読書感想文「今夜、笑いの数を数えましょう」いとう せいこう (著)

 私の7つ年上のいとうせいこうが「笑い」を体系だてて,本人が納得したいがために対談をし続けた結果をまとめた一冊だ。80年代,90年代,00年代,ステージとテレビでお笑いが増加し,やがてお笑いがメインストリームになっていく中で,いとうは考える,「なんで笑うんだ」「何が面白いんだ」。倉本美津留は関西の視点,ケラは演劇から,バカリズムは,遅れてきたテレビ・ウォッチャー兼専門学校出身者として,ほか枡野浩一やきたろうも登場するが,やはり,読者としては,サブカル講義でお馴染み宮沢章夫だろう。
 果たして,いとうは胸がすくような答えを得たか。狂気とセンス。結局,語られたのは,持って生まれたものだった。本書は,てれびのスキマこと戸部田誠やエムカクらのような個人への執着やテレビ史を書き付けるような執念は薄い。では,なぜ今,「お笑い」だったのだろうか。テレビとステージの笑いに関わる日本語そのものが,変わる最中にあるため,書き残して置かずにいられなかったからなのかもしれない。


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