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週刊金融日記 第609号 日本人の第一志望はMARCH:東京二番手校と地方トップ校の人生の満足度、ビットコインETFが米国市場に上場、レストラン選びの必勝法がワークしなくなっている件と東京の安くて美味しい居酒屋、首都圏私立医学部併願戦略、他

// 週刊金融日記
// 2024年1月17日 第609号
// 日本人の第一志望はMARCH:東京二番手校と地方トップ校の人生の満足度
// ビットコインETFが米国市場に上場
// レストラン選びの必勝法がワークしなくなっている件と東京の安くて美味しい居酒屋
// 首都圏私立医学部併願戦略
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 週末には、共通テストが行われました。僕は教育の本を書いたりするなど、諸事情で共通テストを毎年ちゃんと見ていますが、2024年は久々の波乱なしの年になりました。2022年は、作問する人たちが難易度調整間違えちゃって、数学1Aなんか平均点が30点台で、日本で一番受験数学のプロが集まる灘高でも満点が数人もいなかったそうです。他の科目の平均点も軒並み歴代最低を記録しました。
 2023年はまだコロナ禍で感染対策で日本中がピリピリしている中で、東北地方で地震があり津波警報が出ていましたし、東大の会場では、受験勉強で心を病んでしまった高校生が人を刺すというテロが発生しました。

週刊金融日記 第454号 コロナ禍で後退した開国派は新センター試験(共通テスト)の英語で一矢報いた
週刊金融日記 第505号 日本人は高偏差値ほど学歴コンプをこじらせている
週刊金融日記 第557号 コロナ!津波!テロ!2023年も波乱の共通テスト
週刊金融日記 第606号 東京の大学の難化と医学部含め地方国立大学の易化が進んでいる

『コスパで考える 学歴攻略法』
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●2024年 共通テスト予想平均点(河合塾)
https://www.keinet.ne.jp/center/average/24_index.html

★英語のリーディングは昨年も難しくて平均点が低かったのですが、今年はさらに難しくなったようですね。英文自体は簡単なんですが、とにかく量が多く、ネイティブでもギリギリで、東大受けるような受験生でも解き終わらなかったそうです。

★共通テストになってかなり問題が難化して、英語なんか年々大変になっていますが、じつは平均点自体は変わっていないんですよね。

 共通テストの何が難しいかというと、英語や数学が顕著ですが、とにかく大量の文章や図表を与えて、手際よく情報処理しないといけないことです。時間との戦いなんですわ。英語は、チラシとかなんかの説明書とか読んだり、実用的な英語にかなり振れていて、まあ、英語自体は簡単です。しかし、課題文に散らばる情報を的確に整理して論理パズルを高速で解いていかないといけません。だから、ちょっと英語ができるイキったおっさんが、問題をチョロっと見て、なんだ簡単じゃん、などと言っていますが、じゃあ、受験生と同じ時間制限でちゃんと解いてみろ、と問い詰めないといけませんね。
 と、このように、共通テストが難しくなって、いろいろなところから文句が出ているわけですが、じつは平均点自体はセンター試験の頃からあまり変わっていません。さすがに2022年はだいぶ下がりましたが、他の年はだいたい似たようなもんです。平均点は各科目ともに5割と6割の間ぐらいを安定的に推移しています。受験産業のインフルエンサーたちから、いつもボロクソに言われている作問担当者の方々はさすがです。
 なぜ平均点が下がっていないか考えると、おそらく2つの仮説があります。まず、ひとつ目の仮説ですが、こういう共通テストなんかに対していちいちコメントする人たちは、受験生時代が人生のピークで、さすがにピークだけあって、高得点をマークし、その後も受験産業で働いている人たちが多いわけです。センター試験時代は、特に理系科目がそうですが、東大や国公立医学部なんかを志望する層は満点が当たり前でした。しかし、共通テストはこうしたトップ層でも満点が取れず、85点ぐらいを狙う感じになりました。しかし、ボリュームゾーンの平均点辺りの人たちは、もともと4割ぐらいしかないわかる問題を解いて、あとは適当に鉛筆転がして塗り絵するだけだったわけで、時間制限がきつくて、トップ層でも満点取れない試験でも、この辺の層が厚い受験生たちには、あんまり関係ないのかもしれません。
 ふたつ目の仮説は、共通テストを受ける受験生の平均的なレベルがどんどん上がっているというものです。今どきは私立大学を中心にAO入試・推薦入試枠がどんどん増えており、日本の大学入学者のすでに半数以上が年内に入学する大学が決まり、一般入試を受けません。よって、共通テストも受けません。4月まで長い春休みが始まります。昔のセンター試験なんかは、大学に行きたい人ほぼ全員が受けていたのですが、いまは一般入試が多い難関大学に行きたいガチ受験生の割合がどんどん増している、と言えそうです。
 どちらの仮説が正しいのかわかりませんが、テストの難易度は昔とぜんぜん違う、というのは確かでしょう。たとえば、いまの最難関大学狙いの受験生に、共通テストの模試の問題をやらせると、数学や理科なんかだいたい70点台、良くて80点みたいなもんですが、昔のセンター試験の過去問をやらせると、あっという間に満点を連発できます。それほど変わっています。
 あと、多くの下位の私立大学がもはや一般入試なんかやっていませんから、偏差値が付くだけで、まあまあちゃんとした大学なんですよね。偏差値の定義から言って、偏差値30の大学というのは必ず出てきます。仮に一般入試を実施する大学が、東大、京大、他の地方旧帝大、東工大、一橋、早稲田、慶應、筑波大学、神戸大学だけになったら、筑波大学や神戸大学、早慶の下位学部辺りは偏差値30台になるんですよね。まあ、偏差値、偏差値、と言ってる人たちは偏差値を理解していないわけですけど。

 さて、第606号では主に「相対偏差値」の推移に着目して、旧帝大や医学部といった難関大学の入試動向ついて分析しました。

週刊金融日記 第606号 東京の大学の難化と医学部含め地方国立大学の易化が進んでいる

 共通テストも終わったので、現段階での2024年度入試の状況をいろいろ見ておきましょう。まずは、2023年度入試の実績データです。女子枠(女子だけが受けられる推薦枠)導入などで、Xの声の大きいインテリのインフルエンサーたちに叩かれていた東工大ですが、女子からの人気が上がったなどの理由で、前年比+10%という大幅な志願者数増になっていますね。Xでインフルエンサーが声高に主張している意見というのはだいたい反対が正解です。他は±2%程度に収まっていて、特に特筆すべきところはありません。

●2023年度入試を振り返る 国公立大の概況
https://www.keinet.ne.jp/exam/past/review/national.html

 次は2024年度入試の予想です。以下の記事に貴重なデータがありました。2023年11月の河合塾の共通テスト模試での受験生の志望校調査から、前年比の増減を求めています。僕がメルマガに書いた通り、やはり東京一極集中がさらに進んでいます。
 北大が-6%、九大が-9%の一方で、一橋がなんと+12%、東工大は昨年の+10%(実績値)から、さらに+5%です。東大が対国立医学部、対京大で難化傾向が続いていましたが(東大一人勝ち)、一橋と東工大もジリジリと難化していますね。東京以外は人口が減り続けていて、東京だけが人口が増えているのに(出生率は最低で、つまり地方から奪っているわけですが)、東京の大学の入学定員は変わらないか、私大定員厳格化などでむしろ減らされているぐらいですから、こうなりますわな。さらに、東京は受験産業が隆盛を極めていて、ホワイトカラー家庭の子供は中学受験などで、小さい頃から受験勉強しているわけで、東京の難関大学がさらに難しくなっていくのは必然でしょう。東京は大変ですわ。
 まあ、僕なんかは逆張り志向なんで、だったら、北大とか九大とかがバリューだと思ってしまうんですけどね。特に九州なんて、世界の半導体企業が集積し始めているわ、中国や韓国からの観光客はどんどん来るわ、ポテンシャル高いと思うんですが、受験生の動向は逆を行っているようですね。

●国公立大志望動向2024 東北大が志望者急増、東工大は女子の人気が急上昇、2024年1月12日
https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/10920

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

-どんな時でも子供に暴力はダメなのでしょうか
-クリニック開業におけるネット集客についてご教授ください
-娘の教育ですが首都圏国公立医学部を狙いつつ私立医学部も受ける受験戦略はどうでしょうか
-「新型コロナウイルスの変異株は全て人工的に作られた可能性が高い」論文について

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.日本人の第一志望はMARCH:東京二番手校と地方トップ校の人生の満足度

 よく言われているように、X(旧Twitter)の常識では、東京で年収2000万円は貧困層で生活が苦しく、学歴は最低でも早慶なわけです。
 年収でも偏差値でも、こういうことを積極的に発言する人たちは、まあ、それなりに上手くいった人なんでしょう(中には上手くいってなくても妄想で騙っている屈折した人物もいるかもしれませんが)。要はマウンティングです。そうでなくても、こういうことに関して、なんか記事を書こうとすると、どうしてもトップ層に注目しがちです。中学受験の塾にしたって、ほとんどの生徒には関係ないのに、東京などのトップ中学の合格実績ばかりが注目されます。
 自戒を込めて言うと、このメルマガでの子供の教育に関しての記事も、やはりそういうバイアスがあり、先週書いた、いまでは地方の旧帝国大学や田舎の国立大学医学部が入りやすい、という話も、昔に比べて入りやすいというだけであって、学力的にはほとんどの家庭には無縁です。地方旧帝国大学なんか、その地方のトップ公立高校の中で、勉強がすごくできる人たちが行くところですからね。田舎の国立医学部が簡単と言っても、まあ、昔よりは簡単というだけの話ですわ。共通テストで5教科7科目という試練がありますから、これを乗り越えられません。

週刊金融日記 第606号 東京の大学の難化と医学部含め地方国立大学の易化が進んでいる

 僕は日本の学歴研究の世界では、あれほど加熱している東京の中学受験で、その中でも一番上位層が通うSAPIXであっても、SAPIX卒業生が進学する大学の中央値はMARCHということを世間に知らしめた業績で一躍注目されるようになったわけですが、やはり日本人にとって、MARCHという大学群は特別なものであるわけです。

(M)明治大学  (千代田区)
(A)青山学院大学(渋谷区)
(R)立教大学  (豊島区)
(C)中央大学  (八王子市)
(H)法政大学  (千代田区)

 大企業に就職したい場合、とりあえず学歴フィルタを超えられるMARCHというのは、日本のホワイトカラー家庭の事実上の第一志望と言っていいでしょう。実際、MARCH卒の人は日本中のあらゆる業界で活躍しています。僕自身もMARCH出身の人の知り合いで活躍している人を何人も知っているので、MARCHには良い印象を持っておりました。
 ある日、日本のさまざまな高校で講演する機会がある、教育や就職関係の評論家の方が、関西のトップ私立大学群の関関同立と比べて、MARCHの学生はとても優秀だ、という話をしておりました。

(関:かん)  関西大学   (メインキャンパスは大阪府吹田市)
(関:くゎん) 関西学院大学 (メインキャンパスは兵庫県西宮市)
(同:どう)  同志社大学  (京都府・文系学部は上京区、理系学部は京田辺市)
(立:りつ)  立命館大学  (京都・滋賀・大阪にキャンパス)

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