読書感想文「ランチ酒 おかわり日和」原田ひ香 (著)

 その後が気になっていた話しを読むことができた。娘と別れて暮らす見守り屋の祥子が主人公の続編である。時間というものは,人を一つの状態に留め置かない。祥子と関わる顧客らとの関係が,それまでの「見守る」ことから,はみ出してしまう。それは彼女と,娘や元夫との関係も同様で,彼らの今を尊重しようと思うばかりに,自分の気持ちを押しとどめていたものが,アウトプットを始める。そうして自分と娘,自分と顧客たちの関係が随分と進展する。
 時間で区切られた仕事の終わりに,厄除けのように飲んでいた酒が,単に時間の切り売りではなく,課題解決をするようになることで,この先,酒の意味が変わっていくのではないだろうか。それは,見守り屋業との決別も含む選択でもあり,この見守り屋業によって培われた濃密な人間関係が祥子の人生を確実に動かすだろう。
 次巻は,踏み出してしまったが故に,いくつもの決断がやってくる。その瞬間を読める日を楽しみに待っている。


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