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合コンという概念が苦手なのだけど合コンとは花鳥風月であり、世界から無くなるとそれはそれで寂しいよねって話

合コンにやたら行くヒトはすごい。火の中に飛び込み救助する消防士。真冬の極寒の海でカニ漁に出て行く漁師。にかなり近い感情をぼくは抱く。ぼくにはできない。合コン主催者はなおさらだ。どんなインセンティブマインドなのだろうか。ソ連で研究標本として人体実験されないか心配だ。すごいや。ほんとに。

そして正確にいうとぼくはきっと合コンが苦手なのではなく合コンのような空間が苦手なのだと思う。学生時代に好奇心で異業種交流会にいった時も似たような体感値だった。あたりさわりの無い2時間半。lost of 生きている心地。合コンから性欲を引き算した「会」を人は異業種交流会と呼ぶのだろう。

なぜあのような空間はぼくにとって退屈と苦痛をもたらすのかがずっと謎だったのだけど最近は少しわかる。なので記録しておこうと思う。

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「会」の話題は興味の最大公約数に規定される

合コン。異業種交流会。大人数の飲み会などの「会」の退屈な本質はとにかく不特定多数の人が参加していることにある。そしてこの不特定多数の人が集まるとどうしても会話が三大欲求の話題に収束する。そうしなければ同じ感覚を共有できないからだ。ぼくの大学のフィールドワークの先生が「おいしい」と「下ネタ」は世界共通だから覚えとけと言っていたのは非常に正しい。人類は甘味に快楽を感じるようにプログラムされているし、有史以来人類のキ○○マは偶数である。

同じ感覚や同じ体験を共有することは安心感や仲間意識をもたらす。みんなが持ってる共通の感覚であり体感値。とりあえず不特定多数で催される「会」の場ではラーメンとSEXとテレビの話をしとけば良い。それが不特定の『会』における最大公約数。コミ力を身につけるとは実はラーメンとSEXとテレビの話をできるようになることだったのだ。個性や気配りなんていらない。二の次。とにかく忠実になるんだ。三大欲求マニュアルに。

つまり不特定多数が参加する「会」が退屈な理由は主に、誰もがどこかで聞いたことのある話や体感した話の無限ループだからに尽きる。

そういえば先日大学生に「コミュニケーション能力はどうやったらあがりますか?」と聞かれて「とりあえず全国のラーメン食い歩くことじゃないかな?」と答えたらポカンとされた。ぼくが23年間生きて得た数少ない真理なのに残念だった。脂質と塩味は全人類が熱狂しそれを追い求めるためにアフリカ大陸を飛び出し人類は五大陸に広まった。コミニケーションツールとしてのラーメンは正しい。人類にとっての塩分をなめるよ小僧。

逆にぼくは割とどんな人とも2人きりの会話は好きだ。その人のその人だけの体験や感覚を共有できるのはすごく楽しい。知り合いにカタツムリ博士がいるのだが、「カタツムリが単為生殖できる話」はぼくと2人で大いに盛り上がった。世界に理解者が少なそうなその人とぼくだけの興味だったからだ。ここに虫嫌いのキラキラOLが加わったなら少なくとも「カタツムリが単為生殖できる話」はしなかっただろう。

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合コンほど風情があるものもない

ぼくが不特定多数が集まる「会」が苦手なのは変わっていないけれど合コンだけはとても尊く見えるようになった。スズムシがそれを教えてくれた。スズムシの鳴き声。秋の風物詩。花鳥風月。

今はぼくは自然ガイドの仕事をやっているため、自然のことを日々学んでいる。そして日々思うことは自然界のオスがめちゃめちゃ必死だということ。必死すぎて死ぬ奴もいる。蝉なんてエネルギー使いすぎだろ、メスのアピールのために。あんな小さい体で炎天下で泣いてたらそりゃ1週間しか持たないの当たり前だろ!!もっとペース配分考えたらあと2週間は生きれるやろ!なんでやねん。とぼくは自然界のオスのボケに毎日ツッコミをいれる。

けれでもオスたちのモテたい気持ちがなくなってしまったら、鳥のさえずりや虫の声など、季節の風物詩のほとんどは失われてしまう。つまり自然界のモテたいという叫びはぼくたちにとって花鳥風月なのだ。なんとも美しい。繰り返す。モテたいという叫びは花鳥風月だったのだ。

老荘思想ではことあるごとに「人間も自然の一部」ということを問いている。話を合コンに戻す。合コン男子は頭のてっぺんから爪先までモテたいと叫んでいる。つまり合コンの「モテたい」という男たちの叫びは老子と荘子にとっては花鳥風月そのもの。なんとも東洋思想は合コン男子に優しいのだろうか。

こういう風に見ると合コンという人類の営みは実に尊い。まぁぼくは絶対に行かないんだけど、世界から合コンという花鳥風月がなくなったらなくなったらでそら寂しいよねという話。

ここまで読んでくれてありがとう。

おしまい。

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