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オリンピック開会式が壮大なメタ的コントで面白かった件

不覚にも大笑いしてしまった。

なんだかんだいっても本心では、2013年にオリンピック東京招致が決まってからというもの開会式には期待していた。でもね、もうズタズタになってしまったじゃないか。だからもうあきらめてたよ。それが蓋を開けてみると、あまりにも面白い開会式で笑いが止まらなかった。これは壮大なメタ的コントだ。おそらく公式には否定されるだろうが、間違いなく小林賢太郎の演出なのだろう。小林賢太郎という人は実はとんでもない天才なのかもしれないと思った。

正直、各々の内容のレベル自体は、あまりにも普通で拍子抜けというレベルで、とりあえず無難にこなしましたという感じだった(聖火台演出も普通だったよね)。本来なら、開会式として世界に披露するレベルではないと思ったし、日本はその程度の国なのかと残念な悲しい思いもあった。でも、間違いなくメタ的なコントとしては大傑作だった。ある意味壮大な滑り芸だった。そして開会式が終わった後に、全てが脱力した後味の悪い余韻が訪れるあたりも含めてコントとして完璧といってよい。

2016年のリオ五輪の開会式を見てほしい。

https://olympics.com/ja/video/rio-2016-opening-ceremony

非常に混沌としている。整理されていない印象を受ける。粗削りなままで進めた感じである。ただエネルギーを強く感じる。

一方、今回の東京五輪の開会式の方は整理されているが、エネルギーを感じない。日本の国力が結集されている感じは微塵も感じなかった。

でもいいんだ。今回の開会式、間違いなく、面白かったから。

エアバイクをこぐ演出や赤い衣装を着た人間が踊る謎の演出を見たときは、やっぱり僕はMIKIKO原案のようなAKIRAの赤いバイクを乗り回す派手な演出を見たかったと思ったよ。でもしばらく見ているうちに、ずいぶんと演劇的でコント的だなあと思えて印象が変わってきた。そこにね、NHKのアナウンサーが真面目に説明をかぶせて、さらに「そうですねえ」「精密な技術を感じますね」などと真剣に相槌打っているものだから、思わず笑ってしまった。意図したものなのか、偶然なのかはわからないが、これはメタ的なシュールコントなんだと思った。その後も、例えばタップダンス自体は素晴らしいのかもしれないけど、演出の流れ的にちぐはぐな印象があって、そこも滑り芸として機能していて、小林賢太郎はとんでもない天才としか思えなかった。ただ、ミュンヘンオリンピックでパレスチナ武装組織によるテロでイスラエル選手団が亡くなった件を演出(森山未來のダンス)に盛り込んでくるあたり、小林賢太郎が解任されたことがあまりにも皮肉すぎた。そこも含めてメタ的なコントとしか解釈できなかった。

そして最後の極めつけは、橋本聖子大臣による「ようこそ東京へ」。えっ、無観客なんですけど。シュールすぎて笑うしかなかった。今回の開会式は、ある意味とんでもないものを見せられた。閉会式が楽しみだ。

(今回のメタ的コントの中で唯一異質だったのが、上原ひろみが出ていたところだ。歌舞伎と調和していたかというと全く調和していないし、彼女は本気でピアノを弾いていたので、滑り芸演出にはならず、演出としては失敗だった。あそこだけは、メタ的コントから離れて現実の世界だった。唯一世界に向けて恥ずかしくないシーンだったと思う。北京五輪の時にランランが出ていたのを見ていたから、もしかしたら誰かピアノを弾くかもと思っていたが、良い人選だと思った)

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