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週刊金融日記 第21号 人間の心は因果関係を誤認する、バーナンキFRB議長公演、ディズニーシーは大人の遊園地、恋愛は営業と同じ、他

// 週刊金融日記
// 2012年9月2日 第21号
// 人間の心は因果関係を誤認する
// バーナンキFRB議長公演
// ディズニーシーは大人の遊園地
// 恋愛は営業と同じ
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 本が書き終わって、あとは誤字脱字とかのチェックだと思っていたのですが、実はここからがかなり長くて、いろいろと大変だったのですが、先日、なんとか印刷所に送ることができました。Amazonの方はいろいろと手違いがあり、現在予約を受け付けていませんが、以前に頂いた予約は大丈夫なはずです。

 さて、進化生物学や金融工学とともに、心理学は、恋愛工学の支柱のひとつです。そのなかでも、1974年にダットンとアロンによって発表された「吊り橋理論」は最重要理論のうちのひとつでしょう。人は、好きな異性と接しているとドキドキしてしまいますが、逆に、ドキドキするようなシチュエーションの時にたまたま居合わせた異性を好きになってしまうことがあるようなのです。このように因果関係を誤認してしまい、その誤認が現実になってしまうような現象は、実はよくあります。
 今週号では、この心理学的な誤認を引き起こすという吊り橋理論を現代の日本で実践するための効果的なストラトジーを読者に提供したいと思います。

1.人間の心は因果関係を誤認する

 人間は、因果関係を時に誤認してしまうことがあり、心理学では重要な研究分野になっている。
 この分野で非常に有名な実験は、心理学者のダットンとアロンが30年以上も前に行った吊り橋実験だろう。ゆらゆら揺れる怖い吊り橋と、そうでない橋の上で、被験者の独身男性に対して年頃の女性が橋の真ん中でアンケートを取るという実験を行った。被験者には実験の本当の意図は知らされなかった。アンケートを取った後に「今回の結果など詳しいプロジェクトの内容を知りたければ連絡ください」と電話番号を渡す。想像通り、吊り橋の上でアンケートを行った男性の多くがその女性に連絡したが、ふつうの橋ではあまり連絡しなかったのだ。この実験では、被験者は男性だが、その後の数々の研究で、女性でも同様の傾向があるということが示された。遊園地のジェットコースターや、怖い映画などでこのような恋愛感情の誤認があると報告されている。
 つまり、好きな異性といるからドキドキするのではなく、ドキドキした時に近くにいる異性に恋をしてしまうことがあるのだ。
 また、特に女性に関していうと、女は好きな男とセックスするのだが、なにかのはずみでセックスした男を好きになるという非常に強い傾向があると思う(これはレイプ被害者の調査研究で実証されているのだが、簡単に説明するには重いテーマなので、別の機会に議論することにする)。

 ところで、株式市場では、ひとがこのように因果関係を誤認してしまうことは日常茶飯事である。バブルというのは、みんなが買うから値段が上がり、値段が上がるから将来性があるに違いない、と人々が勝手に思い込むことにより起こる。逆に、あの会社は危ない、などという噂が立てば、株価は急落し、実態はどうであれ本当に資金調達に窮してつぶれてしまうこともある。
 本来はファンダメンタルズを反映するはずの価格であるのだが、価格そのものが、ファンダメンタルズという実態に影響を与えてしまうのだ。投資家の誤認に基づく行動そのものが、自己実現する形で現実になってしまうことがある。
 恋愛市場で言えば、金持ちやイケメンというファンダメンタルズよりも、むしろ単純にモテているからモテる、という自己循環した論理でモテることがよくあるのだ。
 つい最近、Youtubeで話題になっていた動画で、ふつうの大学生がニューヨークでセレブのふりをするとどうなるのか実験したものがある。この実験は人間心理の本質を理解するために非常に示唆的な内容であった。

"Fake Celebrity Pranks New York City"  https://youtu.be/XYU1a0lTTTw

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