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週刊金融日記 第6号 マーク・ザッカーバーグの計算され尽くした結婚、Facebook株の行方は読めた、極めて個人的な焼肉についての考え、他

// 週刊金融日記
// 2012年5月20日 第6号
// マーク・ザッカーバーグの計算され尽くした結婚
// Facebook株の行方は読めた
// 極めて個人的な焼肉についての考え
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 お陰様で、週刊金融日記の購読者数も順調に増えて、こうして皆様に第6号をお届けできました。
 さて、今週の金曜日に、Facebookがとうとう上場しました。
 僕もFacebookページをさっそく作ってみました。
 http://www.facebook.com/kinyuunikki

 そして今日、なんと、マーク・ザッカーバーグCEO(28歳)が、9年前から交際していた中国系女性のプリシラ・チャンさん(27歳)と結婚したというブレイキング・ニュースが飛び出してきました。
 さっそく、Facebook問題に対して、恋愛工学的な視点からの詳細な分析をお届けしたいと思います。

1.マーク・ザッカーバーグの計算され尽くした結婚

 起業家にとって奥さんとは実に恐ろしい存在である。
 以前、サイバーエージェント社長の藤田晋氏が、奥菜恵と離婚した時に、奥菜恵(の弁護士)が10億円を請求しているとして話題になった(『奥菜恵が藤田社長に対して10億円の「財産分与」を要求』女性セブン、2007年12月6日号)。
 週刊金融日記の第3号で、詳しく夫婦の共有財産と財産分与について説明したが、この10億円の請求自体は正当なものだ。筆者は、両者に面識がないので、真相は定かではないが、仮に筆者が奥菜側の弁護士だったとしたら、当然これぐらいの金額は請求していたであろう。

 法的根拠は極めて明白だ。
 結婚当時の藤田氏の財産は250億円程度で、婚姻していた1年半の間にサイバーエージェント株の値上がりなどで、財産が270億円程度に増えた。サイバーエージェント株の値上がりの少なくとも半分は、奥菜恵の内助の功のおかげなので、藤田氏の財産のうちで結婚後に増えた20億円の半分の10億円は奥菜恵のものである。
 だから奥菜恵が10億円を要求するのは当たり前なのである。
 もちろん、株式のような流動的な資産の評価額をどうするか、そして奥菜恵の貢献の割合はどれほどか、は裁判官の判断に委ねられるから、必ずしも奥菜恵の言い値が通るわけではないが、少なくともこの程度の金額を最初に請求していくことは、法廷戦略としては妥当な判断である。

 スポーツ選手や俳優の離婚にまつわる巨額の支払い金額はよく話題になるが、離婚が本当に恐ろしいのは、実は起業家なのである。
 創業する前に結婚して、会社がとうとう上場し、そして離婚、ということになると、夫の持ち株の半分がいきなり奥さんのものになるのだ。これはハゲタカ・ファンドどころの騒ぎではない。
 ハゲタカ・ファンドは株を買い占める時に、その分の現金を置いていくが、奥さんはなんの支払いもなしにいきなり株の半分を持っていくのである。
 しかも、離婚騒動になっているということは、夫のことを破滅させてやりたい、ぐらいに思っていたりするのだ。
 僕はベンチャー・キャピタルが投資をするときに、ビジネス・モデルや経営者の資質を厳しく審査するのに、なぜ奥さんとの関係のデューデリジェンスを入念に行わないのか、不思議でしょうがない。奥さんは企業の資本政策において、極めて重大なリスク要因となりうるのだ。

 それではザッカーバーグはなぜ株式公開直後に結婚したのだろうか?
 筆者は、これは絶妙なタイミングだと思う。ザッカーバーグの背後のリーガル・チームの優秀さを垣間見る思いがした。
 ザッカーバーグは結婚していないのだから、何の潜在的な支払い義務も発生しない一番いい状況ではないか、と思われるかもしれないが、そう話は単純ではない。
 プリシラ・チャンの弁護団は、たまたま婚姻届を提出していなかっただけで「実質的な」婚姻状態だった、と間違いなく主張してくるはずだ。俗にいう「内縁の妻」である。
 日本は、非嫡出子の相続差別などの前時代的な法律が未だに残っているような国だから、形式的な結婚制度というものを非常に大切にしている。しかし、欧米では、事実婚においての女側の権利を認める傾向が、日本よりはるかに強い。

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