読書感想文「八本目の槍」今村 翔吾 (著)

 世に響いた「賤が岳の七本槍」それぞれを描く短編集。同級生,同期入社組の関係である。いつまでも,当時の話しで盛り上がれる互いの関係を持ちながらも,三成の死をそれぞれが解きほぐす。七本槍と三成と経済の組み合わせを一冊の本とした著者のアイディア勝ちである。
 財政と金融の実務官僚として,その仕組みを握ってしまった三成。兵站の供給だけでなく,戦争を止めるのは財政であると,その本質を見抜ぬく三成のヴィジョンが明かされるが,モダンすぎる考えを本人に喋らせることで,読者に三成を近づける著書の策略だ。
 飛び抜けた才覚を持つ同期が,先に会社を去った話しとして読んでもいいだろう。同様に出世した者,大して伸びなかった者,トップの後継者のサポート役になった者,ライバル社へ移った者,みんなそれぞれの立場は異なれど,才覚を持ちながら,先に去った同期のアイディアが,その後の業界を10年揺さぶり続ける。そんな「会社もの」としても楽しめる一冊だ。


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