読書感想文「稽古の思想」西平 直 (著)

 お稽古について,正面から答えを出していこうとする著者の企図である。「稽古はそのつど本番である」。あぁ,これを言ってくれてスッキリしましたよ。対比される練習とは,「本舞台(試合)を目指した事前準備である」。稽古が重たいのは,本番だから。稽古とは,試験会場に向かうことだ,と思うことにした私は間違ってなかった。
 「固くならないで」,「力が入りすぎている」と言われることについては,「力を抜く」とは,まず一度「力を入れ」,その後で「力を抜く」という動作である,と言われる。はーっ,そーだったのかー!そーだよねー?!それじゃなきゃ,力を抜いたことが伝わんないもんね。「あらかじめ力が入っていないと「力を抜く」動きは始まらない。最初から「力を抜く」ことはできないのである」。「力を抜く」アクションを見せるために,「ある」と「ない」の差をどう見せるか?なのだ。
 稽古とは,修行とは,師とは,身体とは,「見えるもの-見えないもの」とは。こつん,こつんとバットにボールを当てるように,なかなか,言葉にして教えてくれないことを,知恵として伝えてくれる貴重な一冊。「稽古ってやつは?!」と思ったことのある方は,必読である。


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