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世界の撮影部たちのリアルな雑談 Vol.2

ネット上で交わされる世界の映画・広告業界の撮影スタッフの雑談のまとめ。Reddit は英語圏の「2ちゃんねる」のような掲示板サイトです。今回は、ASC(アメリカ撮影協会)の 1st AC が開設した質問箱に寄せられた質問に対するリプライを見ていきます。

Q.1|どうすれば業界に入れる?

Q.
どうやって業界に入りましたか?
研修生(Camera Trainee)や撮影助手から始めたのでしょうか?
わたしは大学を出て、何本か自主制作を撮り、撮影助手をしていますが、尊敬する撮影監督(DP)からは、まずは研修生から始めるようアドバイスを受けました。

A.
私の場合は少し変わっています。学校卒業後にすぐに2nd ACとして働き始めたのですが、幸運なことに、早い時期に才能ある人々に出会えました。

彼らから多くのスキルを学び、小規模なCMやMVの現場で、自分を1st ACとして起用してくれた、若手の撮影監督と一緒にキャリアを積み上げていきました。

それ以降、さらにスキルを磨きながら、才能ある人々との小規模なプロジェクトに関わり、多くの学びを得ました。最終的には、撮影組合(Union)に所属するカメラオペレーター、撮影監督、2nd AC たちと仕事をするようになり、2年間で3、4本の非組合(Non-Union)の長編映画に参加しました。

当時は、もともと研修生プログラムに応募しようと思っていたんですが、非組合の世界で働き続けることを決心し、ようやく1st ACの仲間に入ることができたのです。それから、定期的に自分を起用してくれていた組合の撮影監督、カメラオペレーターたちと、密接な関係を築き、最終的に組合への加入の推薦をもらった、という感じです。

Q.2|組合に入るために、すべき事は?

Q.
私はバンクーバーの学生で、IATSE 669 に入りたいと思ってるんですが、受かるためには何をすればいいでしょうか?
その組合では、2年に1回だけ“研修プログラム”を実施していて、もしそれを逃すと、さらに2年間をふいにしてしまいます。

A.
出来るだけ多くの仕事、特に組合のメンバーと一緒に働けるプロジェクトに参加してください。常にフレンドリーに、謙虚な姿勢で、決して知ったかぶりをしないことです。

その時点では、まずあなたの態度や行動が重要で、カメラのマニュアルを覚えるのはその後です。組合のメンバーからの推薦は、あなたのチャンスを大きく広げてくれるでしょう。

< REVIEW >
とりわけ北米では、メジャーな劇場公開映画、大規模な撮影に関わるためには、ASCIATSE と言った“撮影組合”(Union)の会員であることが必須条件となる場合が多い、と言われています。

Q.3|1st ACはいくら稼げるのか?

Q.
答えにくいかもしれませんが、年収はいくらですか?
最初の頃は、どれぐらい貰えるのでしょうか?

A.
撮影現場の数や種類にもよりますが、およそ $70,000 - $250,000(2,700万円)ぐらいですね。平均年収はおそらく $100,000(1,077万円)前後だと思います。

長編映画の場合、撮影組合の最低賃金が約 $45.00/h(4,850円)、テレビの場合は約 $42.00/h(4,526円)。典型的な12時間の1DAY料金だと、税込の合計で、およそ $500(53,889円)ぐらいですね。

< REVIEW >
日本では、がんばっても年収 1,000万円+の仕事ですが、アメリカでは、最大で日本の2倍以上の報酬が得られるようです。単価は、ロサンゼルスやニューヨークなど、地域差があると言われています。

Q.4|フォーカス送りの極意とは?

Q.
最も難易度の高いフォーカス送りは何ですか?
また、それをどうこなしてますか?
被写体の位置が予測できず、被写界深度が浅い時などを想像していますが、もしテクニックがあれば教えてください。

A.
最も難易度の高いフォーカス送りは、絞りが開きめの望遠レンズで、カメラが移動している、さらに被写体も移動している時ですね。許容されるミスの幅もかなり少ない。攻略のためのテクニックは、たくさんあります。

そんな最悪のシナリオの中で出来ることは、出たとこ勝負で、距離感を予測し素早く反応する、その自分自身の能力を信じるのみです。また経験豊富なカメラオペレーターや撮影監督は、状況に応じて期待値を調整します。彼らは何が可能で、何が不可能であるかを知っているのです。

ただしプロの環境では、もし私が失敗した場合、それはカメラオペレーターの失敗となり、撮影監督の失敗となり、そして監督の失敗となることを意味します。

自分の上の立場の人間がプロであれば、彼らはあなたを助けるために(画角・美学・時間に妥協することなく)可能なかぎりの策を練ります。すばらしい技術者やアーティストは、自分たちが同じチームの一員であり、リハーサルに時間をかける重要性を知っているのです。

Q.5|ピーキング機能は使う?

Q. フォーカスの確認で “ピーキング機能” は使いますか?

A.
はい。オンボード・モニターまたは EVF(ファインダー)で少しだけピーキングを入れることで、ピントが合っているか?自分もそうですが、カメラオペレーターがそれを確認できるようになります。

ただピーキングを強めすぎると、イメージ全体がシャープに見えてしまう。それとオンボード・モニターによくある“FOCUS ASSIST”機能は、個人的には気が散ってしまいます。

Q.6|どんな道具を使ってるか?

Q. どんな道具を使っているのか興味があります。

A.
最小限の道具しか持ち歩かないですね。ベルトには、三角状のピンクのギャファーテープ(指標のマーク用)を付けた金尺(スケール)、レーザー距離計(DISTO)、マグライト。胸ポケットには、油性マジック(Sharpie)を入れています。

他の道具は、言うと他の部署から出てきます。

Q.7|カメラのメンテナンスに関して

Q. たとえば ALEXA のようなカメラのセンサーは頻繁に清掃しますか?

A.
いい質問ですね!

答えはNOです。センサーの清掃は、繊細で、特別な工具とトレーニングが必要な作業であり、現場で撮影アシスタントがやるべきことではありません。カメラに大きな損害を与えるリスクがあり、ちゃんと資格を持った技術者だけがやるべきものだと思います。

みんなこれに賛成しないのですが、わたしは機材屋の技術者と連絡を取り合えた上で、専用の工具がある状態以外では、絶対にやりません。基本的には、毎朝のブロワー清掃(エアダスターではなく)で問題はなく、特別にセンサーの清掃が必要となることはまず無いはずです。

<REVIEW>
撮影機材、ツールなど、技術面では日本とほぼ同じ状況のようです。

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