見出し画像

週刊金融日記 第278号 ビットコイン・アービトラージ ~市場に札束が落っこちていた、安倍内閣改造で支持率回復なるか、六本木の焼き鳥ワインバー、ビットコインが今後も分裂を繰り返せば無リスクでどんどん富を創造できるのでは、他

// 週刊金融日記
// 2017年8月7日 第278号
// ビットコイン・アービトラージ ~市場に札束が落っこちていた
// 安倍内閣改造で支持率回復なるか
// 六本木の焼き鳥ワインバー
// ビットコインが今後も分裂を繰り返せば無リスクでどんどん富を創造できるのでは
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 台風が来ていますね。月曜日の朝には四国に近づいて、その後、近畿、東海と進んでいくようです。みなさん、外出の際には気をつけてください。

●台風5号 あすの朝四国へ 九州や東海などでも猛烈な雨のおそれ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170806/k10011089991000.html

 ビジネス経済誌週刊SPA!で「ビジネスの法則」について取材協力しました。パレートの法則やべき乗則など、ビジネスに役に立つ様々な法則の特集です。

『週刊SPA! 2017年8/8号 負け組独身男の横顔、他』 http://amzn.to/2vum2Tp

 さて、僕は金融ブロガーとして、さすがに暗号通貨関連のことはある程度わかっていないといけない、ということで気楽な気持ちでビットコイン関連の記事を勉強がてら書いていたのですが、まさか、こんな素晴らしい体験がすぐにやってくるとは、まったく思ってもみませんでした。もちろん、儲かった、ということもあるのですが、それ以上に、金融史的な観点でも極めて特異なイベントに立ち会え、そこで最前線で理論を構築し、それがすぐに実証できた、という幸運に恵まれました。

『週刊金融日記 第275号 いまさら人に聞けないビットコインとブロックチェーン・テクノロジー』
『週刊金融日記 第276号 ビットコインは本当に世界を変えるかもしれんね』
『週刊金融日記 第277号 ビットコイン分裂の経済学』

 今週号は、僕がやったビットコインのトレーディングをほぼすべて書いたので、けっこう長くなってしまったのですが、このレポートを読むための前提知識として、どうしても「先物」の理解が必要です。先物というのは、日経平均先物など、もっとも身近なデリバティブなのですが、証券会社で働いている人も含めて、驚くほど多くの人がちゃんと理解していません。
 先物と現物の関係がわからない人は、昔書いたブログ記事があるので、こちらをまずは読んでください。ブログ記事は違った観点で書いていますが、現物と先物の裁定取引がわかれば大丈夫です。

●日経平均株価は先物で動かせるのか?
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51967494.html

 時間がなかったので、ビットフライヤー以外のマーケットは使っていません。ビットフライヤーではビットコインの「現物」「FX」「先物」がトレードできます。これらの差異を最大限に利用したアービトラージ戦略です。

●ビットフライヤー
https://bitflyer.jp/?bf=qrnsepru

 今週号の冒頭の記事が理解できたら、金融偏差値が一気に70超えます! それでは今週もよろしくお願いします。

1.ビットコイン・アービトラージ ~市場に札束が落っこちていた

 先週のメルマガを送ったときはそこそこ大きなポジションを持っていたので書けなかったのだが、約束通りに今週号では、どんなトレードをしたのか詳細に解説しよう。僕は、ビットコインを単にロングして、ビットコイン・キャッシュを取りにいったわけではない。もちろん、「結果的には」それでも儲かったのだが、僕はビットコイン先物を利用したアービトラージをほぼ完璧に行うことができた。儲けた金額こそ大きくないが、アービトラージによりリスクを取らずに大きなリターンを得ることができ、内容的には僕のトレーダーのキャリアの中でもベスト・トレードのひとつとなった。

 僕がビットコインのトレーディングをはじめたのは7月20日だった。特に勝算があったわけではない。物書きとして、また、将来のビジネスとしてこれは知っておかないといけない分野だと思ったからだ。また、親しい人がこの分野のビジネスをしており、共通の話題としても自分の時間を割いてやってみる価値があると思った。まあ、ポーカーや麻雀みたいなものだ。あるいは流行りの映画みたいなもの。つまり、この時点では、社交の道具であった。
 7月20日のチャートを見ると、安値は24万円、高値は33万円というトンデモナイ日であった。僕はそんな日にビットフライヤーで、ビットコインのデイトレーディングをはじめたのだ。板やチャートだけを見てフィーリングでやる短期売買は僕の専門分野ではなく、素人同然である。とりあえず、ビットコインのFXで10ビットコイン(=BTC)を賭けてみた。確か最初はショートだったと思う。僕は基本的にはミーン・リバージョン(平均回帰)を狙うのが好きである。下がり過ぎて反発しそうなところを買う、あるいは上がり過ぎて下がりそうなときに売る。しかし、その日、こうした戦略で、みるみる金を失った。10BTCだから、250万円ほどのデルタポジションである。デルタとは、相場の方向に依存するリスクのことだ。先物、FXは、現物の動きがそのまま連動するので、ポジションのサイズがデルタになる。僕はすぐに10万円ほどマイナスになってしまった。もちろん、それでどうこうという金額ではないが、いい気分ではない。値動きをずっと観察していると、どうやらビットコインのこうした逆張り戦略は難しく、むしろみんなが買い上がってるときにいっしょに買う、あるいは、みんなが売り急いでいるときにいっしょに売るというモメンタム戦略のほうが有効だと気づいた。そこで、損失が出ているショート・ポジションをロスカットし、そのまま一気に10BTCのロングに反転させた。間違えれば往復ビンタである。しかし、これが上手くいき、あっという間に、損益がプラスになった。わずかな時間で、ビットコインの短期売買はモメンタム戦略で儲かることに気がついたのだ。上に行くときに買う、下に行くときに売る。方向性が見えてから入ればよく、わずか10BTCほどのFXをガチャガチャとトレードしているだけで20万円ほど儲けた。単に話の種にやってみただけなのに、こんなに簡単に相場の癖を見抜いた、と思った。もちろん、勘違いだったのだが……。
 ビットコインの仕組みを勉強すると、価格が上がれば上がるほど採掘業者のインセンティブが高まり、より大きなハッシュパワーが振り向けられ、ますます暗号通貨としての価値が高まることがわかった。つまり、理論的な価値があり、そこから価格が乖離したら、元に戻ろうとする力が働く株などとは違い、暗号通貨はファンダメンタルズでもモメンタム的な特性を持っているのである。どうりで、ボラティリティが高いわけだ。僕はこのにわかモメンタム戦略にますます自信を深めた。ポジションサイズも30~40BTCほどに増やしていた。ワンショット1000万円である。遊びや勉強目的にしては、少々リスクが大きすぎる……。そもそも、まったく真剣にリサーチをしていない。まさに丁半博打だ。結局、サイズを大きくしたら、あまり勝てなくなった。
 こんなことを2、3日すると、デイトレーディングも飽きてきた。トータルでは30万円近くプラスだったから、まあまあである。そして、他のことで忙しくなったので、もう辞めることにした。少なくとも、これでビットコイン関連の話題に関しては、それをビジネスにしている人たちとも十分に会話ができるし、必要ならビットコインに関するコラムなんかも、面白いものが書けそうだ。当初の目的は達成された。ここで、ポジションを小さくしておけばよかったのだけれど、なぜか僕はビットコインを1000万円程度も長期保有することにしてしまった。アーリーアダプターのブロガーたちが10万円台で買っていることを考えると、こんなに高くなってから買うのはいい気分ではないが、やはり長期的にはビットコインはまだまだ上がっていくんじゃないか、というビューを僕は持っていた。
 これが外国株のインデックス・ファンドなら、1000万円ぐらいどうってことはないポジョションだ。しかし、相手は暴れ馬の暗号通貨である。僕は1BTC=31万円ほどで買ったのだが、次の日(チャートを見返すと25日だ)、それは28万円になっていた……。これまでのわずかな利益をふっ飛ばし、損益はマイナス100万円近くになっていた。大した金額ではないが、とても嫌な気分だ。
 しかし、おかげで、久しぶりにトレーディングのやる気スイッチが入った。もう遊びではない!

 まずは、自分が何をトレードしているのか、そして、来たるべきビットコイン分裂の意味を徹底的に理解する必要がある。最初にしなければいけないことは、ビットフライヤーのBTC-FXが、現物より1万円から1万5000円ほど上でトレードされている理由を見つけることだった。そんなことは実際にトレードする前に調べないといけないのだが、手を抜いてやっていなかった。また、現物とFXの乖離以前に、そもそもこの差金決済のために作られたビットコインのデリバティブは、なぜビットコインの現物に連動しているのだろうか。僕は、ビットフライヤーのサイトに載っている説明を読んだが、これが大事なことがなかなか書いていない。プロのトレーダー同士が金融商品を取引するときは、タームシートと呼ばれる重要なパラメータや決済のやり方などが箇条書きされたA4の紙1枚(実際にはPDFだが)を取り交わす。それを見れば、すぐに細かいことまで理解できるのだが、素人向けの金融商品の説明はタームシートと真逆のことが行われる。手数料や金利、決済方法などの重要な情報が隅っこのほうにわかりにくく小さな文字で書かれ、何となく儲かりそう、ギャンブルが楽しめそう、というイメージが意味のない文章で長々と書かれている。僕は、ようやく重要な情報を見つけた。

===========================
【Lightning BTC-FX 取引ルール】
https://lightning.bitflyer.jp/docs/fxrule

ここから先は

22,811字

¥ 220

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?