり返してB面を再生。このひと手間がいかにもアナログだなぁとかんじます。
念願のレコードで音楽を聴く生活がはじまり、家でゆっくりすごす休日に新たな楽しみができました。いきなりLP4枚も買ってしまったので、まずはこの4枚をじっくり楽しみたい。そして次はどんなレコードを買おうかな。久保田さんは他の4枚もぜんぶ買おう。でもまたふらっとレコードショップに立ち寄ってたまたま見つけたレコードを買うのも楽しいな、とも思うのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?