見出し画像

時給5,682円?オーストラリアの1stAC指数は+4.93

世界の撮影業界の“ギャラ”はいくら?

ビッグマック指数を応用し、撮影助手のギャラ単価から算出される「1stAC指数」をもとに、世界各国の撮影業界の仕組みを分解していく。

第2回は、オーストラリアのメディア、エンタメ業界、アート業界を束ねる労働組合「MEAA(Media Entertainment & Arts Alliance)」を起点に、オーストラリアの撮影業界を見ていきます。

MEAAとは?

MEAA は、メディア、エンタメ、スポーツ、アート業界を網羅するオーストラリアの“労働組合”および専門機関である。

2.4万人の会員には、テレビ、ラジオ、演劇、映画、娯楽施設、レクリエーション施設、ジャーナリスト、俳優、ダンサー、スポーツ選手、漫画家、写真家、オーケストラ、オペラ出演者、ならびに広報、広告、出版、ウェブサイト制作など、オーストラリアのエンタメ業界で働くあらゆるスタッフが在籍する。

ACSとは?

世界各国の映画撮影業界には、米国のASC(American Society of Cinematographer)を模した“撮影協会”が存在する。映画のエンドロールでスタッフ名の横に記載されている英語3文字がそれにあたる。

オーストラリアの場合は「ACS(Australian Cinematographers Society)」という団体。シンプルな造りだがウェブサイトもしっかりと運用されており、映画撮影業界自体のITリテラシーの高さが伺える。料金規定や雇用保険などに関する記載はなく、労働組合的な機能は MEAA が果たしていると思われる。

オーストラリア経済の基本情報

まずはオーストラリア経済に関する、数字を並べてみる。

2018年度、オーストラリアの最低時給は 18.93 AUD(1,434円)、テレビ・ネット配信をあわせた動画の広告市場は $5,764M(6,250億円)、国産映画の興行収入は$38.95M(42.2億円)。

2018年度、日本の最低時給は985円(東京都)、動画の広告市場は2.1兆円、国産映画の興行収入は$1145.32M(1,236億円)。

参考までに、2019年6月時点の「世界時価総額トップ100」のオーストラリア企業は、3社ある。鉱業『BHPビリトン』、鉱業『リオ・ティント』、金融『オーストラリア・コモンウェルス銀行』と、資源・鉱業系が並ぶ。

オーストラリアの撮影業界の料金表

ACSMEAA が定めるオーストラリアの撮影スタッフの料金表。料金体系は、撮影の分野別に 12段階 のプランが用意されている。記載の料金は、1週間単位(Weekly)と1日単位(Daily)の2種類がある。

50Hr Wk = 1週間(50時間)のウィークリー単価
10Hr Day = 1日(10時間)のデイ単価

撮影監督の記載がない理由としては、①多くの場合その料金が「交渉による(Negotiatable)」ものである点、②海外製作(Offshore)による撮影の場合、撮影監督は国外から参加することが多い、などが考えられる。

<条件:海外の長編映画> 時給
カメラオペレーター・・・A$90.90(6,886円)
DIT・・・A$45.45(3,443円)
撮影助手 1st AC・・・A$60(4,545円)
撮影助手 2nd AC・・・A$40(3,030円)
見習い Camera PA・・・A$28.18(2,135円)

撮影期間が短い「商業広告(Comercial Advertising)」の場合は、さらに単価が上がる。

<条件:商業広告 TVCM・WEB CM> 時給
1DAY = 10時間

カメラオペレーター・・・A$120(9,091円)
DIT・・・A$80(6,061円)
撮影助手 1st AC・・・A$90(6,818円)
撮影助手 2nd AC・・・A$70(5,303円)
見習い Camera PA・・・A$50(3,788円)
※ 商業的なものは0.5日計算の適応はなし

商業広告の撮影前に必ず実施する“機材チェック”に関しては 、1DAY料金が適応される。

<商業的な撮影の機材チェック> 時給
1DAY = 8時間

撮影助手 1st AC・・・A$93.75(7,102円)
撮影助手 2nd AC・・・A$81.25(6,155円)

支払いに関する規約

日本の“源泉徴収”に相当するような 10-12% の追加料金が、別途、料金に加算されるとしている。オーストラリアでは、年金と保険(Superannuation and insurance)という表現となる。

note:
camera department personnel who are PTY Ltd companies may charge an additional surcharge of approximately 10-12% to cover super and insurances, on top of the minimums listed below.
Personnel who wish to be paid as employees MUST be paid 9.5% super contribution on top of the rates listed here.

また毎年の料金改定に関してのアナウンスはあるが、実際あまり頻繁には更新されていないようだ。

Rates to be reviewed and updated annually.

オーストラリア撮影業界の1stAC指数は"+4.93"

ビックマック指数のビックマックと同様に、映画・広告業界の“撮影助手(1stAC)”の品質は、世界中どこもあまり変わりがない。

この 1stAC 指数は、業界の“市場規模”に対する“人件費”の比率を算出することで、業界全体の健全性を計るものである。日本との関係値を見るために、基準値(= 1.00)を「2018年度の日本」としている。

計算式は以下の通り。
※ オーストラリア 1stAC の平均賃金をA$75(5,682円)として計算

1stAC指数 = 1stACの時給 ÷ 法定最低賃金 ÷(国産映画の年間興行収入+動画広告の市場規模)÷ 基準値<JPN>

2,800 ÷ 985 ÷(1,236+21,000)≒ 0.0001278 = 基準値<JPN>
5,682 ÷ 1,434 ÷(42.2+6,250)÷ JPN ≒ 4.93

2018年度の数値を入力すると、オーストラリアの 1stAC 指数は "+4.93" 。日本の撮影業界に比べて、オーストラリアの 1stAC が、経済的な見返りを“4.93倍”多く受けていることを意味する。

実際、この料金がどこまで忠実に守られているかは不明だが、オーストラリアの撮影業界には、ウェブ上で公開された料金表+労働規約が存在している。

----------  NEXT  ----------

----------  ARCHIVE  ----------

----------  SOURCE  ----------

----------  UPDATE  ----------

2019.7.15 最低時給額、料金を訂正しました
2019.7.15 ドル計算を USD → AUD に訂正しました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?