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週刊金融日記 第220号 Brexitショックから考える政治家が利用する人間の3つの本能、ヨーロッパの暗黒時代がはじまる、セブのホテルとレストランを一気に紹介、東京が稼いだお金で田舎のマイルドヤンキーは繁殖、他

// 週刊金融日記
// 2016年6月27日 第220号
// Brexitショックから考える政治家が利用する人間の3つの本能
// ヨーロッパの暗黒時代がはじまる
// セブのホテルとレストランを一気に紹介
// 東京が稼いだお金で田舎のマイルドヤンキーは繁殖
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 アジアの英語ビジネスの取材を終えて、日本に帰ってきました。どうも今年は猛暑の予想が多いようなのですが、いまのところ風が心地よく日本の気候はとてもいいですね。こんな清々しい日がずっと続くといいんですが。

●エルニーニョからラニーニャへ「極端気象」多発?
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO02859940X20C16A5000000

 恋愛工学の漫画がアフタヌーンで連載されておりますが、今回は生物学の話です。モテる男はモテるゆえにモテる、というモテスパイラル理論の根幹が解説されています。

『アフタヌーン 2016年8月号』 http://amzn.to/293VInH

 さて、先週は、イギリスのEU離脱問題(=Brexit、BritainとExitの造語)で、大騒ぎでしたね。イギリスは、ユーロも使っていないし、ヨーロッパでもスイスやノルウェーなど、EUに加盟していなくても繁栄している国はあります。今回の問題の本質は、イギリス、EU双方に、膨大な政治コストがかかるということではないでしょうか。
 これは離婚係争のようなものです。夫婦はともに損をして、弁護士は法的サービスを提供するので、弁護士は儲かり、その分のGDPは上がりますが、全体で見たら単にコストなだけです。イギリス国内では、国民が分断され、さらにイギリスとドイツ、フランスなどのEU主要国との争いも増えるでしょう。イギリス、EUともに大ダメージで、ご愁傷さまです。

●英EU離脱 公約「うそ」認める幹部「投票後悔」の声も
http://mainichi.jp/articles/20160627/k00/00e/030/145000c

●論点整理 英国EU離脱決定後の世界、小幡績
http://www.newsweekjapan.jp/obata/2016/06/eu-2.php

 今週も興味深い投稿がいくつもありました。見どころは以下のとおりです。

―セブのレストランを一気に紹介します
―本当に金と女だけが人生の目的なのでしょうか
―恋愛プレイヤーの対局はマイルドヤンキーですか
(東京のインテリがお金を稼ぎ地方のマイルドヤンキーが繁殖に成功)
―片手ブラホック外しによるモテのシグナリング効果
―富士通のScanSnapについて
―いったいどの為替レートが正しいのでしょうか
―妻に携帯の履歴を全て公開することを義務付けられていますが恋愛市場に復帰したい

 それでは今週もよろしくお願いします!

1.Brexitショックから考える政治家が利用する人間の3つの本能

 恋愛工学では、人間の脳の大部分が旧石器時代から進化しておらず現代社会でさまざまな適応障害を起こしている、ということを利用して恋愛戦略を構築している。しかし、この点に関しては、恋愛工学の研究者よりも、政治家たちのほうがはるかに進んでいることを認めざるをえない。政治家たちは、ときに非合理な人間の本能に訴えるもっともらしいスローガン(多くの場合、間違っている)を作り出し、大衆を煽動していく。
 こうした政治家たちが使うテクニックは多種多様だが、多くは次の3つの強い本能に基づいているように見える。

【その1 生存の本能】

 生存欲求は、すべてに優先される強い本能だ。誰だって命が一番大切なのだ。よって、煽動家、ではなくて政治家は、真っ先に国民のこの欲求を満たしてやる必要がある。僕も命が大切なので、そうした政治家は大歓迎だ。
 しかし、問題は、こうした政治家たちが言うことは、科学的、あるいは統計的な点に関して言うと、ほとんどいつも酷く間違っているということだ。たとえば、今回のBrexit問題では、イスラム国のテロリストに殺されるという恐怖が、盛んに煽られた。EUに加盟していると、難民が増え、そうした難民たちにはテロリストが紛れ込んでいるかもしれない。だから、EUから離脱しなければいけない、というストーリーである。
 そもそも大英帝国がかつて侵略した地域が紛争地帯になってしまい、こうして難民となってしまっているのに、この身勝手な言い分は何だ、という道義的な問題はさておき、本当にテロリストは命を脅かすのだろうか。もちろん、イエスではあるのだが、そのリスクは極めて小さい。過去10年の間に、テロの犠牲になったEU市民はいったい何人いるのだろうか? かなり多めに見積もっても300人ぐらいである。EU全体では2日もあれば、これぐらいの数の人が交通事故で死ぬことになる。テロの恐怖は、極めて過大評価されているのだ。さらに、EUに加盟していることによる追加的なテロのリスクの増加など、ほとんど無視できると言ってもいい。
 日本でも、原発事故による放射能の恐怖が煽られることによって、巨富が消失したことは記憶に新しい(いまも消失し続けている)。残念ながら、大衆は定量的にリスクを見積もることがとても苦手で、政治家はそこを上手く利用することによって票を獲得するのだ。
 大衆が魅了されるのは、定量的な本当のリスクの低減ではなく、メディアによって煽られたセンセーショナルな危険性に対する、もっともらしい偽りの解決策なのである。

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『反原発の不都合な真実』藤沢数希
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【その2 縄張りの本能】

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