第十一章 暗示とはどんな事か(5)

『貴様は
又々物質科学の迷信療法に迷っているか。
二ヶ月以上生きられたら奇跡だ
等と申す博士の薬を服んだところで
治る筈があるか。

貴様は帝国心身鍛錬会長ではないか。
そして
病は氣から治る真理を悟っているではないか。

いま神が貴様の実力を試験しているのだぞ。
貴様がその
九死の重態を
自分の力で治してこそ
人を救助する真の実力があるのだ。
故に貴様がその重病を自分の力で治した暁には、
神が持つあらゆる治病矯癖の
奥義あらゆる秘訣を皆貴様に伝授する

その代わりその奥義極意をもって
世の多くの悩める者を救助しろ・・・』

 
母の足音で目が覚めてみれば、
このように
神に説諭されている夢を見ながら
眠っていたのであった。

遺言状まで認めて、
「もうこれで今すぐ死んでもよい」
と覚悟した心境には
何らの苦悩もなくなってしまって
全く天国へでも行ったような気分で
ぐっすり眠りこんで
上の如き夢を見ていたのだった。
 
夢!夢!夢には違いない。

しかし、
以前には病を苦にして自殺を覚悟した時!
神に説諭された夢を見た。

かくして、その夢の神の説諭によって
健康の幸福に浴したのであった。

今また
死の寸前に迫って
遺言状まで認めた時、
神に説諭された夢を見たのだ。
ただ夢として葬れないのであった。

この夢によって
大いに感ずると所があり
断然薬を止めて
自己流の即ち
山畑式の治病法を実行したのである。

然るに段々と良い方向に
向かってきたのである。

かくして療養生活している頃、
当地方に陸軍特別大演習があり
これが終了後
高崎市にて行わせられた
賜餞の御儀に
産業や教育や社会事業や
その他特に国家に功労ありたるものが
召されてこの光栄に浴したのである。

会長もこの光栄に浴した一人であった。

この時分は未だ乗り物等は
一切禁じてもっぱら療養していたのであるから
汽車や電車で高崎市まで行くことは
あまりに無理な旅行と思われたのである。

しかしながら
我が一家の光栄は申すまでもなく
親族や郷党にまで及ぶ
この大なる光栄を無にする事は
実に残念の事でありかつ
聖旨に対し奉りては不敬にもなると思い、
一心に精神統一をして
「どんな長時間乗車しても大丈夫の観念」
を作ったのである。

果たして無事に高崎市まで行き
賜餞場に参入して
畏くも玉座の御前近くにて
天皇陛下を拝み奉る事ができたのである。

斯くして帰途も無事であったのである。
これ皆偉大なる自己暗示力が然らしめたのである。


その後益々山畑式治病方を続けると
遂にはさしもの重態にまで陥った重病も
全く退治してしまったのである。

医師に
「二ヶ月以上生きられたら奇跡だ」
と言われた時から12年も経過
したが
今まで再発もせず、ますます健康である。

会長はこの時の経験で、
「病は気から」
の真理を一入深く味わい
かつまた一段と深く悟る事ができたのである。

そして病や癖を
精神から治す奥義の奥を極め、
またその極意を体得したのである。

斯くの如くいわゆる奇跡的に全治したのも
「俺は死なないぞ、
自己を守護する神が治る事を夢によって教えてくれたのだ、
必ず治るぞ」
と硬く信じて
「必ず治る観念」を作り
これが自己暗示作用となって治った
のである。

その後は
九死に一生を得た身体にムリは禁物と思い、
園芸等を試みながら
気ままな生活に入り、
この道に従事する事は段々と止めるつもりであった故に、
この道に従う事は殆ど休業状態を続けていた所、
或る晩、
またまた次のごとき夢を見たのである。
 
『貴様は
貴様の重病を自分の力で治せば
神の持つ所謂治病治癖の奥義極意を伝授する、
その代わりには
その奥義その極意を以て
世に悩める同胞を救助しろ、
と言っておいたことを忘れているのか、
自分ばかり健康の光明に浴して
他の悩める同胞を救助しないのか・・・』
 
と神に叱られた夢を見たのである。
しかし夢なるがゆえに
そのままでいた所が
その後またまた上のごとき夢を見たのである。
その時は神に怒られて
怒鳴りつけられた夢をみたのである。
 
つらつら考えると、
会長は二度死に直面した、
そして二度とも神に説諭された夢を見た、
かくして二度共
その夢に見た神の説諭の通りに実行して
二度とも甦ったのである。
 
 
ここのいたって、
またまた上記の夢を見たのであるから、
またこの夢に神に言われた事を実行せねばならぬ、
と決意したのである。
斯くしてペンを取り、
この改正指導書の原稿を書いた次第である。
 
斯くの如く不思議な夢!
「貴様は何故世に悩める同胞を救助しないかっ」
と神に怒鳴りつけられた夢が動機で、
この指導書が生まれたのである。
故にこの指導書を手にしたものは
近所や親戚の悩める者にも貸与して
一人でも多く光明に浴すべき尽力してもらいたいものである。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?