見出し画像

夫の一番ながい日 ~あのとき、「父親」になりました~

私の夫は陽気な男で、いつでも「今」を生きている。
禅的な深い意味ではなく、過去にこだわらず、未来をさして気にせず、「いま」を楽しむ選択肢を、もろもろのしがらみや抑制を無視してチョイスすることができるのだ。
態度はいたってチャラっとしている。

具体的にあげると、
めちゃくちゃヒドイ二日酔いに苦しんでも、「もう飲みすぎないぞ!」とはならず、
「楽しくなったら飲みたいだけ飲んじゃう~!アゲ~!」な思考であるし、終電を確認しておいたりもしないので、30歳をすぎても、よく帰宅難民になっている。

また、かつてお金を貸してあげたのに、不誠実に踏み倒してきた相手が、数年ぶりに連絡をしてきたとき、「コイツ、どのツラ下げて…」と思わず、
「う~わ!めっちゃ久しぶりじゃん!飲も飲も!」と笑顔で迎い入れるタイプである。

悪く言うと無計画で反省をいかせず、その場の欲望や空気におもいっきり身をゆだねてしまう、ということなのだが、
よく言えば、過度に未来を悲観・心配したり、過去の憎しみや後悔に囚われてしまわず、「今こうしたほうが楽しいじゃん!いえ~い!」という思考の優先順位が常に一貫しているので、彼の選択は、いつも彼を裏切らない

それは結果として、彼の人生を豊かにしているし、「葛藤」という自分内紛争が起こらないので、情緒という名の「心の治安」も安定している。

そんな夫は明るく楽しい男なのだが、一方でセンシティブな感情を理解したり、繊細な気遣いをすることが不得意であった。

なので、「気持ちのいい人だけど、産後のツラさをわかってくれるのかしら…」と妊娠中は一抹の不安を持っていたのだが、結果として、それは杞憂に終わった。

夫は産後、私にとって、正真正銘の「支え」であった。

しかし、あの天真爛漫な「いまさえ良きゃいいじゃん☆マン」が、献身的な夫に、そしてファッションイクメンなどではなく、「頼りの父親」にまで変貌を遂げる原動力は、ひとつの強烈なエピソードにある。

そう、あの日だ。
あの日、あの時から、夫は「父親」をはじめたのだろう。

ここから先は

4,544字 / 7画像

¥ 100

子育てにおいて大恩あるディズニーに、感謝を伝えるべく課金しまくります。 サポートしてくださったあなたの気持ちは、私と共に鶴となり、ミッキーの元に馳せ参じることでしょう。めでたし。