第十一章 暗示とはどんな事か(8) 外部暗示二

ある婦人が腎臓病、心臓病等で
7ヶ月も病床についていた。
本人も家族もどうせ死ぬ者だと思っていた。

その重病人が急に起き上がり
大声でくだらぬ事を叫びながら
家の中をここそこを歩き回っているので
今まで診療を受けていた医師に
すぐ来て見てもらったところが
精神異常だと言われた。

近所や親戚の人々が集って相談の結果、
荷車に結わえ付けて
精神病院につれていって
入院させることになった。

そしてその入院に要する戸籍抄本を
役場にもらいにいった。
ところが役場員が、
「入院させるより山畑先生のほうがよい」
と聞いた、とて会長を頼みにきたのである。

会長が
この患者の家に往診した時は
この婦人のみならず、
女中も精神異常になり
くだらぬ事を叫びながら近所を歩いたので、
近所の人々が寄り集まって
まるで火事でもはじまったかと思う程の騒ぎであった。

会長は早速法術を応用して、
この婦人を落ち着かせて
床の中に休ませてしまった。
次にその女中の精神以異常も治してしまった。

女中の方は
これで何の心配もなく治ってしまったのであるが、
婦人の方は精神異常は治ったが、
腎臓や心臓がまだ治らないのであるから
これを治療してやらねばならぬので、
この病の
始めより今日に至った経過等を聞いてみた。

ところが婦人曰く
「私はこの病の起きるまでは
薬など服んだことはありませんでしたが、
結婚する時にある先達達に見てもらいましたら
方位が悪い、と言われたのです。
それをかまわず結婚したせいでもあるか、
結婚後は病気にばかり罹って
絶えず薬や医者の世話になっています。

またある行者に見てもらいましたら
家相も悪いし仏様も祟っていると言われましたので、
大金をかけて家相を改正しましたり
また厄除け等もしてもらいましたが、
私の病は増々重くなる一方で、
仕方がなく生家にきて療養していたのです。

勿論医者にはずっとかかりっきりですし、
また先達様にも頼んで神信心もしたのですが、
とうとう、この4月から床につきっきりで
今日まで(11月即ち8ヶ月目)
頭をあげることさえできなくなったのです」
と。

この婦人は先達や行者に言われたことが
悪い暗示となって、
その暗示によって病を製造したり
または、病を治らなくしてしまっている

ことを看破した会長は
「その悪暗示」によって生じた観念を取り除き
そして「必ず治る暗示」を与えてやったら、
僅か3回で非常によくなり
その患者は再び婚家に帰り、
その後4回の施術により
さしも8ヶ月も頭もあげずに寝ていた婦人が
洗濯や炊事までするようになり、
遂には全快してしまったのである。

これも外部暗示で病を製造したりまた外部暗示で治ったのである。
 

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