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週刊金融日記 第97号 ソチ五輪と勇気の科学、堅調な国内企業の業績、銀座の正統派の高級鮨、勇気100%、他

// 週刊金融日記
// 2014年2月17日 第97号
// ソチ五輪と勇気の科学
// 堅調な国内企業の業績
// 銀座の正統派の高級鮨
// 勇気100%
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 週末はすごい雪が降りましたね。またソチ五輪が開催されています。日本選手も活躍しているようで嬉しいですね。
 そこで、今週号では五輪選手たちのすばらしいパフォーマンスと勇気について考えてみました。
 結局のところ、現代社会ではリスクを取って失敗しても死ぬわけじゃないんで、リスクを取ったもん勝ちみたいなところがあるんですよね。だから、結局は勇気があるやつがビジネスでも恋愛でも勝つんじゃないかと思います。
 勇気なんですよね。本当に…。

1.ソチ五輪と勇気の科学

 ソチ五輪が開催されている。そして、僕はソチ五輪を見ていて、これは人間の勇気の展覧会だと思った。
 スノーボード男子ハーフパイプで日本人冬季五輪最年少記録の15歳で銀メダルを獲得した平野歩夢選手が見せた大技のダブルコークテンを完成させるために、どれだけたくさんの転倒を経験してきたのか、そしてあれだけのスピードで空高く舞い上がるのに、どれだけの恐怖に打ち勝ってきたのか、僕は思いを馳せた。

●BurtonSnowboardsJPN 平野歩夢
http://youtu.be/etbcBOvb4gY

 平野選手が史上最年少なら、日本人冬季五輪最年長記録の41歳で銀メダルを獲得したのは男子ラージヒルの葛西紀明選手である。人間が生身で、100メートル以上もあのスピードで文字通り飛んで行くなんて、いったいどれだけの勇気が必要で、その恐怖に打ち勝つのにどれだけの失敗を乗り越えてきたのかと思うと、畏怖の念を抱かざるを得ない。

●葛西紀明 祝ソチオリンピック銀メダル 脅威の41歳
http://youtu.be/aVNdJxOyfuo

 こうしたアスリートたちの活躍を見て、読者の恋愛プレイヤーたちも大いにインスパイアされたことだろう。
 平野選手がハーフパイプで見せたダブルコークテンと同じように、僕たち恋愛プレイヤーは、街のストリートで、カフェで、バーで、そしてクラブで、あるいは合コンやホームパーティーで出会った素敵な女性に、何度も何度も練習して完成されたオープナーを使って、ときには全くその場で閃いたアドリブで勇気を出して女に話しかける。そして、女をデートに誘って、芸術的なルーティーンを披露し、葛西選手のスーパー・ジャンプのように、女の手を引いてベッドの上まで飛び立っていくのだ。
 そうやって見ず知らずの女と適切な恋愛工学のステップを踏んでセックスすることは、僕はオリンピックで金メダルを取ることよりもよっぽど尊いことだと思う。なぜなら、僕たちにとって、好きな女に認められ、セックスできるってことは、金メダルなんかよりよっぽど価値があることだからだ。

 僕にとっては、君が金メダルだよ。

 さて、前置きが長くなったが、僕は、現代社会では、ビジネスでも恋愛でもその成功のために何が一番必要か、と聞かれたら、間違いなく「勇気」だと答えるだろう。そしてそれは科学的に明確に説明できる。
 その前に、まずは勇気の定義からはじめよう。
 心理学者のクリストファー・レイトは勇気についてのあらゆる既存の定義を比較して、共通点を探しだすという研究を行った。レイトによれば勇気の条件は次のよっつになると言う。

(1) 危険や脅威が存在すること
(2) 行動の結果が確実でないこと
(3) 恐怖が存在すること
(4) 以上の条件があるにもかかわらず、個人が明確な意思と意図を持って行動すること

●Christopher Rate, "What is Courage? A Search for Meaning," PhD Thesis, Yale University, 2008.
http://gradworks.umi.com/32/93/3293368.html

 言うまでもなくナンパはこれら全ての条件を満たす。そして好きな女とデートして食事したあとに、家やホテルに誘うことも、これらの条件を満たす。つまり、僕たちが女とセックスするには、勇気が必要なのだ。
 さらに勇気を生み出すための実践分野の第一人者である心理学者ロバート・ビスワス=ディーナーの『勇気の科学』 http://goo.gl/dHckO6 によれば、勇気にはもうひとつの条件が必要になる。

(5) 倫理的な価値がなければならない

 これは大切な観点だ。これがなければ万引きもドラッグもテロ行為も勇気になってしまうからだ。犯罪行為の多くが(1)〜(4)を満たすが、それらは勇気ではない。そして、恋愛工学を使って女とセックスすることは、これらの5つの条件のうち6つを満たしている。

『週刊金融日記 第89号 恋愛工学と倫理』 
『週刊金融日記 第91号 続・恋愛工学と倫理』 
『週刊金融日記 第94号 フレーム競争』 

 さて、それではなぜ勇気がそれほど重要なのだろうか? それは、現代社会では勇気のある行動は、非常に効率良く報われるようになっているからだ。なぜ勇気ある行動が報われ過ぎるのかというと、勇気を妨げる一番大きな原因は恐怖なのだが、この人間の恐怖の感情が現代社会ではよく間違っているからだ。たとえば、女にアプローチするときに男が感じる恐怖は、第95号で詳しく解説した。

『週刊金融日記 第95号 ナンパの地蔵現象の科学』 

 現代社会では一見、非合理なように見える恐怖心が、なぜ我々の心に備わっているかというと、それが人間の心を形作った狩猟採集時代には確かに人間の生存を助けてきたからだ。恐怖は、危険に対する人間の本能的な自己防衛反応なのである。
 幸いなことにこれらの恐怖のおかげで、我々は現代社会でも多くのリスクを避けることができる。たとえば、高いところから落ちるのは恐怖を感じるが、それゆえにわれわれは高層マンションなどの高い建造物のなかで死なずに生活できる。人間関係に関しての多くの恐怖も、それなりに現代社会でも役に立つものが多い。しかし、知らない女に話しかけるときに男が感じる恐怖は、明らかに現代社会では過剰になってしまっている。飢えに対する恐怖も、これだけ食料が溢れている現代社会では肥満の原因にしかならない。
 キャリアに関しても、多くの人は人と違うことをするのを極度に恐れる。我々の心を作った石器時代なら、人と違ったことをして村八分にされるということは死を意味したのかもしれないが、現代社会では人と違ったことをしないと金持ちになれないのだ。そして、現代社会ではキャリアでも恋愛でもリスクを取って失敗しても、死ななくていい。つまり恐怖という参入障壁で守られている分野には、ビジネスでも恋愛でも、フリーランチがゴロゴロ転がっているのだ。

 こうした文脈で見ると、僕は女の恋愛コラムニストが書く恋愛論は概ねみっつの女の恐怖を正当化するために作られていると思っている。
 進化生物学的に考えれば、女は妊娠させられて男に逃げられることを避けなければいけない。だからこそ、はじめての男と最初にセックスするときは恐怖を感じる。そして、一度セックスして、そのまま男が去って行ってしまうと、何か大切なものを盗まれたような嫌な気分がする。ヤリ捨てされる恐怖である。そして女が何より恐れるのは、自分が尻軽女だと思われることである。こうした女の恐怖の感情は、男を選ぶときに必要以上に慎重にさせる。
 しかし、これらの恐怖の感情は、石器時代を生きていたときの女には役に立ったかもしれないが、現代社会を生きている女には役に立たない。なぜならば、現代社会では幅広い便利な避妊具が利用可能であり、また、法的な保護もあり、セックスしながら男を選ぶことが可能だからだ。そして、これは多くの女やモテない男がまったく認めたがらないことだが、セックスなしでコミットさせられる男なんて、みんな二流以下だ。
 考えても見てくれ。一流の男というのは、女からも金からも愛されていて、1週間は7日しかなく、1日は24時間しかないのだから、エキサイティングなビジネス、楽しい人たちとの会食、魅力的な女とのデート、なんてスケジュールを埋めていったら、どこにセックスもできない女友だち、というのが入り込めるっていうんだい? 金も時間も愛情もセックスしている魅力的な女の方に注がれるに決まってるじゃないか。

 現代の恋愛市場では、この男!と狙いを定めたら思い切ってパッと寝られる女が美味しいところを持っていくのだ。見込みが外れたって、ストップロスすればいいだけのことだ。
 ところが、恋愛コラムニストが書く恋愛論というのは、女がこれらの恐怖から逃げて、ひたすら自分が傷つかないための臆病な行動を取り続けることをもっともらしいことを言って正当化することにより、読者を気持ちよくさせるだけなのだ。そして、抜け駆けして美味しいところを持って行こうとする尻軽女をみんなで非難して、監視して、牽制するのである。だから、女が書く多くの恋愛コラムというのがまるで使えないのだ。同様に、女友だちの恋愛に関するアドバイスもそのほぼ全てが有害だ。
 そして、まったくジョークにしか思えないのだが、傷つくことを恐れて何もやらずにチャンスがあったいい男を逃すと、そんな男は「本当の愛」じゃなかった、ただの「身体目当ての男」よ、なんてお涙頂戴的なくだらない恋愛コラムまで用意されているというわけだ。

『週刊金融日記 第43号 すぐにした方がいいのか』 

 現代社会で、ビジネスや恋愛で成功する秘訣は、恐怖を味方にすべきときと、恐怖から目を背けるべきときとをうまく使い分けられるようにすることなのだ。ここで恐怖に打ち勝つために、僕たちは勇気を必要とする。
 そして、幸いなことに、ロバート・ビスワス=ディーナー博士によると、勇気とは習慣であり、実践であり、習得できる技能であるという。
 勇気というプロセスは「恐怖のコントロール」と「強い行動意思」から成っている。つまりこれら勇気の両側面を身に付ければ、勇気も習得し実践できるというわけだ。そして、博士は次の5つのステップを提唱している。

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