読書感想文「戦国の教科書」天野 純希 (著), 今村 翔吾 (著), 木下 昌輝 (著), 澤田 瞳子 (著), その他

 最新の歴史学の研究成果を踏まえ,歴史小説をアップデートさせようとする意欲的な試みである。6人の今,注目されるべき小説家が,下克上・軍師,合戦の作法,海賊,戦国大名と家臣,宗教・文化,武将の死に様のテーマに挑み,小説の面白さが解説・ブックガイドに直結する楽しみを与えてくれる良本だ。
 時代小説は,これまで江戸時代の軍記物や講談,浪曲などの影響が強く,歴史学上の新発見や新たな定説は置き去りにされることが多かったが,これからは,流れが変わるのではと思わせる。実はそんなにセンセーショナルでも,エモーショナルでもなく,今日の次は明日というように,そんなにガラッと世の中が変わったのではなく,地続きのように世の中が推移したことを表す資料が出てきているし,そうした地味な「史実」でも書ける小説家たちの登場は,とても期待できる。
 研究とエンタメの良き相互作用を生み出されるキッカケを感じている。


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