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週刊金融日記 第214号 クラウド会計システムの導入と金融ビジネスの未来、トヨタショックを無事通過、広尾のバスク料理のビストロ、天才数学者ラマヌジャンの再来、他

// 週刊金融日記
// 2016年5月16日 第214号
// クラウド会計システムの導入と金融ビジネスの未来
// トヨタショックを無事通過
// 広尾のバスク料理のビストロ
// 天才数学者ラマヌジャンの再来
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 最近は、日本でも「パナマ文書」の話題が盛り上がり、タックスヘイブンというものが注目を集めています。
 
●「パナマ文書」日本関係も多数 広がる波紋
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0512.html

 
 金融機関に勤めていると、タックスヘイブンを使うのは本当に当たり前すぎるんですよね。僕が証券会社でトレードしていたときも、デリバティブ等は、すべてケイマンなどのタックスヘイブンのエンティティ(法人)を使って取引しておりました。金融市場は完全にグローバル化しているので、多くの国籍にまたがるさまざまな会社や個人が取引する際に、わざわざ法規制が洗練されておらず、税金が高い国のエンティティを使う理由がありません。しかし、これは脱税ではありません。たとえば、多くの投資家から資金を集めるファンドを考えてみましょう。
 アメリカ人やイギリス人や日本人がひとつのファンドに投資するとします。ここでもしそのファンドが日本に登記されていたら、ファンド内で売買するたびに税金がかかったり、規制に従い様々な報告義務が生じたりして困ります。なので、税金がかからず、そうしたファンドのための法規制も洗練されているケイマンなどのタックスヘイブンに登記するのです。これは脱税でも何でもなく、たとえば日本人投資家は、日本で税金を払い終わったあとに、こうした外国籍のファンドに投資をしていることになります。そして、そのファンドで利益が出て、いざ日本でお金を受け取ろうとすると、その時点で日本の法律に従い税金を払わないといけなくなるわけです。アメリカに住んでいる人はアメリカの法律に従い税金を払います。イギリス人しかり。ファンド内での売買で税金を払い、ファンドから利益を受け取るときに税金を払うという二重課税のリスクを避けたり、外国人からはわかりにくい日本の規制を守るための追加的なコストを避けたいわけです。結局、利益が確定すると、税金は投資家の居住地で払うことになります。もちろん、日本人がタックスヘイブンに引っ越して、タックスヘイブンで仕事をするなら、ほとんど税金を払わなくてもよくなりますが、税金のためだけに、そんな異国の島に引っ越す人はほとんどいません。タックスヘイブンを使っても、日本に住んでいる限りは、日本の法律に従い、税金を納めないといけません。
 このようなタックスヘイブンは、外資系の金融機関やヘッジファンドに限らず、日本の銀行も保険会社も商社も、あるいはメーカーなんかも、当たり前のように利用しています。多国籍企業はやりようによっては、税金を安くすることが可能なのは事実です。逆に、日本に住んで、日本人相手に商売をしている中小企業の場合、タックスヘイブンを使っても、何の節税もできません。こうしたタックスヘイブンの実情を前提に、各国は税制を作られないといけないわけですね。

 以上のような合法的な経済活動のためにタックスヘイブンは使われており、そちらが大部分なのですが、政治家が受け取る裏金がプールされていたり、出所が怪しいお金の流れをわかりにくくするためのマネーロンダリングにタックスヘイブンが使われることもあります。こうした犯罪行為と、合法的な経済活動は区別しないといけないでしょう。
 たとえば、東京オリンピック誘致のために、2億円余りの裏金が、国際オリンピック委員会の元委員の親族の会社にコンサルティング費用として振り込まれました。そのお金は、今度は高級時計などの貴金属になり、オリンピック開催国の決定に関して権限を持っている複数の委員に配られたようです。これなどは典型的なマネーロンダリングの手法ですが、こういうときにタックスヘイブンの会社が使われることもよくあります。これは非合法の可能性が高いです。

●捜査のきっかけは「爆買い」東京五輪招致疑惑
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000074827.html

 中国政府の高官などは、香港を通して、パナマなどのタックスヘイブンに財産を移しています。いつ豹変するか知れない中国政府から自らの財産を守るためでしょうね。このように考えると、香港というアジアのタックスヘイブンの存在が、中国政府に許されているのは、何よりも中国政府の高官のためかもしれません。

●パナマ文書 中国2.8万件 日本関連800件
http://mainichi.jp/articles/20160511/k00/00m/030/152000c

 タックスヘイブンの話は、多国籍企業 vs 国家という深遠なテーマに行きつきます。これらは簡単に語り尽くせるものでもないので、この話はこの辺でおしまいにしましょう。

 5月は、気候に関しては、日本のベストシーズンですね。本当に過ごしやすいです。梅雨がはじまる前に、旅行などを楽しみたいところです。僕は、今週は京都・大阪方面に行く予定です。また、レポートするので楽しみにしていてください。
 さて、今週も面白い投稿がいくつも寄せられました。見どころは以下のとおりです。

―グダグダの公式を発見しました
―家に自然と誘えるお土産ルーティーン
―麻酔科医のドラッグ騒動について

 それではみなさん今週もよろしくお願いします。

1.クラウド会計システムの導入と金融ビジネスの未来

 株式市場では、決算シーズンが終わりましたが、中小企業を経営しているこのメルマガの読者は、まだ、会社の決算でバタバタしているかもしれません。決算期が3月末の場合は、5月末までに会社の決算書を作って納税しないといけません。
 このメルマガには、副業などをしていてサラリーマンでも税務申告をしなければいけない読者も多いので、クラウド会計システムについての解説の第3弾を書きたいと思います。というのも、僕が自分で使って、ちょうど立ち上げてから、最初の決算と税務申告でグルっと一周したので、いろいろと生きたアドバイスをできると思うからです。

【クラウド会計システムが誰でも簡単に使えるというのは大嘘】

 MFクラウド会計にしろ、freeeにしろ、やたらと経理業務ド素人のフリーランスが簡単に全自動経理を実現できると宣伝していますが、これは明らかに嘘です。僕が使っているのはMFクラウド会計のほうですが、どう考えても素人では立ち上がりません。これらを使いこなすには、以下の知識が最低限必要です。

(1) 複式簿記がある程度できる
(2) BSとPLがサラッと読める
(3) 税務申告に関する本が読みこなせる

 まず、ほとんどのフリーランスの人は、簿記ができません。僕もこれを機会に簿記3級の勉強でもして資格を取ろうと思いましたが、教科書を30分ぐらい読んで挫折しました。僕は量子力学のシュレーディンガー方程式や金融工学のブラック・ショールズ・モデルはすんなりと理解できましたが、簿記3級は難しかったです。複式簿記というのは、一つひとつの取引に関して、左側と右側にふたつの情報を書かないといけません。なぜならば、一つひとつの取引は、バランスシート(BS)と損益計算書(PL)の両方に影響するからです。取引先からお金が振り込まれたら、単に売上ができた、と書くだけではいけなくて、売掛金がいつ発生して、実際にいつどのような形で支払われたのか、適切に記帳していかないといけません。社員が出張の際にホテル代を建て替えた場合、社長さんにしてみたら、あとで社員にその分を渡してお終いでしょうが、複式簿記ではそんなことではいけません。じゃあ、どうやって書いたらいいのか? 難しいですね。簿記は一朝一夕で身につくような簡単なものではないのです。
 しかし、簿記ができれば、あとの必要な書類は、基本的に会計ソフトが全部作ってくれます。ここで期初(最初から会計ソフトを使うなら創業時)のBSを正確に会計クラウドに入力しないといけません。そして、1年間の複式簿記で記帳された取引が積み上がり、その年度のPLができて、期初のBSとこのPLから、最終的なBSができます。これらの情報に基づき、正しく税務申告をしないといけません。消費税が入ると、さらに複雑になります。
 ということで、クラウド会計システムを使いこなすためにもっとも重要なスキルは「簿記」ということになります。もし、大学生で、将来はビジネス系に進みたいなら、簿記3級は取っておくといい資格かもしれません。僕は受けたこともありませんが。もうひとつの資格はおそらくTOEICですね。このふたつで就職に向けた資格は必要十分です。僕はTOEICを受けたこともありませんが、機会があったら一度挑戦してみたいと思います。

【クラウド会計システムを導入するには専門家の助けを借りる】

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