新たな16のスタートアップ分析指標 | Andreessen Horowitz ( 後半 )

by Anu Hariharan, Frank Chen, and Jeff Jordan    翻訳 玉井和佐
こちらはAndreessen Horowitz社による"16 More Startup Metrics" の翻訳記事(2部構成の後半)です。 前半をご覧になっていない方はまず先にそちらをご覧ください。

#9 Net Promoter Score (NPS)    ネットプロモータースコア

このNPSは、今回のポストに紹介すべきという皆様からの問い合わせが一番多かった指標である。皮肉なことに、この指標は普段私達が自身のビジネスを評価する際によく使う指標の一つでもある。

基本的にNet Promoter Scoreは自分のオファーに対する顧客の満足度とロイヤリティを測るために使われる指標である。この指標は「私達のサービス / プロダクト / 会社 をどの程度友人もしくは知り合いに勧めたいと思うか?」という質問がベースになっている。

NPSを計算するための方法 : あなたの顧客に上記の質問をし、0-10の尺度で答えてもらう。( 10 = 是非勧めたい、0 = 全く勧めたくない )  

① プロモーターのパーセンテージ = 9 or 10 と答えた回答者の数 ÷ 全回答者数

② 批判的な人達のパーセンテージ = 6 以下の数字を答えた回答者数 ÷ 全回答者数

NPS = ①プロモーターのパーセンテージ - ②批判的な人達のパーセンテージ

NPSを報告する上での問題は一部の偏ったクライアントのみから回答サンプルを抽出することである。ここでの偏りとしてよく見られるのは、自分達のサービス / プロダクトをよく使っている人達のみにアンケートをとることである。( 例 : 月に数回以上使ってるユーザーのみを対象としたアンケート ) これではサンプルに偏りができてしまう。

他によく見られるNPSに関する問題はプロモーターのパーセンテージのみを表示するというものや(批判的な人達のパーセンテージを見せない ) あるいは、サンプルの抽出数が小さすぎるにも関わらず、パーセンテージのみを表示しているものがある。そしてただ会社間のNPSのみを比較することは誤解を生みやすくなるため、ユーザーからのコメントもしっかりチェックすることが大切である。同時にNPSをユーザーに評価してもらう際には、そのUIに気をつけるべきである。スマートフォンのスクリーン上に、上から垂直縦方向に10から0、あるいは0から10と表示してしまうと、およそ20ポイントの差が生じるという統計が出ている(ユーザーが質問の意図に十分に注意を払わず先に上から表示された数字を選んでしまうため)。そのため、NPSの評価選択は横に並べる、もしくは画面を分割することをお勧めする。

NPSを評価する際、私たちは幾つかのことに注意する。

1. 言うまでもないが、NPSは数値が高ければ高い程良い。それは顧客満足度を表し、サービスに満足した顧客ほど、時間が経ってもサービスを継続して使用してくれる。他には関連情報として、会社の競合相手の傾向も評価する。

2. 加えて、時間が経つにつれてNPSが上がっているのか下がっているのかをチェックする。これをチェックすることによって、会社の既存ユーザーへの関心だけではなく、時間の経過に伴う新たな価値の変化も把握できる。

#10 Cohort Analysis  コホート分析

コホート分析とは、何かの条件や属性でユーザーをグループに分け、グループごとにどのような行動の変化があるかを一定期間にわたって監視する分析方法である。例えば、あなたのユーザー全員が1月の1週目にサービスに登録したとする。そして彼らの行動を追い続け、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後時点において、何人のユーザーがまだあなたのサービスを利用しているかを測定する。

コホート分析を上手く利用することで、時間の経過に伴いユーザーのエンゲージメントがどのように変化しているかが見えてくる。スタートアップの投資家は特にこの指標の提示をありがたく思う。何故ならこの指標から、実際にどれだけの人があなたのプロダクトを愛用しているのかが把握できるからである。投資対象となるスタートアップのほとんどは収益を生む前のステージであるため、客観的な将来性を判断するための材料は非常に貴重なのである。

ここにコホート分析の具体的な手順を記しておく : 

まず「アプリのダウンロード数」といった虚栄の数値ではなく、「アプリから登録を行い、今もサービスを使用しているユーザーの数」といった実用的な数値基準を設定する。

コホート分析における適切な分析期間を設定する。この設定期間は一日単位で分析するものもあれば、月単位で分析するものもあり、あなたのビジネスモデルによって異なってくる。一般的には、出来て間もない若いビジネスほど短く、成熟したビジネス程長い期間を設ける。

ピリオド 1 - 一定期間(日、週、月単位) において商品の購入や商品の出品、写真のシェアといった収益の先行指標となる行動をとったユーザー数を算出する。

ピリオド 2 - 一週間後もしくは1ヶ月後の時点で、上記の活動を通じてまだサービスにエンゲージしているユーザーの数を算出する。

この手順を繰り返し、時間の経過に伴うグループごとの行動の変化を分析する。

ここにMixpanelを使った週ごとの例を紹介する。この図表では、グループごとのエンゲージメントレベルが週単位で表されている。例えば、2013年10月7日の週に参加した44人のうち、その2.27%は12週間たった後もエンゲージしている。

credit : Mixpanel

私達がコホート分析を通じて把握したい二つの傾向は : 

1. 時間の経過に伴う、グループごとの既存顧客維持率 - ここにはあなたのビジネスがユーザーに繰り返し使ってもらえるサービス基盤を築けているか、時間の経過と共に既存ユーザーがどの程度維持できているかが表れる。

2. 新しいグループが古いグループよりも良い顧客維持率を出せているか - ここからは日々プロダクトがどれだけ改善されているか、時間の経過と共に新たな価値の提案ができているかという部分が把握できる。同時にチームの能力を評価する上でも重要な指標となる。

#11 Registered Users    登録済みのユーザー

コメントを頂いたある方から、この指標が前回のポストから欠けているとのご指摘を頂いた。いくつかのビジネスにおいて、登録済みのユーザー数は、確かにある程度有用な情報を提供してくれる。

しかし、この登録済みのユーザー数は伸びていても、実際にサービスの使用頻度という点で、プロダクト自体が成長していないというケースを私達はよく目にする。さらに登録済みのユーザー数というのは、累積表示にしてしまうことでビジネス自体が縮小していても、チャート自体は右肩上がりに見えてしまう注意すべき指標の一つでもある。

故にほとんどの場合、私達はこの登録済みユーザーよりもアクティブユーザーの指標に注目することを好む。何故ならアクティブユーザーの指標に注目することで、サービスの使用頻度と言った長期的な収益予測に役立つ情報が得られる。アクティブユーザーに関しての詳細も続けて紹介する。

#12 Active Users アクティブユーザー

それではこの「アクティブ」ユーザーとは一体どういう意味なのか。好奇心がそそられるテーマではあるが、残念ながら今のところアクティブユーザーの定義は個々のビジネスモデルによって異なり、明確な一つの定義というのは存在しない。例えばFacebookにおけるアクティブユーザーの定義は次のようになっている。「アクティブ」というのは、何らかのデバイスからログインをしてサイトを訪れたユーザー、もしくは、第三者のサイトで生成されたコンテンツや友人のアクティビティをFacebook上でシェアしたユーザー。

アクティブユーザーを評価する際、重要なことは:

(1)定義を明確なものとすること
(2)プラットフォームにおける「アクティビティ」を正確に特定すること
(3)その定義にブレがないこと

他の企業がアクティブユーザーをどのように定義しているか、いくつか例を紹介する。

ソーシャルサイトにおけるアクティブユーザー

ソーシャル及びモバイルプラットフォームにおけるアクティビティの一般的な指標は MAUs (月ごとのアクティブユーザー)、WAUs (週ごとのアクティブユーザー)、DAUs  (日ごとのアクティブユーザー)、そして HAUs (一時間ごとのアクティブユーザー)である。

ソーシャルビジネスを評価する際、私達はこれらの指標の割合を注意深く分析する。例えばユーザーのエンゲージメントが何によってもたらされているかを汲み取るために、 MAUs 対 DAUs、あるいは MAUs 対 WAUs を比べる。最も価値のあるソーシャルプロパティにおいては、これらすべての指標において相対的に高いエンゲージメント率が得られる。

コンテンツサイトにおけるアクティブユーザー

あらゆるコンテンツベースのサイトにおけるアクティブユーザー及びアクティビティを測る基準は一般的に、「*ユニーク : 一定期間の間に1度以上サイトを訪ずれた人数及び「*訪問数 : ページ閲覧数を用い、一連のアクティビティの定義がなされている場合には、その最小単位である「セッション」を用いる。 

これらの測定基準は、それぞれの適性及び正確性において長所や短所が議論されているが、重要なのはあなたのビジネスの肝心な部分を尺度として最適化し、それを最大限に活かせるかということである。例えば、メディアサイトやその広告が発達するにつれて一部の広告業者は、「訪問者のサイトでの滞在時間」や、「リピート訪問数」、「シェア数」、「コメント数」、「普及率」、「センチメント分析の調査結果」と言った、顧客から得られるエンゲージメントに関する情報をより重要視するようになった。 

これらの指標は個々のビジネスが掲げるゴールによってそれぞれ異なってくる一方、私達は「ユニーク」と「訪問数/セッション」の両方を見る。何故なら前者はオーディエンスのサイズを表し (もし成長中であれば月ごとの新しい訪問者数) 、後者はオーディエンスの維持率を反映するからである。最良のビジネスはまさにこの両方を兼ね備えている : 成長中の大きなオーディエンス数及び高いエンゲージメント率

e-commerce サイトにおけるアクティブユーザー

e-commerce ビジネスにおいて私達は通常アクティブユーザーに重きを置くことはない。これらのビジネスにはもっと有効な指標がある。実際の収益と粗利益 - つまりいくら稼げるのか?という部分である。例 : ユーザー一人当たりの利益、ユーザー一人あたりのオーダー量、リピート率、利益率、リターン率そし訪問者一人当たりの取引額等

何人のユーザーが企業のサイトを訪れているかという数値は微弱ながら彼らのコンバージョンレートを算出する上で参考にもなるが、同時にこれらの訪問者によるトラフィックがモバイルから生まれているのか否かに注目することもまた大切である。一般的にはモバイルからのアクセスによるコンバージョンレートはウェブサイトからのアクセスよりも著しく低いことが多い。

#13 Sources of Traffic  トラフィックの発生源

あなたも私達も、すべての収益が一部の偏ったリソースから生じる事を良しとしない。何故なら顧客獲得の経済状態は時間と共に常に変化する。(例えば、初期のFacebookのモバイル広告は、広告主に大きなリターンをもたらしたが、時間の経過と共にそのコストはあっという間に上がってしまった。) 広告チャンネル側は同じトラフィックに対して、互いに競争させようと促すことがある (Googleが検索エンジンの検索結果ページに自らのスポンサーのリンクを足しているように)。; もしくは、チャンネルパートナー自身がトラフィックを大幅に低下させるよう方針を変えることもある。
このため、トラフィックの発生源は分散させておくことが重要になってくる。ある特定のプラットフォームやチャンネルにトラフィックが偏ってしまうと、それはプラットフォーム上のリスクになりかねない。これは下記に定義された顧客集中リスクとよく似ている。より重要なことは、あなたのトラフィックを分散させるために、訪問者がどこから流入してきているのかを把握することである。あなたが他に依存しない独自のブランドを築こうとしているのなら尚更のことである。

Direct Trafficとは媒介物を通さず、文字通りあなたのオンライン上の資産に直接的に流入してくるトラフィックのことである。例えば、Targetの商品を購入するために、Amazon.com等を介さず意図的にTarget.comに直接アクセスしたユーザーはダイレクトユーザーである。一方で、Google上で特定のアイテムを検索し、結果的にTarget.comまたはAmazon.comに行き着いたユーザーはダイレクトユーザーとは言えない。しかしこのアクセスの追跡というのは非常に困難である。Googleで検索をかける際、検索用語としてあなたのブランド名を入力し、あなたのサイトへアクセスするユーザーもある意味でダイレクトユーザーと言える。何故なら彼らはもうURLを入力する必要がないからだ。

次に「オーガニックトラフィック」についてだが、この定義は多岐に渡る。SEOの専門家および一部のマーケティング解析論者は、このオーガニックを「お金を使わず、自然にできた純粋なトラフィック」と定義している。一方他では、支払いの有無に関わらずより広義の意味でオーガニックを定義をしているところもある。その場合には、上記で述べたようなダイレクトトラフィックをも含むことになる。すなわち一連の行動が「無料」である限り、特定のキーワードによる検索結果から生じたトラフィックや、顧客維持のための定期的なメール配信から生じたトラフィックもオーガニックという定義の中に含むということである。

このオーガニックトラフィックには正しい定義も間違った定義もない。重要なのはこれを他のチャンネルとは異なるものとして追跡し、把握することである。これにより、顧客がどこから来ており、あなたが既存の顧客及び新規顧客のために何をなすべきかが分かるようになる。しかし、わずかではあるがやはりダイレクトトラフィックの割合が高い会社に出会うと私たちも興奮する。

注意 : トラフィックの発生源を考える上で幾つか頭に入れておかなければならないことがある。一つは米アトランティックのコラムニストであるAlexis Madrigalが以前この問題を指摘し、話題となった「ダークソーシャル」の存在である。この「ダークソーシャル」とは経路が不明なソーシャル情報のことを意味する。典型的な例としては、電子メールやチャット上で共有されたリンクを通じてアクセスして来たユーザー等の、ウェブ解析で追跡できない外部ソースや紹介から生じるトラフィックがこれにあたる。(一部のサイトはホームページやランディングページの外にリンクを散りばめ、外部から集めたアクセスを「ダイレクトソーシャル」とカウントしているところもある。)

最後にもう一つ注意すべきは、Search Engine Optimization ( SEO ) と Search Engine  Marketing ( SEM ) の違いである。この二つは大きく異なるにも関わらず、時折同じものとして使われることがある。SEO とはメタデータやサイトのコンテンツの中にキーワードを埋め込んだり、ユニークで正確なコンテンツを制作し、ページの読み込み速度を上げることで、あなたのWebサイトが検索結果で (無料) より多く露出されるよう行う一連の最適化施策のことである。SEO はオーガニックな検索結果 ( お金を払う等をしていない ) やスポンサー契約のみに影響する。一方 SEM というのは 検索エンジンやソーシャルネットワークの広告といった「有料」の広告やリスティング等を通じてあなたのウェブサイトをプロモートすることである。SEO と SEM は互いに補完的な施策のことであり、決して対立するものではない。そしてたくさんのビジネスがその両方を使っている。


#14 Customer Concentration Risk  顧客集中リスク

「一つのカゴに全ての卵を入れるべきではない」という言葉通り、私達はビジネスを評価する際、顧客の集中度合をよくチェックする。

顧客集中とは、一定期間の総収益に対する、あなたの一番大きな顧客もしくは一定顧客の収益の割合と定義される。例えばもしあなたの一番の大口顧客があなたに$2M/yearを支払い、あなたの総収益が$20M/yearになったとする。この場合この大口顧客の集中度は10%となる。

経験則として、やはり私達は比較的低い顧客集中を有するスタートアップを好む。何故なら特定の顧客にのみ依存したビジネスは様々なリスクにさらされることになる。 言うまでもなく、顧客側にはより良いビジネスパートナーを探し、相手を変えながら生き残ろうとするものも多くいる。こう言った現実に伴うリスク要素として挙げられる : 

- 顧客側は、取引価格や鍵となる契約条件の交渉においてあらゆるレバレッジを用意している。

- 時には、あなたの収益の大半を占める顧客から、彼らのためだけの独自機能をあなたのプロダクトに実装するよう求められ、あなたのプロダクトのロードマップに支障をきたすといったこともあるかもしれない。

- 顧客側は、彼らの重要性を交渉の種にし、会社側により良い条件で取引するよう求めてくる。

しかしながら、ここには例外も存在する。一部の産業ではマーケットに顧客が数社しか存在せず、そしてその数社が巨大な顧客であるという場合だ。こういった特徴を備えた一般的な産業の例としては、モバイル通信キャリア、ケーブルネットワークおよび自動車産業等が挙げられる。大抵の場合、これらの市場への参入障壁は高く、この巨大な力を有した数少ないバイヤー達は市場に参入してくる他社を退けるための術を数多く有している。: リスト価格からのディスカウント、認可者の数 ( 商品調達部門を含む )、売上原価の調整等

#15 Truncating the Y-Axis Y軸の切断

企業の評価額算定の際に絶対にこれをしないで欲しい。

ここに当初、Gizmodo社のRavi Parikhによって指摘された見るに耐えないY軸の改竄例を紹介しておく。下記の(右図) は "0" をベースに利率を表したものに対して実際のところ (左図) は急上昇している利率を表したものである。

( 歴史や世代別データのベースラインを考える上でも気に留めておくべきコンセプトはベースラインのシフトに関する概念である。) 

#16 Cumulative Charts, Again   累積チャート 

私たちは、すでに以前のポストでこの累積チャートに関する問題について言及している。しかし累積チャートで表示されるべきではない関連指標が累積チャートになって表示されているシーンをよく見かけるのでここに再び実例として言及しておく。

ここに紹介する例も(こちらも同じRavi Parikhによるもの) 決して真似をしないように...

...実際のところ何が起きているかというと : 

累積チャートで報告されるべきではない指標には、収益、新規ユーザー、そして予約額が含まれる。肝心なのは、もしあなたが累積的に何かを報告するのであれば、何故それが重要で、何故あなたのビジネスを累積的に測ることが適切なのかを説明できなければならないということである。

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翻訳ソース記事 : http://a16z.com/2015/09/23/16-more-metrics/

※尚、本記事はAndreessen Horowitz社の許可のもと翻訳記事として掲載させて頂いております。スタートアップ業界の投資家、起業家の皆様のビジネス分析の参考にしていただければ幸いです。当該和訳は、英文を翻訳したものですので、和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照していただくようお願い致します。玉井和佐

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Kazsa Tamai

Growthful

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